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The Countdown  作者: g
7/40

パートナー爆誕?


3月26日

今日はなんかちょっと冷え込みが強い一日だった。朝からエアコンとファンヒーターのダブル使用で部屋を暖める。

午前中はいつものルーティン、新しい有益な情報は特に無いようだ。丸形アイコンの能力も今だに判明していない。

午後からはVRドローンで遊ぶ..ごほん..VRドローンでの検証だ。

いつものように高度を高くとると街並みをグルっと一望する。その後当てもなくフラフラと空中遊泳を楽しんだ。時にはビルとビルの間を高速飛行して気分はバーチャルジェットコースター体験をし、時にはビルの中の人間模様を観察する。


「おーおー、コメツキバッタみたいに頭下げちゃって....上司に叱られちゃったか?元気出せよ、その内いい事もあるさ」


バッテリーを換えながら数時間空中散歩を楽しみ、そろそろお終いにしようかと考えていたその時、高層マンションの非常階段に気になる人影が見えた。このマンションの非常階段は、いかにも非常って感じで普段人が出入りするような構造には見えない、なので、そこの最上階層の踊り場に人がいる事が酷く不自然に思えた。そんな場所に人がいる事が気になった俺はゆっくり高度を落としながら近づいていく。


「え? あれって...」


踊り場にいる人は女性だ。しかも、まだまだ気温が低く春と言うには寒すぎる筈なのにやけに軽装に見える。彼女は踊り場の手すりに近づいたと思ったら、足を掛け.........身を投げた。


「まてまてまてまて!!!」


「........」


「...................」


「......................................................はぁ......」


「.....どうしよう.....」


俺は、リビングのテーブルに突っ伏しながら頭を抱えた。


目の前のキューブを確認する....。何度見ても...人が入っているよなぁーーー。

俺は、あの時とっさに落ち行く人を...「保存」...してしまったのだ。


「やっちまった...」


眼の前がクラクラする...俺はきっと人一人の重大な運命の行く末に強引に割り込み、そして必要以上に関わってしまった筈だ。

恐らく俺にとって一番いい選択肢は、この人をすぐ元の階段に戻し、後の事はいっさい関知しない、現実から目を背ける事なのだと思う。だけど俺にそれが出来るだろうか....。この人が思い留まる可能性は...低い気がする。別にバカが薬物中毒になろうが、アホどもがドンパチやろうが勝手にしてくれと思うが。


「あんな顔..されちゃなぁ」


俺は、数日前の繁華街で見た、彼女の表情を思い出す。そうマンションから身投げした女性は、ラーメン屋から出たときに友人とぶつかってしまった、あの女性だったのだ。

もしかしたら、俺があの女性の事が気になったのは、なにか重大な想いを秘めていた表情をしていたからだったのだろうか....。


「うーーーー」


こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎ去っている。ざっと確認した時は現場に目撃者は見当たらなかったが、このままずっと保存しているわけにもいかない。


