【極秘】帝國軍事省・資産運用報告書(抜粋)
報告者: 筆頭秘書官 アーウィング・ジェット・ヴァランタン
対象: 個体識別番号 U-001(エルミタージュ公爵)
ステータス: 公共財 / 稼働中
【エルミタージュ公爵邸・主寝室】
1. システム起動(Awake):
朝の光。U-001は寝台で起床。イグニス夫人が、慣れた手つきで介助。
2. 「身支度」という名のメンテナンス:
イグニス夫人は、U-001の頚部右側および大腿部内側の皮膚表面に残る「監査の痕跡」を、精密な手捌きにてコンシーラー及び魔道布で隠蔽。
「綺麗になりましたね、ルーカス様」
展示品を修復する学芸員のような声で確認点呼。
3. 「義務」の再確認:
身支度の最中、イグニス夫人よりU-001に「本日の稼働スケジュール」を通達。
U-001は、鏡の中を見つめながら、昨夜の損傷を微塵も感じさせない「微笑み」をセット。
U-001は完璧な所作で、イグニス夫人の額に「事務的な親愛」のキスを落とす。「良き夫」プログラム稼働中を確認。
[STATUS] EMOTION_SET: "PEACEFUL_SAINT".
[BOOT_COMPLETE].
【エルミタージュ邸・玄関ホール】
1. 最終検品(Final Check):
イグニス夫人は軍服の襟元を整え、勲章の位置をミリ単位で調整。
出来上がった装いに、イグニス夫人は満足された様子。
丹精込めて作り上げた最高傑作を眺めるような笑みを記録。
「ええ、……本当に、今日も完璧な仕上がり」
2. 類似設計の微笑(The Broken Smile):
アレス・クロノス・ヴァルキューラ閣下手ずから「初期設計と書き込み」を行い、グラディウス卿が「メンテナンス」したU-001。
そして、以前に閣下が「雌化教育」させたイグニス夫人。
二人の視線が交差する瞬間、そこにあるのは夫婦の情愛ではなく、「ヴァルキューラ家の高度な事務用品たち」としての、共鳴が観測された。
冷たく透き通るパルスであり、情動は未検出。
3. 出発(Deployment):
イグニス夫人の見送り。
U-001の首筋にある閣下の「監査痕」を視認。
「帝国とお父様のお役に立ってくださいね、ルーカス様」
イグニス夫人は「メンテナンスし終えた監査官の笑み」を表出。
【エルミタージュ邸・車寄せ】
1. 出迎え:
私は玄関ホールで直立し、馬車の扉を開けて待つ。ヴァルキューラ家から預かっている高額資産(U-001)を護衛し、軍事省に無事送り届けるのが最初の任務になる。
イグニス夫人は「夫」であるU-001の肩に手を置き、完璧な角度で顔を寄せている。
2. 無機質な接吻(Mechanical Kiss):
触れ合うだけの、儀礼的接吻。
「本日もエルミタージュ公爵(夫)は、ヴァルキューラ家(主君)の管理下で正しく機能しています」という、エルミタージュ公爵家使用人たちへの、そして世界への事務的なデモンストレーション。
U-001の瞳は、接吻の間もどこか虚空を見つめていた。
3. 出立:
「いってらっしゃいませ」
イグニス夫人による微笑の見送り。
その後、ヴァルキューラ家の紋章が刻まれた黒塗りの馬車へ乗り込む。
U-001は「良き夫」の微笑みを浮かべたまま移動。
私はU-001の裾が扉に挟まらないよう配慮。
「足元にご注意ください、ルーカス卿」
扉を閉め、準備完了。
扉が閉まる音とともに、「完璧に管理された公務」が、開始。
網膜コンソールで閣下へ出立報告を送る。
[REPORT] 08:00。U-001、定刻通り軍事省へ向けて出荷。外装、内部プログラム共に異常なし。
【軍事省へ向かう馬車の車内】
1. 残火の明滅(The Flickering Light):
U-001は外の景色を眺めていた。
街角で笑う子供や、開店準備をする商店主などが視認される。
