クラス全員が異世界最強(厨二病)に転生した結果、世界の陰謀を警戒して誰も宿屋から出ないんだが?
異世界に転生して3日。
普通ならスライムの一匹でも狩ってるはずだ。
しかし、ここは「始まりの街・ルミナス」の酒場。
我が二年A組の面々は、誰1人として街の門をくぐってなかった。
「……世界が俺達を呼んでいる。だが、まだだ……俺の右腕に封印されし『黒龍』が大地の乱れに怯えている」
瞬は、包帯が巻かれた右腕をかざし呟いた。
(包帯は転生時に支給された布切れ)
「ふっ、相変わらず臆病な男……シュン」
対面に座る美紗が、ふわりと黒い翼を揺らす。
「私に流れる堕天使の血が、告げてるわ。森から漂う、渦々しき気配……あそこに行けば、漆黒の翼は光に灼かれ消滅する……今は動くべき時でない」
そこに、重厚な鎧を響かせ蓮が歩み寄ってきた。
剣を床に突き立て、険しい表情で2人を見る。
「……お前達聞いたか!ギルドマスターが俺達に『薬草採取』の任務を課そうとしている」
シュンの眼が鋭く光る。
「ほう……遂に奴らが動き出したか。その薬草……只の植物ではないな。組織が人間をマインドコントロールする為に栽培してる魔草『レーヴァン・ハーブ』……!!」
「間違いない……!」
レンが深く頷く。
「そんな下級任務、我が聖剣『アマテラス』の誇りが許さない(初期配布の剣)。俺の宿命は魔王の討伐、そのような陰謀に加担するわけにはいかない!」
【現在のクエスト状況】
ギルドからの依頼:薬草採取(報酬:銅貨5枚)。
クラスの認識:世界のパワーバランスを揺るがす、闇の組織の陰謀。
結論:今ではない、全員で宿屋に籠城。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「おい、お前達!いつまでそこにいるの!!」
しびれを切らしたギルドの受付嬢が、彼らのテーブルに詰め寄ってきた。
「他の冒険者たちは、皆んな狩りに出かけたわよ!あなた達、3日水とパンしか頼んでないじゃない。早く仕事に行きなさい、ただの薬草だよ!」
クラスの委員長であり、転生して『精霊の声を聴く巫女』になった瑠奈が、静かに髪をかき上げた。
「……哀れな子。世界の『真実』を知らぬが故に、目先の利益に踊らされてるのね。私たちの脚が止まってるんじゃない。この世界が私達に追いついていないだけ……」
「はあっ!?」
シュンが斜め後ろから、水のグラスを傾ける。
「くくく……お姉さん、あんまり急かさない方がいい。俺の中に眠る『もう一人の僕』が目覚めれば……この街ごと消滅することになるだろうっ!!」
「どうゆうこと??」
「うわあああぁ、頭が……!割れるように痛む……!!」
突然、隣のテーブルで魔導書(勉強ノート)を広げてたガリ勉の佐藤が頭を抱えて悶絶し始めた。
「佐藤……!?遂に『理』の書き換えが始まったかっ!」
「くっ、奴ら(神界の監視者)、こっちの動向を察知して、精神攻撃を仕掛けてきた!聖界結界を展開しろっ!!」
「了解した!『我が血の盟約に従い……光の盾を現出せよっ』!」
顔を手で覆い、不自然な角度に首を傾ける者。
両腕を交差させ、自分の肩を抱きうつむく人。
メガネをクイっと上げ光らす佐藤。
二年A組のクラス全員が一斉にポーズを決め、それぞれ固有結語を唱え始める。
混沌とする現場、受付嬢は引いた目で彼らを見つめ、そっと距離を置いた。
「……もういいわ、勝手にして!!」
【現在のクエスト状況】
ギルドからの依頼:薬草採取(報酬:銅貨5枚)※未達成
クラスの認識:神界の監視者による、妨害行為。
結論:聖界結界で防御、全員で宿屋に籠城。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
夕暮れ時……
今日も一歩も街の外に出なかった彼らは、夕日に照らされる街並みをギルドの窓から眺めていた。
「ふっ……今日も世界を調和し、平和に導いてしまったな」
シュンは満足げに、右腕の包帯を結び直した。
「ああ、俺たちの『存在』が、魔王へのプレッシャーになっている。俺たちが動かないことこそが、この世界の平穏を保つ唯一の結界だからな」
レンも、一度も抜いてない聖剣の柄を愛おしそうに眺める。
「明日……運命の歯車が周り出すでしょう」
ルナが夕日に向かって、物憂に手を伸ばした。
「ええ、その刻まで、私はこの漆黒の翼を休めるわ」
ミサが、パンの欠片を口に運ぶ。
受付嬢
「あの〜、お支払い大丈夫です〜?」
佐藤
「くく……案ずるな。我が魔導書(勉強ノート)に記された『黄金の錬金術』が発動すれば宿代など、一瞬で無から生成される!!キラっ」
彼らの財布の中身は、残り銅貨3枚−−
宿代が尽きるまで……彼らは世界を平和に導いていく−−