「うーーー仕方ない! もう 腹をくくるしかない!!」


唸った所でどうにもならないと悟った俺は、彼女を床に「復元」した.....。

家のリビングの床に現れた彼女は横たわった体を瞬時に起こし、頭を上下左右に動かし周りの状況を確認しだす。


「え!? なに? 何処? 生きてる?」


彼女は周りをキョロキョロと見回すと、両手で自分の体をあちこち触っている。


「あーー すまない...ちょっといいかな...」


彼女にそう問いただす。


「え? なに? 誰? ここは何処なの? もしかして地獄?」


何故天国じゃ無いんだと小一時間問い詰めたいが、俺を見た彼女は、座ったまま凄い勢いで後ずさった。

わたわたとパニックになっており、今にもここから逃げ出していきそうな彼女に、俺はビシッと右手を突き出す。

彼女の体がビクッと震えるとその場で固まった。


「...あなたは....死にました...」


ゆっくりと諭すように言葉を紡ぐ。


「し...死んだ?」


「そう 死にました だから、これ以上死ぬことは出来ない...」


「......ここは?」


そう問いかける彼女に答える事なく、俺は財布から現金を抜き出すと10万ほどある札束を彼女の目の前に突きつける。


「え?」


「...これは、三途の川の戻り賃です。これを持ってあのドアから出て下さい」


俺は、左手の人差し指で玄関の扉を指差す。


「...............................」


何かを言いたそうな彼女は何度も現金と俺の顔に視線を往復させると、やがてゆっくり立ち上がり恐る恐る金を受け取った後、何度も振り返りながら玄関から出ていった。


「はーーーーーーーーぁあああああ」


ドカッと椅子に座り直す。なにやってんだよ 俺は.....。


3月28日

ピンポーン

朝からPCが謎のフリーズを繰り返し、グラボやらメモリやらを取っ替え引っ替えして不具合原因の究明をする為にPCと格闘をしていたが、恐らく電源が怪しいんじゃないかと当たりを付けた矢先に玄関のチャイムが鳴った。

何か虫の知らせを感じた俺はドローンを玄関先に向かわせると、そこに立っていた人物は先日の彼女だった。


「......」


俺は、対応をする事無く、居留守を使いだんまりを決め込んだ...だって会った所でどうしようもないのだ。

数分間佇んでいた彼女はもう一度チャイムを押そうとしたが...踵を返して去っていった。


3月29日

ピンポーン

チャイムが鳴る。

俺は居留守を使った。


3月30日

朝から冷たい雨が降りしきる一日。

俺は何か予感めいたものを感じ、視線をインターホンに向けた直後だった。

ピンポーン

玄関のドアチャイムが鳴り響く....。


「はぁーー」


ドローンで確認すると、やはり先日のあの女性だ。

彼女の気持ちも理解らなくは無い...恐らく、思考がぐちゃぐちゃで気持ちの整理など到底つけられないんだろう...だから、その気持を少しでもどうにかしたくて...どうしていいか分からなくて...俺に縋りたいんだと思う。


「だからと言って、俺にしてやれる事なんて無いんだよなぁ...」


俺は、彼女が諦めてくれる事を祈りながら、だんまりを決め込むしかなかった....。


「ふー」


俺はPCのモニターから壁に掛かっている時計に視線を移す。時刻はとうに正午を過ぎており、腹に手を当てると朝から何も食べていなかった事に気づいた...確かに腹が減った...。朝から調子の悪かったPCも、マザーボードの電源コネクタを抜き差ししたら直った...接触不良でもしていたのかもしれない。


「なんか食うか」


PCの前から重い腰を上げ、リビングに移動するが一瞬窓の外に視線を向ける。たまには、カップ麺や半額弁当ばかりじゃなく外食でもしたい気分だったのだが、外は相変わらずの雨模様の様だ。VRドローンをマンションの外に出し、厚く重なった雨雲を見つめる....。


「え!?」


俺は、玄関の扉を開け薄暗く狭いエントランスを通り抜ける....安いビニール傘を広げ道端にでると、そこに見えて来た物は、マンションの誰かが管理しているのであろう赤く立派な蕾をつけた花が咲並び、それに重なる様にして佇む花柄の赤い傘を差し雨の中立ち尽くす女性の姿だった.....。


