第一班のお出かけ
初めての短編となります。
今回はお試しで、本編の番外編を短編で投稿していこうかなと思います。ちょっと違うなと思ったらまたなにか変えるかもですが、御一読よろしくお願いします!
1年5組第一班、今日は6人揃ってお出かけをすることになった。
言い出しっぺは班長の新井、副班長の五十鈴も珍しく同意し、お出かけは決行された。
楽しい楽しいお出かけ、買い物であったり遊んだりと誰もが思っていたのだが。
某日 11:00 某ジム
「何故よりによってこのチョイスなのですか…」
「ジムとかなんも投げれないからなんも楽しくない…帰りたい…」
五十鈴と天上院が嘆くのも無理は無い、何故ならばお出かけする場所がジムだったからである。
「俺はいいぜ!鍛えて鍛えて鍛えまくって、もっと強え妖魔をぶち殺してやれるからな!」
「翠が楽しそうならいいんだけど、私は…隣で見てるね…」
「僕もいいと思うね、筋トレとか普段やらないことだし。」
早川と鳴宮も賛成派だが、真木は体が弱いため筋トレは無理のようだ。
そしてもう1人、今全力で60kgのベンチプレスをやっているゴリ…男がいた。
「7…8…9…10…!よし、60kgクリア!次は65kg…いや、70kgだ!」
1年5組第一班の班長、新井夏であった。
「夏、ジムならいつも来ているじゃないですか。何故今更みんなで来る必要があったのですか。」
「そりゃみんなで楽しいことしたかったからに決まってるじゃねぇか、筋トレは楽しいぞ!」
「楽しんでるのは夏と早川さんだけじゃないですか、ちゃんと見てください、あなたたち以外のみんなの表情を、あれが楽しんでるように見えますか?」
五十鈴の言う通り、新井と早川以外の面々はとても楽しんでるように見えなかった。
「仕方ねぇな、どれ、俺が楽しくしてやるよ!」
そう言って、新井足元にあった4つのダンベルを持って、天上院に向かって動き出した。
「いいか蒼大、このダンベルを両手に持つんだ。そしたら俺の動きに合わせて腕を動かしてみろ。」
「ええ…嫌だ…こんなもん渡されたら投げたくなる…今は主に夏に投げたい…」
「いいから!まずは腕を横に伸ばして、上下に10回!」
「夏君、パワハラ上司みたいだね…」
「鳴宮さん、もしああいうことをされましたら私に報告してください、燃やします。」
「今まさに目の前で起きてるんだけど…」
その後、新井による筋トレ口座が3時間にも及び、最後は耐え切れなくなった五十鈴に新井が燃やされることによって筋トレは終了した。
14:30 某レストラン
「かぁぁぁ!やっぱ筋トレ後の飯はうめぇな!」
「負けねぇぜ大将!俺もがっぽがっぽ食ってやるぜ!」
筋トレ終了後、6人でご飯を食べることになったが、状況は先程と変わることはなかった。
「お食事中は静かにできないのですかあの2人は…」
「翠はいつもあんな感じだから。」
「ダメだよ真木さん、夏と早川は甘やかしちゃいけないタイプだから、こういう時はナイフを投げてだね。」
「それのがダメだよ蒼大…」
レストランでも新井と早川の熱が冷めることはなく、ただただ暑苦しい時間が過ぎていた。
そこに、携帯の着信音が鳴る。
「もしもし五十鈴です、はい…上大岡ですね、分かりました、直ぐに向かいます。皆さん任務です、上大岡公園にて妖魔が発生したとのことです、準備をお願いします。」
「なんで琴里に電話が行くんだよ、班長俺なんだけど…」
「総班長には敵わねぇからじゃねぇの大将、班長なのに任務の電話来ないとか面白すぎるだろ!」
悲しむ新井を横目に、早川は大笑いしていた。
「早川さん、笑うのはそこまでにして準備してください。それと食べ残しはよくありませんのでちゃんと最後まで食べてください。」
「えぇ俺野菜食いたくねぇ!」
「食べてください。」
「はいわかりました…」
次口答えしたら容赦しないという目で、五十鈴は早川を黙らせた。
「食べましたね?」
「はい、ご馳走様でした。」
「よろしい、では夏、号令を。」
「そこだけ俺がやるのかよ…よしみんな!筋肉は温まってるな?腹いっぱい飯食ったな?そこに任務と来れば今の俺たちに敵う者なし!行くぞ!」
「おーーーー!!!」
新井の号令に、早川は盛り上がっていた。早川だけが。
「何あの子、急に訳わかんないこと言い出して。」
「筋肉が温まってる?馬鹿じゃねぇのあいつ。」
周りのお客さんからの言葉は少し冷めていたようだ。
15:30 上大岡公園
「避難はもう済ませてあるそうですが、念の為被害が出る前に片付けましょう。」
「相手は鴉天狗4体か、腹いっぱい食った今に丁度いい相手じゃねぇか!行くぞ野郎ども!!」
「先手必勝!薄緑!」
早川が金属バットを強く握りしめ、右足で地面を蹴ると、一気に鴉天狗に近付いた。
「1体頂きぃ!」
そのまま鴉天狗の脳天を目掛けて叩くと、鴉天狗は塵となった。
「よっしゃあ!!あっ…やべ…さっき野菜無理やり食ったから吐き気が…!」
「かぁぁぁぁぁぁっ!!」
「翠危ない!」
「炎呪符・爆。」
口を押さえていた早川に鴉天狗が襲いかかったが、五十鈴の陰陽のおかげで距離が取れた。
「無理に食べさせて申し訳ございませんでしたね早川さん、お詫びは今ここでさせて貰います。炎呪符・乱。」
今度は小さい火球を乱れ撃つように放った。大きなダメージを与えることはできないが、足止めとしては十分だった。
「天上院さん、鳴宮さん、お願いします。」
「やっと俺が投げれる時が来たな!対妖魔格闘術・羅漢門!」
天上院は全力で突進し、2体の鴉天狗を空中に投げ飛ばした。
「後は頼む!孔貴!」
「任された、対妖魔剣術・八相発破。」
投げ飛ばされた鴉天狗を待ち構えていたのは鳴宮だった。その場を動くことなく、剣による突きを放ち、鴉天狗を消した。
「仕上げは貰うぜ!晩夏ノ段・炎天!」
新井の方天戟は真夏の太陽が如く燃え盛り、鴉天狗を襲う。
「筋肉最強!くたばれぇ!!」
振り下ろされた方天戟に抗うことすらできずに、鴉天狗は燃え散った。
「ざっとこんなもんよ!」
「任務完了ですね、皆さんお疲れ様でした。報告の方は私からしておきますね。それよりも夏、筋トレにご飯の後に晩夏ノ段なんて大丈夫だったのですか?」
「何言ってんだ琴里、見ての通り俺と俺の筋肉は元気もりもりだぞ!」
「そうですか、それでしたら心配は必要なかったですね。」
そうは言うが、何か嫌なことを予感した五十鈴であった。
「では帰りましょう、いいお出かけでした。」
そのまま6人は帰路につき、帰宅したのだった。
19:00 新井宅
「おいバカ兄貴、さっきから飯だつってんだろうが!いい加減出てこねぇとしばき倒すぞ!」
「ごめん冬奈…今動けないから俺の分は取っといてくれ…」
「ちっ。」
過剰な筋トレに過剰の昼食、そして任務においての力の出しすぎにより、新井と新井の筋肉は疲労しきっており、動くことすらできなくなった。
「ちくしょう…やっぱり筋トレが足りなかったか…」