カエレンは本性をだしたが、麻薬取り引きの犯人だった
昼になり、スレでも、大麻栽培だけで王女が追放されるのに納得しない意見が多い。
「薬になり、薬局でも扱っている」
そのためじゃないのか、事情は聞いているのか疑問を持つ者もいた。
瓦版のネタバレをするスレッドも立った。
「大麻を見つけたのは朝。午前中に追放は早くねーか」
「王様は王女様を城内で軟禁したかったらしい」
聖女の判断で、王女様は侯爵領へ行くことになったようだ。
(なるほどね。父は留まる予定だったんだ。それでも、王家の意見が王様一人だけだし、なんてたって発言力が違うから)
侯爵や伯爵の意見を王女様が受け入れて、対等な議論ができていた。
「庶民はなー。単純に、追放へ不満らしいでー」
「そうだね。経緯も知らされないで離縁は、感情的に受け入れないと思う」
どさくさに紛れて新しいスレッドも来た。
「ジュゲムさんのスレ。久しぶりだね」
相変わらず俳句だが、ちょっと趣向もあるらしい。
『しゅんらいが、天を下りて。下句を考えましょう』
「言葉遊びでんなー」
SNSの使い方も広がっている。実母が目指していたものだろう。
「世間が騒いでいても、楽しんでいるのね。この平穏な生活を守らなきゃ」
(でも、意味が分からないね、あいかわらず。アランさんがきたら、聞いてみよう)
アランのことを思えば、ちょっと気持ちも和む。
周りでは騒々しくもなってきた。
「騎士たちやでー」
「鎧まで付けて、普通の警備じゃないよね」
戦争を彷彿させる姿だ。
「姫ちゃんが女王代理とか威張ってたしなー」
「あいつが指示したんだよ。利権が欲しいと言ってたのに、やっぱり武力をちらつかせたいのだよ」
そして歓迎しない者たちが来た。
「王家の馬車やなー。来よるでー」
4頭立ての馬車がテラスの前へ停まる。
「あいつとお姫ちゃんだね。朝もきたというのに、なにか企んでるのだよ」
テラスの前へ小走りで行く。降りたつマイカルが勿体ぶって喋る。
「庶民を扇動しておるらしいな。取り調べるゆえに」
(ただのお喋りでしょ。でも、言語統制もしそうな感じ)
「いつものスレでございます。自由にご観覧してください」
「勘違いなさってますわよ、おほほ」
カエレンは顔が口になったような笑顔で近づく。
「SNSの権利を譲渡してもらいますわよ」
「聖女様に頼めば始められますから。ま、あなたには無理でしょ」
(この女に敬語なんか使ってられるかって)
「女王代理であるぞ。命令じゃ。従わねば、不敬罪で拘束いたす」
(牙を剥いてきたわね。一度は譲るか。でもさ、図に乗ってくるはずだし。いまここで、下がれない)
会議をまえに情報統制するつもりだろう。
風の妖精シルフが髪をなびかせた。手で避ける、人が集まっているのにも気づく。
「まわりをご覧くださいな。庶民が見てますよ。その振る舞いは王家へ不満を持たせるだけでございましょう」
「非常事態じゃ。すべて僕が支配する」
「頼もしい王子様ですわよ。わたくしもSNSの管理者にならせていただきますのよ」
思惑通りと言いたいようだ。令息たちと話していたらしいサユリーが近づき、待ってたように口を挟む。
「おもろいなー。あのジョーキキカンの会社も、こうして乗っ取るんかー」
「当然じゃ。従わねば武力で脅すゆえ、庶民へ戦う覚悟をさせるのも役目じゃ」
「この辺りの国を統一かー。ハーラヌアマ王国は手ごわいでー」
(ぅわっ。そこまで広げる。でもなにか魂胆があるんだよ)
ケリーヌの思惑は気づかないマイカル。
「ジョーキキカンは武器にも使えるゆえ。ハーラヌアマ王国へ攻撃を仕掛ける予定じゃ」
「本当に革命が起こりますよ。誰が戦争を喜びますでしょうか」