「風邪...引きますよ?」


俺は、彼女に声を掛けると、彼女は一瞬ビクっと肩を揺らしコチラを振り返る。


「あ あの えっと...」


「どうぞ...」


俺を見た彼女は瞳孔を大きくさせ、何かを言いたい様だが、言葉がうまく出てこないらしい...俺はあきらめにも似た感情を湧き出させつつ、彼女を部屋へ招き入れた。


リビングに腰掛ける彼女にコーヒーを差し出すと、対面の椅子に腰を下ろす。彼女は俯いているだけでこちらを見ようとはしない。無言の時間だけが過ぎ去ってゆく。


「何か お話があるのでは?」


俺は、なるべく平静を装って問いかけてみた。すると、彼女は持っていたバッグから封筒を取り出すとこちらのテーブルへ差し出してきた。


「これは?」


彼女は何も言わない。中を確認すると、俺が渡した現金が入っていた。


「その、まずはお返ししようと思って...」


「何故?」


そう言うと、彼女は俺に強い視線を向けてきた。


「あの! 死んだって...どういう事ですか?!」


そして、俺に向け心の叫びとも取れる言葉を発する.....。まあ、その言葉は当然の疑問だろうな...。


「あなたは 飛び降り自殺をしたのでは?」


俺は、一瞬思案したが...思い切って彼女に現実を突きつけると、彼女が目を見開いた。


「っ! そうです! なのに死んでない! でもあなたは死んだと言いました! あなたは誰なんですか? 私は生きている ここは死後の世界なんですか?」


彼女は一気にまくし立てる。俺は、彼女を落ち着かせるように言葉を紡ぐ。


「お名前を....お聞きしても?」


「.....桂木...夢乃...です」


「桂木夢乃さんという方は、あの時マンションから落下してお亡くなりになったんです 今ここにいらっしゃるのは、桂木夢乃という名の別人です」


「?! 意味がわかりません...だってあなたは私が死んだって...」


「そのままの意味ですよ.. 桂木さんの人生はマンションから飛び降りた時に終わったんです あなたは桂木さんの人生とは違う生き方をすればいいんですよ」


「な..なにを..訳が分かりません....って言うか、そんな事できるわけ無いじゃないですか!」


「何故です?」


「な 何故って...」


「桂木夢乃さんはマンションから身を投げてその人生に幕を下ろした..そうですよね?」


「......................」


「では、ここにいるあなたは誰ですか? 桂木夢乃さんですか? いえ違います もし記憶の中に桂木夢乃さんの思いがあるのだとすれば、それは幻です忘れていい記憶なんです。そしてこの先を生きる...それは無理な事ですか?」


「忘れろって、そんな..そんな事」


「もう、あなたは桂木夢乃でなくていいんです。過去の自分に別れを告げてこれからの人生を..未来を見据えて歩んで下さい。時間はタップリとありますよ。もし、それでもこの先、生きづらい、問題があるならというなら言って下さい。私でよければお手伝いしますよ。まずはゆっくりこれからの事を考えてみられてはいかがですか?」


彼女は一礼すると、玄関を去っていった......。












「...........................ヨッシャ ごまかしたぁぁああああ!!!」









翌日


ピンポーン


「...................」


ガチャ


「あ 相談に乗ってもらえるって....」


デスヨネーーーーーーーーー!!!!!!




4月2日


「なるさん お肉」


「へい」


俺はインベントリから牛肉を「復元」する。


「なるさん じゃがいも後2個」


「へい」


俺はインベントリからじゃがいもを「復元」する。


「なるさん」


「へい」


「なに変な顔してるんですか? いつもカップ麺ばっかりじゃ栄養がかたよちゃいますよ?」


「サーセン」


いや、そんなんどうやって飛び降り自殺をした人を助ける事が出来るかなんて、隠し通せる訳ないじゃん....。速攻ゲロらされたに決まってますがな。


「どうですか?夢乃特製肉じゃがは..」


彼女がリビングのテーブルに両肘をついて、手に顎をのせながら聞いてきた。


「ああ うん 美味しいよ」


たしかに、お世辞じゃなくて美味しい。


「で? 手続きはちゃんと出来たの?」


俺の感想を聞いてニッコリすると自分の分の肉じゃがを食し始めた彼女に聞いた。


「はい、大丈夫でした...あの...ほんとにいいんですか?」


彼女が心配そうな表情で聞いてくる。


「ちゃんと、約束、守ってくれるならね...」


俺は、パクパクと肉じゃがを口に運ぶ。


「それは、もちろんですけど...」


桂木夢乃25歳 身長160cm 体重45kg(俺予想)スリーサイズ B75 W51 H77(俺予想)黒髪ロングで左目の泣きぼくろがチャームポイント、大手商社勤務だったが今は無職、父親が多額の借金を残し蒸発。母親は幼い頃に他界してしまい、父親と2人暮らし、債務者や暴力団の借金取り立てに精神を蝕まれ体を売られそうになった所を辛くも逃げ出し、自殺を決意。運良く?俺が助けてしまいとりあえず父親の借金を俺が肩代わりをした。その見返りと言ってはなんだが、俺の超常現象を黙ってくれるようにお願いをした。