「....今日も帝国は完璧だ」
琥珀眼の揺らぎを検出。
角の金色紋が何らのエラーを検知し稼働。
2. システムの強制収束(System Stabilization):
金色の魔術線が紋様を描き、パッチ稼働。
「あ……」
U-001の声にならない吐息が漏れ、光は収束。
琥珀眼の揺らぎは消失し、「ガラスの球体」へと変貌。
3. 完璧な「空虚」:
U-001は揺れる馬車の中で、軍服の膝に置かれた指先一つ動かさず静止を維持。
窓に映る顔を観測しているようだった。
【帝国軍事省・大廊下】
1. 特務官の行軍(The Guards):
軍事省到着とともに残りの特務官たちと合流。
U-001を護衛のため囲んで移動。
U-001は微笑を浮かべたまま無駄のない足捌きで移動。
2. 周囲の「ノイズ」:
「おや、噂の『公共財』様だ」「アレス閣下のご愛玩品が……」
揶揄、あるいは戸惑い混じりの敬礼を受ける。
それらすべての外部刺激に対し、U-001は瞬時に最適なレスポンスを選択した。
3. 完璧な「聖人の笑み」(Perfect Protocol):
「おはようございます。今日も帝国に幸あらんことを」
誰に対しても、寸分の狂いもない角度で浮かべられる微笑みを表出。
揶揄は止まり、挨拶した者は困惑していた。
【帝国軍事省・最高統合戦略大臣執務室前】
1. 儀式的な分離(The Separation):
執務室扉の前で、隊列変更。
左右に分かれ、U-001を中央に配置。
U-001は、かつて見せていた躊躇いも「恐怖」も見せず、滑るように進んだ。
2. 主君(管理者)への謁見:
扉が開かれ、閣下と対面。
閣下の上位金眼から放たれる魔圧に若年特務官が数名動揺。
U-001は閣下の前に歩み寄り、流麗な動作で跪き、頭を下げた。
「おはようございます、閣下。……U-001、本日も異常なく、稼働(出勤)いたしました」
3. 会議の回想(Flashback: The Neutralized Humiliation):
昨日は「U-001の繁殖能力の維持について」の審議が行われた。
「帝国の公共財」への取り扱いに関する事務的な会議であり、本日に答申が行われる予定だった。
名誉公爵の侮蔑及び権威剥奪を目的とした会議に思われたが、U-001は冷静に質疑応答に対応。
その「反応のなさ」に、揶揄していた将校たちの方が、気味悪さを感じて口を閉ざしていた。
【執務室内】
⭐︎ 議題に対する回答
1. 「個」の完全な放棄:
U-001は跪いたまま、微動だにせず閣下を見上げた。
その瞳は、羞恥も屈辱もなく澄んでいた。
「閣下、昨日の会議で議題に上がった『個体U-001の繁殖能力の維持』について、私から補足の進言を」
2. 血統の最適化提案:
「現在、妻のユーリはまだ子を孕める状態にあります。私の生殖機能を維持し、ヴァルキューラとアルビオンの血を濃縮・保存することは、帝国の魔導的安定に寄与するはずです」
農耕馬の交配計画を報告するような、平坦な声で案を提示。
3. 第二夫人の「推奨」:
「もしユーリとの交配のみではサンプル(血統)の多様性が不足と判断されるならば、第二夫人の選定・推薦も受け入れます。……全ては、帝国の管理下に置かれた『資産』としての務めですので」
公共財として非常に合理的な案だったが、閣下の機嫌が悪化。
【執務室内・継続】
1. 管理者の焦燥(The Administrator's Frustration):
「……貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか」
閣下が低い声で問うた。
U-001は、ただ「正しい事務的進言をした」という微笑みを湛えていた。
2. 懲罰的な接吻と「空白」:
閣下がU-001に接近し、強引に接吻。
