1話 誰が女装男子だ。元からこんな顔だわ(※でも見た目は美少女)
【男なのに美少女に見える俺が、ちょっと変な学園で過ごす話】
中性的な外見が原因で、よく「女の子?」って聞かれる俺・荒夢正香。
そんな俺が通うことになったのは、日本でもちょっと特殊な“九条学園”。
初日から変な女子(お嬢様)に絡まれて、前途多難な予感……?
ちょっと変わった主人公の、学園ライフ始まります。
よければ最後までお付き合いください!
「ふわぁ〜……眠い……」
久しぶりに早起きしたせいか、頭がぼんやりする。まだ夢の中にいる気分だ。
「ここが・・・九条学園か」
目の前にそびえる巨大な建物。どう見ても、普通の学校とはスケールが違う。だが、これでもまだ“校舎”らしいと言っても事実だけどな。
周囲には俺と同じ制服を着た生徒たちが続々と集まっている。中には緊張した表情を浮かべている者も多く、今日が入学式だということを実感する。
俺の名前は――荒夢 正香。初対面ではほぼ100%「女の子?」と聞かれるほどに外見が女性寄り。
けど、俺は男だ。そこははっきりさせておく。
肩にかかる紫の髪に、左右で違う金と紫の瞳。肌はやたら白く、声も少し高め。喉仏はあるが上を向けないと分からないから声で判断されても分からなくともない。
見た目だけなら確かに“美少女”と言われても反論できない。
──でも俺は、男だ。俺は俺だ。それだけは譲れない。
俺が今日から通う九条学園は、国内でも知られた学園だ。
九条家っていう名門一族の初代当主が作ったらしい。まだ歴史は数十年くらいだけど、結構有名みたいだ。
偏差値でガチガチに選ぶ学校じゃなくて、いろんなタイプの生徒を受け入れてる。
しかも独特な校則があって、日本じゃ珍しいタイプの学園だって聞いてる。
「九条学園に入学するのは奇跡とかそういうのはないが・・・・・・」
それでも眠い。流石に眠い。久しぶりに6時起きをしたから頭が痛いが諦めるとしよう。偏頭痛とか頭痛ではないしな。
「ふわぁ〜・・・・・・」
早く行くか。
「あら、貴女もこの学園の入学生なのかしら?」
「ん?」
誰か声をかけているみたいだな。俺には関係ない話。無視するとしよう
「ちょっと待ちなさい。あたくしを無視して行くとはいい度胸をしているわね」
「ん?俺?」
後ろを向くと輝く黒色の長い髪を持った女性がいた。まさか、俺に声をかけているとは思わなかった。
「え? あたくしと同じ女性じゃないの?」
「……は?」
俺は固まった。まさかとは思ったが、どうやら彼女は本気でそう思っているらしい。
(あー……そういうことね。完全に女だと思われてるな)
そういうことね。どうやら、彼女は俺のことを女だと思っているらしい。ズボンを履いているから男だと思われるかな?と考えたがよくよく考えると女性でも制服にズボン履く人はいるわな。
服装だけでは判断できないのか、言っておくが中学生の頃はスカートではなく、ズボンだ。スカートなんて履かないからな。
「ああ、そういうことね。あんたは俺を女だと勘違いしている。俺は男だ」
「・・・・・・嘘でしょ・・・・・・美少女の見た目をしているのに・・・・・・」
「誰が美少女だ」
っで、なんでショックを受けている顔をしているんだこいつ?
「人を女扱いするのはやめていただきたいな。俺は男だ。分かっているよな?」
「えっええ・・・・・・分かったわよ。まさか・・・・・・まあ、いいわ。あたくしでも予想できないほどに世界が広いことを貴方のおかげで実感したわ」
それで世界が広いと思ってんの?まるで俺が女装男子みたいな言い方じゃねえか
「誰が女装男子だ。元からこんな顔だわ」
「えっ!?そうなの?母親の血が濃いわね・・・・・・」
「なんで分かるの?」
なぜ、俺の顔が母親譲りだと知ってんだこいつ?
「ん?勘よ」
女の勘というのは恐ろしいな
「あっそう・・・・・・それであんたは誰?」
名前も知らずに会話していたの今更気づいたわ
「あたくしの名前?そう言えば言ってなかったわね。あたくしは九条美姫!九条家の人間よ!」
九条学園創立一族の人間だったのか
「俺は荒夢正香だ。よろしく」
初日にこんな濃いキャラと出会うとはな……先が思いやられる。
でも──なぜか、悪くない出だしのような気もした。
______
「九条家の人間だとは思わなかったよ。色々と大変じゃない?立場的に」
「問題ないわよ。あたくしは後継者候補じゃないもの。あたくしの上に兄2人と姉3人いるから優先順位はかなり低いわ」
「誰が後継者候補話しろと言ったんだよ。立場的に大変じゃないか?って質問しているだけだぞ」
友達になってしまった。女友達を作るのはこれで初かもしれない。
「もう一度質問しよう。色々と大変じゃない?立場的に」
「そうね……あたくしの立場上、媚びいて来る人はたくさんいるわ。後継者候補じゃないとしても九条家の人間はかなり価値ある存在。でも、貴方が思っているほどに大変じゃないわよ。だから、心配は不要よ」
「メンタル強いんだな」
根太いのかこの人?
「それにしても貴方、本当に可愛いわね。今度、あたくしの服を着て女装してみない?」
「断る。それは罰ゲームの領域だろ」
「まぁ、残念。でもきっと似合うのに」
やめてくれ。想像されるだけでこっちが恥ずかしい。
「やられる側の気持ち考えろ」
全く、なんでこんな会話を入学式の日にやらねえといけないんだ
「全く・・・・・・揶揄うのは辞めてくれ」
「そう?嫌なら仕方ないわ。でも、あたくしが言ったことは本心よ」
「……あっそ」
「顔少し赤いわよ。照れてる?」
「夕日のせいだ」
「今朝よ」
「……」
言い訳は通じなかった。
「可愛いわね。後であたくしの部屋に来ない?」
「なんでだよ」
なんで自分の部屋に男を連れようとしているんだこいつ。並のナンパよりやべえぞ
これからの学園生活、少し不安になったが大丈夫か……?
──クラス発表まで俺の記憶にほとんど残っていない。
理由は簡単だ。隣にこの変人お嬢様がいたせいで、気が散って仕方なかったからだ。
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