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魔法書主☆ルル  作者: 漂浮
さよならを言わずに、新たな出会い
2/2

少女と契約

ルルはもう何年も使われていない本屋で、ある本を見つける。それは唯一埃を被らないで奥の本棚に置かれていた。ルルがそれに手を伸ばしたとき、物語は動き出す―――。

「はぁー。ようやく着いた」

 私は何時間も歩き続け、空も白く霞んできた頃にようやくミラージュへと着いた。ミラージュも私の村と変わらず寂れていたが、人の気配はこちらの方が多かった。寝静まっているのだろうが、人がいる、ということがわかる。家の前で眠っている番犬がそれを知らせてくれた。

 ワンピースのポケットから一枚のメモを取り出した。そこにはミラージュの地図が描かれていて、入り口付近に黒く塗りつぶされた所がある。辺りをぐるりと見渡して家と家の間の細い道へと足を進めた。一日中影になっているせいなのかじんめりとした地面が足裏に感じ取れる。奥へと進んでいくと、一軒の潰れた家がそこにあった。

「ここ、なの? 私が探している魔法書があるのは……」

 私はびっくりして、もう一度メモを見直した。そこにはやっぱりここだと描かれてある。

「私が求めてる魔法書がここにあるとは思えないんだけどなあ。もっと厳重に警備とか、されてると思った」

 はあ、と溜め息を吐くと「幸せが逃げちゃうよ」と、いつだったか言われた言葉を思い出した。誰がその言葉を言ったんだっけ。もう忘れてしまったのだけど、酷く悲しい気分になった。

「入って、みるかぁ」

 思い切ってドアを開けると今まで溜まっていた埃がぶわっと顔を覆い、私は咳き込んだ。

「うあああ……。何これ……」

 そして不幸な事に惨事とも呼べるものを見てしまった。床、そして今にも壊れそうな棚に本が蜘蛛の巣を被ってそこら中に散らばっていた。

「ここから探すのかぁ……。やだな、汚いよ」

 ぶつぶつと文句を暫く言い続けたのだが、時間だけが進んでいくだけだ、と気付いてのろのろと本を一冊ずつ見ていくことにした。

「これは、違う。これも……違う」

 足元に落ちている本を拾い、表紙に付いている砂を払って見ていくものの、探している書物は無い。魔法に関する本ではあるものの、私が求めているものではないのだ。「初心者の魔法入門」を見たときには思わず懐へしまいそうになったのだが、余計なものは拾わないと決意してきたので泣く泣く諦めた。そう、私は魔女になる為の魔法の知識も全く無いのだ。つまり初心者だ。

 それからどれだけ時間が経っただろうか。もう日が昇り始めている。早く本を入手したかったのに、これでは村の人達が起きてしまう時間にまでなっている。どうしよう。村の人達がここに来るとは思わないが、違う村から来た私がこんな所で本を漁っていたことがバレルと厄介だ。だからと言って探すスピードを上げてもまだまだ時間が掛かる。

 どうしたものか。頭を抱えたくなる衝動に駆られたが、それを必死に止めてふと顔を上げた。

「あれ?」

 目をやったそこには杭で止められた扉が一つあった。重要な書物が入っている倉庫なのだろうか? と思ってその扉の前に立った。ここに人が居たときは頑丈な扉だったのだと思うが、今はもう腐って脆くなっていることが見ただけでも分かった。強く扉に体当たりをすると、扉は難なく簡単に崩れた。

 中に入るとやっぱりそこにも埃を被った本たちがばらばらと落ちてある。

「やっぱり、ここも探すのは大変そうだなあ」

 ぶつくさ言って中に入ると、天窓があることに気が付いた。上から白い光が射し込んで、床を照らしている。何気なくその白い光に照らされている部分を見ると、一つの他とは違う本が異質な雰囲気を身に纏って落ちてあった。

「ん? もしかして、これ……」

 近くに行って見てみると、その本は私が探し求めていた書物だった。

「あった! これ、これだよ。私が探していた本は……!」

 表紙は鈍い青色で、表紙に埋め込まれている白い石が光に反射して光っている。私を見つけてと言わんばかりにその存在を主張しているのだ。見るからに重量のありそうな大きい本を拾い上げようと、手を伸ばした。ようやく見つけた。歓喜。興奮。私は大きく胸を膨らました。これで、私は魔女になれるのだ――――。

「待て」

 

 

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