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王女の国へ養子になったアランは王子になるのか

 ケリーヌはガーデンパラソルの下にいた。季節は夏も近づき日差しが眩しい。

「ケリーヌさん」

 声をかけたのはアランだ。貴族の服をまとう。

「お邪魔してよろしいかな」

(礼儀はわきまえているよね。お坊ちゃん王子とは格がちがうのよ、あの女の言い方からすれば)

 王都の旅館に泊まっていたらしいが、女王の養子になり王城で住む準備も進められていた。

 軽く応じて座るようにすすめる。

「女王様とは連絡も取りあってたんだね」

 大麻のことでも、さっそくとアランが動いて、売買契約書を準備できたのだ。いくらSNSでも対応が早すぎると思ってはいた。

「王家繋がりだから。それより、女王様にお会いするのだろ、これから」

(いや。婚約もないし、もう会う必要はないけど。ま、次期女王とかはもっと未来の話でしょ)

「忙しい方だから。私は、待ち合わせ」

 いつものようにサユリーを待っている。

「トピックが増えたみたいだな。やっぱり、お題を決めた方が投稿もしやすいのだな」

「結婚相談とかも依頼が来たけど。まちがえれば、出会い系になるし」

「SNSが出会い系だと思うが」

(そういう不埒な人がいるらしいのは気づいてるけどさ)

「使い方だね。でもさ。再婚したいって話は、応援もしたいのよ」

(じっさいは、再婚相手を捜して欲しいとの要望だからね)

 ケリーヌも父をみて考えることもある。

(母上がくるまでは父も忙しくてコミュニケーション時間が減少していたのは確かね。ま、祖母様もいたけどさ)

 実母の存在を確かめるように祖母とSNSへ夢中になった部分もある。

(なんかさ。母上が来てから父も変わったよね。丸くなったというか)

 男として連れ合いが心を安らげもしたのだろう。

「子育て支援の延長でいいのじゃないか。そうだな、コジュトーナ様に任せれば変なことにならないだろう」

「そうかもね。桜を愛でる会が主催してもらえば安心できるかも」

 結婚相談も受け入れそうな組織だ。

「オトナの社会はお互いに利用するものだよ。それが、悪いことになることもあるが、普通は上手く世の中を回す仕組みになっている」

「それぞれ、考えてたんだよ。うん、大麻騒動で分かった」

 アケーミがニートダスを連れてきたのが決め手となったのは確かだし、コジュトーナも疑問を解くために調べたのだろう。信じたい気持ちが最後まで有った気もする。


「お待たせー」

 振り返ると、待ち合わせをしていたコチラノ伯爵家の令嬢、サユリーだ。

「なにか目新しい噂はあったかな」

 アランが話題を向ける。なぜか最初はサユリーへ声をかける。

「あったがなー。噂にもならん話やでー」

「隠すところは、ちゃんと隠すからね。それより、結婚相談所。コジュトーナ様へ頼もうと思う」

(サユリーも、なにか計算して話してる。ただのお喋りじゃないんだよ)

「コジュトーナ様なら、良い案やでー。それよりなー。女王様が寂しがってる噂やでー」

「けっこう忙しいんだよ、女王って仕事も」

「でもなー。家族がいなくなればなー」

「それは、あるかな」

 追放したとはいえ、いままで住んでいたのがいなくなると寂しさもあるはず。それそれ、と話しに乗ったのがアラン。

「ケリーヌさんが会うのは、良い暇つぶしになるはずだ」

「ひまつぶしですか。ま、良いか」

(SNSを利用したいとおっしゃってたし、いまでも会える立場なのは変わらないみたいだよね)