発言の強制停止を行った。
U-001は跪いたまま無抵抗で受理。
3. 不機嫌な管理者:
閣下の行動によりU-001の口唇粘膜が傷害され、腫れと出血が観測された。
U-001は血も拭わず閣下を凝視。
「……申し訳ありません。閣下の意に添えなかったと受理しました。代替案を考慮します。去勢をお望みでしたらお受けします。後継者シリルも育ちました」
U-001は無機質に回答。
「……チッ、完璧なガラクタめ」
閣下は相変わらず不機嫌な様子で舌打ちを連打。
「繁殖継続」の方向で話はまとまった様子。
1. 「U-001」の集中:
U-001はデスクに向かい、軍事予算や魔導回路の配分表を淡々とチェックする。
流石元電法省長官らしく、帝国の「高級備品」として精密な計算機能を発揮。
2. 管理者の嫌がらせ:
背後から伸びてきた閣下の手が、U-001がまさにペンを走らせていた書類を強引に取り上げた。
「……閣下。まだ、その項目の決済は終わっておりません。承認が必要な工程ですか? それとも緊急のオーバーライド(強制執行)ですか?」
「五月蝿い」
閣下は抗議するU-001の顎を再び強引に捉え、接吻をして業務妨害を行った。
3. 「特務」の申請:
U-001は閣下を見上げ、進言。
「……承認が必要な案件ですか?それとも、……『小口決済』の必要性があるのでしょうか。
必要であれば、即座に執行(履行)いたしますが」
【アレス閣下にアーカイブされました】
U-001は乱れた髪をかき上げ、服の合わせを「事務的に」直し、椅子に座り直して業務を再開した。
「……ふぅ。……では、閣下。第4項目の続きですが、この魔導触媒の単価設定に修正が必要です」
今しがたの「残滓」がまだ服を汚損してることなど、もはや済んだことに過ぎない様子だった。
その切り替えの速さは特筆に値した。
「エルミタージュ卿、乱れがひどいです。損傷状況を確認いたします」
私は「各部位の損耗率」を、ペンでチェックシートに記入した。
「大腿部皮膚表面、口腔内粘膜及び...先日の部位の再度損耗を確認。現状規定値内です。……しかし、次回の『決済』までに再生魔法でパッチが必要であると進言いたします。少々、失礼します」
私は用意した手拭きで「汚損箇所の清浄」を行い、「外装(軍服)の再梱包」を行った。
「検品完了です。残りの公務にお戻りください」
U-001業務再開。
閣下の機嫌は治らず。
「...はぁ、閣下。仕事してください」
「....はっ。ガウェイン....貴様、あとで『特務』に付き合え」
「閣下!?」
閣下の秘書官ヴァランタン侯爵への八つ当たりを確認。
【夜・エルミタージュ邸(イグニス夫人の寝室)】
1. 管理者の交代(The Custodian):
軍事省を退出し、迎えの馬車へ移動。
「ルーカス卿に特筆すべき異常はありません、ユーリ様」
報告と共にイグニス夫人へU-001を返却。
「ありがとうございます、アーウィング様。お疲れ様でした、ルーカス様」
イグニス夫人は微笑で出迎えた。
2. 事務的な夕餉:
イグニス夫人とU-001の食事。会話の内容は、帝国の情勢や事務的な連絡事項のみ。
U-001は無事完食。
3. 「繁殖」という名のタスク:
食後、寝室にて繁殖タスク実行。
「『繁殖は義務』です。ヴァルキューラとアルビオンの血を繋ぐことは、この個体に課せられた最優先事項です」
以上。
特筆すべきイベントなし。
通常業務終了。
メモ:
本日も閣下は情動不安定。
グラディウス卿へ『抵抗値』の上方修正(再パッチ)を依頼予定。
アーウィング:「本日も異常無し」
ランスロット:「修正?いいけどさ。....アーウィング、君ってずっと執務室いたの?」
アーウィング:「近接警護だからな。基本的に張り付きだ」
ランスロット:「....ふーん」
アーウィング:「....?」




