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没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!  作者: 武蔵野純平
第二章 新領地への旅

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第20話 魔の森の手前で野営の準備

「よーし! 押せー!」


「グアアアア!」


「動いた!」


 俺たちは、ジロンド子爵の領都ギャリアを出て、南へ向かっている。

 アリアナ街道という大きな街道を通っているのだが、道路のコンディションが悪くなってきた。


 道路の幅は馬車がすれ違えるほどの幅がある主要街道なのだが、路面がひどい。

 デコボコが多く、雨でぬかるんだ場所もある。


 御者を務める執事のセバスチャンが、ぬかるみにはまらないように馬型のストーンゴーレムをコントロールしているが、全てのぬかるみを避けることは出来ない。

 俺たちの馬車は、ぬかるみでスタックしてしまった。


 そこでジロンド子爵の騎竜が、馬車を後ろから押してくれたのだ。

 おかげで馬車はぬかるみから無事に脱出した。


 まだ、ジロンド子爵の領内なのだが、スタックするのは二回目だ。

 領都ギャリアを出発して、初日からこれだ。


 住んでいる人が少ないからだろうか、南部は中央部ほど道路事情が良くない。


 これからの道程を考えると大変だが、力持ちの騎竜が同行してくれて心強い。

 ジロンド子爵に感謝だ。


「よーし! この先に野営できる場所がある! 少し早いが野営の支度をしよう!」


 南部は人口密度が中央部に比べて低い。

 村や町の数が少なく、魔物が住む『魔の森』が点在している。

 点在といっても、一つ一つの魔の森は広く、住んでいる魔物の数は多いという。


 今夜の野営予定地は、魔の森の手前にある。

 アリアナ街道は、この魔の森を貫いている。

 魔の森を抜けるのに半日ほどかかるので、今日は魔の森の手前で休んで、明日の朝一番に出発し、魔の森を抜けるのだ。


 アリアナ街道沿いに、魔の森から流れ出る小川があり、小川のほとりに旅人が野営できるスペースがある。

 土がむき出しだが、沢山の人が利用したからだろう、土はしっかりと踏み固められていて、馬車を乗り入れても大丈夫だ。

 石を積んだカマドもあるので、料理も出来る。


 俺たちは野営の支度を始めた。

 大人たちは忙しく働いているが、妹のマリーは手持ち無沙汰らしく、騎竜と遊び始めた。

 マリーが騎竜に話しかけ、頭をなでている。


「お利口ね! 今日一日がんばったわね! えらい! えらい!」


「「「「「グアアアア」」」」」


 五頭の騎竜が妹のマリーを守るように囲んでいる。

 俺が不思議な行動だなと騎竜を見ていると、ジロンド子爵が教えてくれた。


「騎竜は幼い子供を守るのですよ」


「へえ。子供が弱い存在だと、騎竜は分かるのでしょうか?」


「そうみたいですよ。野生の騎竜は群れで生活していて、幼い騎竜を群れ全体で守るのです。その名残か人の子供も守ろうとするのですよ」


 なかなか面白い生き物だ。

 そういえば、子守をする犬の動画を、前世日本で見たことがある。

 同じような行動なのだろう。


 妹のマリーから執事のセバスチャンに目を移す。


 エルフのシューさんが作った毒探知機で、夕食に使う食材の検査をしている。

 毒探知機はアイロンに似た形をしていて、食材をなぞるようにすると毒を検知してくれるそうだ。


 執事のセバスチャンは、シューさんに使い方を教わりながら、真剣な顔で毒の検査をしている。

 任せて大丈夫そうだ。


 俺はジロンド子爵に手伝ってもらいながら、馬車を変形させ寝泊まり出来るようにした。


「この馬車は凄いですね! 乗り心地も良いし、寝泊まりも出来るのか……。一台欲しいな……」


「売りますよ。普通の馬車より値は張りますが」


「もちろん、ちゃんと代金は払うよ!」


「では、領地に着いたらジロンド子爵用の馬車を製作します」


 おっ!

 馬車が売れたぞ!

 馬車は木材、鉄、布があれば、生産スキルで生成出来る。

 初期型よりも作りは複雑になったが、パーツごとに生産スキルで生成して、組み立てるようにすれば問題ない。


「馬型ゴーレムはどうしますか?」


「そっちはやめておこう。馬車を牽く騎竜がいるからね。しかし、ゴーレムを使役するのは珍しいな。エトワール伯爵は、召喚士? それともテイマー?」


 ジロンド子爵は、俺が馬型のストーンゴーレムを使役するのを珍しがった。

 南部ではゴーレムを使う冒険者が、二人ほどいるそうだ。


 一人は召喚士で、スキルで魔物を召喚して使役する。

 もう、一人はテイマーで、スキルで魔物をテイムして使役する。

 結果としては、同じだけれど、スキルは似て異なるのかもしれない。


 俺は曖昧に返事をして自分のスキルを伏せた。


「その二人の冒険者ですが、ゴーレムをどんな風に使うのでしょう?」


「盾役として使うみたいだよ」


「ああ、ゴーレムは頑丈ですからね」


「戦闘では、かなり役立つらしいよ。しかし、エトワール伯爵のように、ゴーレムを労働力にするのは聞いたことがないな。研究させるか……」


 ジロンド子爵は、真剣に考えている。

 ゴーレムを上手く使えば、重機の代わりになるかもしれない。

 だが、懸念事項もある。

 魔力だ。


 馬型のストーンゴーレムは、魔力を動力源として動いている。

 週に一回程度だが、魔力を補充する必要があるのだ。

 俺はジロンド子爵にゴーレムの魔力補充について伝えた。


「ゴーレムを使役するには、魔力を充填する必要があります。私は魔力が多いので問題ありませんが、魔力が少ない人ですと使役は厳しいでしょう」


「そうか! 魔力が必要なのか! それは難しいかもしれないな、残念!」


 売れそうな物が分かってきたぞ……。

 地元貴族であるジロンド子爵と行動をともにすると、色々勉強になるな!


 キャンピングカー仕様の馬車は、売れそう。

 単価も高いし、材料もある。

 馬車は『◎』だ。


 馬型ゴーレムは、魔力の問題があるので『×』。


 ドライフルーツは、中央部や北部に持ち込めば売れそうだが、俺の領地で取れる果物があるかどうかわからないから要検討で『△』だ。


 俺が生産スキルを使って生成する商品と、領民が生産する商品の両方を揃えないと領地は豊かにならない。


 当座は俺のスキルで売れる物をガンガン生成してお金を稼げば良いが、長い目で見ると領民が商品を作って領地の経済が回る方が望ましい。

 俺の関与がなくても、極端な話、俺が死んでも領地は安泰という状態にするのが理想だ。


 そうしておけば、俺に万一のことがあっても、妹のマリーが路頭に迷うことはない。


 これからも情報収集をして商品開発を考えよう。


 俺とジロンド子爵が色々と世間話をしていると、見張りをしていたみーちゃんが叫んだ。


「ニャ! 魔物ニャ! 子供が追われているニャ!」

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