 コジュトーナが話していた『えにし』かも知れない。

「それじゃ。いこうか。サユリーさんへ任していいだろう」

 アランにサユリーも調子よくうなずく。

「かまへんけどなー。良い話はいつ聞かせるんやー」

 ケリーヌは尋ねられても意味がわからない。

「おもしろい話なら知ってる。隣のポチは白い犬で」

 アランが苦笑して言葉を遮る。

「それじゃないだろ」

 たしかに、神話時代の駄洒落だ。

 そういうわけで、ケリーヌとアランは王城の通用門へ向かって歩き出した。次期女王と養子という意味を深く考えてないし、そのほうが意識しなくて良いのかもしれない。


    ・


 マイカルたちは夕方にサイハーテ領の開墾地へ着いたらしい。なにが有ったのかは、まだ聞いても居ない。

「ヒバリ女王様も一緒に会いにいくつもりです」

 女王も落ち着いたころにマイカルへ会いに行く予定をたてているらしい。

 女王も忙しい。ゆっくり話してる暇もない。

「SNSを見に行こうか。ついでに庶民たちと会いたい」

 アランは養子になるから、と顔みせもかねて、王都を散歩しているようだ。

「暇したら碌に仕事はしないと思う」

 マイカルみたいに遊ぶほうけるのを心配もした。

「けっこうやることは有るはずだ。まずは、貴族たちと会うのが仕事だ」

「二番目でも王子だものね。ここでも変わらないか」

「ハーラヌアマ王国のようにのんびりはできないかな。慣れたら女王様の手伝いもすることになる」

(あいつとは違うんだ。王様もいたし、いつまでもお坊ちゃんだったね)

「あれっ。この国の王子になるってことだよね」

 今更ながら気づく。

「いまは、考えなくていいさ。なにか王女様から言われたかな」

「特別には、なにも」

 ちょっと言葉を濁した。

(次期女王っておっしゃってたよね。まさか、お見合い?)

 女王の考えがおぼろげに理解したが、いまは考えないことにした。

(婚約破棄したばかりだしね。それに恋とかも経験したい。いやいやいや。どうだろうか)

 恋は四捨五入するもの、と王都学園のころに聞いたこともある。

(アランさんへの思いは、どうだろう)

 話も楽しいし、心が安らぐのは確かだ。恋というには、あと一歩なにかが足りない気がする。


 二人乗り小型馬車に乗りSNSのホームへ来た。御者はいないから、馬の手綱を操れたら手軽に利用できる。

「デートやなー。ほかにいくとこないんかー」

 馬車から降りるところへ声をかけたサユリー。

「まずは座敷へ。王子になるのだな。あれ、元から王子様か」

 若い貴族たちも華やかに迎える。いつもように、溜口になるのはしかたないし、アランも気にしてないように、実況のことを話す。

「SNSは凄いな。表情まで書いてあった」

「半分は創作でしょ。サユリーさんは大袈裟なことも書いたわね」

 そこへ蹄の音を響かせて紙筒を持った男。

「元王子が魔女の国へ逃亡」

「魔女の国って。女王様の気もしらないのね」

(開墾地で働いたら、子爵になれる可能性も残されてるのにさ)

 女王の口から、離縁というのは聞かされてもない。元王様とは縁を切っても母子の縁は切れないらしい。

「護魔から行ったのかな。しかし。本当に行けるのか」

 アランも半信半疑なようす。

「開け護魔って呪文を使ったんだよ」

「神話やけどなー。世捨て人が魔女の国へ行った話は聞くでー」

 サユリーの情報は確かだろう。

「気にはなってたのよ。ざまぁしたのは良いけどさ」

 後味がわるいというか、コジュトーナのいうように、心から過ちを謝れば、あの二人も変わると、どこかで信じてもいた。

「気にするなら、行動だ」

 アランが言う。

「護魔へ入ってみようかしら。近くにもあったし」

 魔女の国へ通じるというお社が、あっちこっちの森の前にある。それが護魔だ。

「会って、なにか話すことでもあるのか。もう、追及は良いだろう」

 アランがざまぁは終わったと言いたそう。

「ちょっとね。真実の愛というのも確かめたいのよ。あの女に、ひとこと言ってやりたいこともある」

(贅沢したいはずだし、王女になるとか言ってたし。魔女の国で我慢できるかしら)

「恋をしてるのだろう、あの二人は。そうだ、ケリーヌさんは、まだ恋の意味を知らないとか」

「分からないけどさ。うん、分からない」

(分かりかけてはいるけどね。だけど、アランさんはどうかしら)

 まえに口癖だった、婚約してなければ、のあとは聞いてないし。挨拶代わりの言葉だったとも思えた。二人で護魔へいくのは、なにか意味を持つかもしれない。


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