「まだお判りになってませんのね」
カエレンは手で騎士たちへ合図する。言葉尻というか、なにか言い訳を考えていたらしい。
「革命とか、反乱罪ですのよ。王子様がテーファー王国を元の大国へするための邪魔ですわね。謝ってSNSを譲渡しなさいよ。さああ、書類は」
強欲な地がでたらしい。王家へ反抗するようなことばを待っていたようだ。
カエレンに指図されてケリーヌへ近づく騎士たち。
(ちょっとまずいな。署長は話も分かる人だし。そこで)
「威勢がいいな」
(えっ。アランさんの声)
同時に草原の薫りをまとったアランが隣へ来た。
「王家の馬車に、ユヌムンのお嬢ちゃんが乗ってたのでな。あとをついて来たんだが。面白い場面だと眺めていた」
(面白がる状況でもないし。おじょーさん、とか知りあいかしら)
あれこれ考えをまとめる間もなく、成り行きは進む。マイカルが強気だ。
「王族の前に出るとは何者じゃ。名を名乗れ」
「いいのかな。さっきは、ハーラヌアマ王国へ攻撃をしかけるとか、聞き捨てならないことをおっしゃったようだが」
(そうだよね。少なくともアランさんは、ハーラヌアマ王国の貴族のはずだし)
それでもマイカルは自分が一番偉いと思っている。
「偉大なテーファー王国の邪魔をするのはハーラ」
そこで、一歩退いていたカエレンがマイカルの腕を引っ張り言葉を重ねる。
「ハーラヌアマ王国の。第二王子が、いつもの旅道楽ですの」
「面白いことがあるらしいからな」
(えっ。王子、第二。あらっ)
手にした紙筒にも気づいた。
「あの。もしかして、なにか用事でしょ、アランさん」
マイカルは言い訳を始めている。
「いや。ちゃんと外交を重んじ」
それは聞いてないアラン。
「麻薬のな。売買契約書が手に入った」
スポン、勢いよく紙筒の蓋を開ける。
「余計なことなのよ」
カエレンは焦るようにマイカルの手を引いて帰ろうとする。
「待ちなさいよ」
ケリーヌは小走りで、二人の前に立ちはだかり、両手を広げる。
「これで、はっきりするよね」
伸ばした手にアランから紙を渡される。読んでびっくり、
「王様が契約だって!」
「ほら、拡散用のコピーだ」
アランがサユリーにも紙を渡す。
「受取人はお姫ちゃんやなー。楽しくなるでー」
たまに、トラブルを楽しむ癖があるらしい。
「騎士の皆様。捕まえるのは、このお姫ちゃんらしいですね」
「はい。署長の許可を取りますから、すぐには」
(ま、いいか。でも、逃げられないからね)
「王様も関わり、王女様を罠にかけたと。侯爵家として、質問状を提出します。お答えによって聖女様から処罰の重さも決まるでしょう」
「黙秘じゃ。会議で話すゆえ」
「公開質問です。庶民を前にして真相を告白して懺悔してくださいね」
「いまは、お城へ」
カエレンが急かす。一連の流れを見ていた庶民たちが馬車を取り囲もうとしているのを騎士がなだめて居るところだ。
ケリーヌは庶民へ呼びかける。
「公開質問をします。平穏は保たれるでしょう。冷静にね」
「ケリーヌ様がおっしゃるなら」
「侯爵家の質問だ。無視できないだろう」
王家の馬車を見送りながらもざわつきは収まらない。
(でも、なぜアランさんが都合よくきたのかしら)
気になるが、いまは庶民たちと話して、明日の朝に王城へいって話し合うと約束した。将来の王女という立場は、いまも影響が大きいようだ。
(父は領土へいってるらしいから。ここは私がやらなければ)
マイカルが会議で非常事態だから、と大麻のこともうやむやにする気がした。
「明日の朝に公開質問をするわよ」
「忙しいことで。休憩ついでに話そうか」
そういうわけで、アランといつもの縁側で話すことになった。