食事を終えた俺たちは、しばし休憩の後お互いに向き合い椅子に座る。

彼女は俺に深々と頭をさげる。


「あの、ありがとうございました。....それで...どうすれば?」


「どうする..とは?」


「え?だって、私..何か...」


彼女は困惑の表情で手をわたわたと動かす。


「俺は、約束さえ守って頂ければ、他に言う事は何もありませんよ」


もうこれ以上の厄介事はごめん被りたい...自分で巻いた種だと言う事は心の棚に上げるのだ。仮に万一俺の事を周りに吹聴しても恐らく ”乙”で今なら終わらせられると思う。人は自分の目で見たことしか信じない悲しい生き物なのだ。


「でも、何か私に出来ることがあれば..」


「あなたは、あなたの人生を歩んで下さればいいんですよ。私のことはその途中にあった道端の小石程度に思えばいいんです」


ホントにそうなんです。今すぐ忘れてもらって構わないんです。


「そんな!ここまでして頂いたのに、このままなんて..私何かしたいです」


いや、正直つきまとわれると俺の活動がやりづらいんだが...人の口に戸は建てられない...。今後も側に人がいるとなると、どこから綻びが生まれるか分からない。それに折角拾った命なのだ。今後の憂いも無くなったのだし幸せな人生を送って頂きたい。誰もが羨む美人に生まれてきたのだから、こんなおっさんに構ってちゃ勿体ないと思うんだが。

彼女を見ると、大きな目で真っ直ぐに俺を見つめている。


「ふー...」


俺は、頭をガシガシと掻き毟ると、手で彼女にしばし待ての合図をして席を立った


「こほん...」


軽く咳払いをすると、彼女の前に分厚い封筒を取り出した。彼女の顔が封筒と俺を行き来する。


「これは、手切れ金です」


「手切れ金?」


「はい、まずそのお金で周辺整理をして下さい」


彼女が首を傾げる。


「...あの、周辺整理とは?...」


「今までの桂木夢乃を精算して下さいという事です」


「.................」


彼女はなんとも言えない表情になる。


「申し訳ありませんが、桂木夢乃さんはお亡くなりになりました。まず、これをしっかり受け入れて下さい。今のあなたは、戸籍上存在するだけの別人です」


「...................」


「親、兄弟、友人、知人、...その方たちとの関係をリセットして頂きます。今お使いのスマホも解約をお願いします。そして新規で契約し直して下さい。今まで生きてきた思い出や記録などの処分をお願いします。偶然街中でご友人に出会われても、...赤の他人です...」


「そ、それは....」


彼女が膝に置かれた手を握りしめる。


「難しいですか?」


ひどい事を言っていると思う...。それは自分の心を殺す行為だ。だが彼女は選んだはずだ、25年間の自分との決別を、誰に指示される事も無く、自分の意思で。

俺は、彼女に1週間の猶予を与えた。

1週間後、ここに来た彼女は一体どんな答えを出すのだろうか......。




4月3日

=========カウントダウンサイト============

299 イエーイ 前夜祭だぜベイベ

300 落ちけつ

301 何まだ盛り上がってんの?

305 盛り上がるも何も、そもそも盛り上がりなんてあったか?

309 無いな>305

315 俺のマグナムが...

316 だまれ(-_-)/ビシ>315

317 はやくそのポークビッツを仕舞うんだ>315

318 ヘ(゜∀゜ヘ)アヒャ

319 誰か止めろ!

333 これって明日の4時44分44秒なんだっけ? タイマーの0

335 らしいな...だから何? って感じだが

337 海外じゃテロが起こるとか言ってるんだろ?

339 それっておかしくね?>337

404 なにが?>339

405 だってそれは日本の話だろ? 海外じゃ時差があるじゃん

406 たしかに...ん?どうなってんだ?

409 いや、別にテロが起こるなんて決まってないし

415 どうなってるのかはしらんが、海外は海外のタイマーなんだろ>405

417 じゃあ日本のサイトと海外のサイトは別物って事?

419 さあな

429 URLは一緒っぽいけどな、これ海外サイトの表示はどうすんだ?VPN経由で見れるのかな

433 しらね( ゜д゜)

438 まあ何かあったとしても、このサイトを見た模倣犯がくだらな事をやらかすだけだろうよ

439 盛り上がってまいりました

440 だから盛り上がってねえっての

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