酔歌 ヨイウタ
泉 幸多視点
もうすぐ本殿がある山頂だ!ここの坂道を超えれば・・・!
「ハァ・・・ハァ・・・た、貴子さん早く!後もうちょっとぉ!」
「ハァ・・・・ハァ・・・・ちょっ、ちょっこし待ってよ泉君・・・・ハァ・・・ハァ・・・し、死のぉ・・・ハァ・・・待ってぇ・・・」
1000段以上もの石段を上がって疲労困憊になりながらも、僕達は森に囲まれた山道を抜けてようやく明るい場所に出た。山の上から見る景色は真っ暗で最悪だけど、空を見ると流星がゆっくりと流れている・・・・奇跡と呼べる光景だが、今は慧子さんの元へ急がないと・・・
「ハァ・・・ハァ・・・・着いたぁ!着いたぁ!ハァ・・・着いたぁ・・・」
足腰が重くなる中、貴子さんより先に坂道を登って・・・ようやく山頂に着いた!け、慧子さんは・・・慧子さんはどこに・・・あれ?明るくない?真っ暗だ・・・ってか慧子さんどこ!?
「ハァ・・・け、慧子さん!?ハァ・・・慧子さん!慧子さぁん!?」
「うるさいわね・・・・人ん家の前でピーピー騒ぐんじゃないわよ」
「え?・・・あっ!いたぁ!慧子さん!!!」
廃墟から声が聞こえたと思って振り返ったら・・・間違いない!慧子さんだ!!!よかったぁ無事で・・・でもどうして廃墟の中に?
「私の実家よ。ほら!表札に【今村】って書いてある・・・荒神のおかげで、探す手間が省けたわ」
「え!?ここが慧子さんの・・・じゃあ・・・荒神は?」
「逝ったわ。良い笑顔でね・・・その後で実家調べて、これを見つけたの」
それは家族の写真だった。小さい頃の慧子さんと、そのお母さんとお父さんが笑顔で写ってる。とても幸せそうな写真だ・・・あれ?このお父さんの顔・・・誰かに似てるような・・・
「もうこの村に用はないわ・・・出ましょ」
「えぇ!?もう!?で、でも・・・」
「荒神と何の話をしたか・・・でしょ?でもそれは明日にして。今は酒を飲みたい気分なの・・・ほら行くわよ!」
やっとの思いで登ったのに、もう降りるなんて・・・僕より貴子さんが可哀想でならない・・・坂道を下る中、休憩していた貴子さんを見つけ、必死に説得した後、僕達は山を降りて村を出た。
タクシーに連絡して来てもらったが、俊和さんではなく別の運転手さんだった。俊和さんは?と聞いてみたら「どこかへ行った」らしい・・・まぁ何はともあれ疲れた。宿でぐっすり寝たいけど、慧子さんは酒を飲みたいって言うし・・・居酒屋にでも行くのかなぁ?
町に着いた後、貴子さんは疲れてそのまま宿へ行っちゃったけど、慧子さんは町中を歩いて「スナックB」という店に入って行った。まさかのスナック・・・・でも一人じゃ心配だし・・・入るか・・・
「あぁいらっしゃい・・・旅行さんね」
入ってみると、これまた古風なスナックバー・・・お酒がいっぱい並び、奥にカラオケセットがある。カウンター席に慧子さんがいたけど・・・・あれ?顔が赤い?まさか酔ってる?
「でさぁそこ行ったらねぇ、草がボーボーに生えてるわ泥が汚いわでさぁ!酷いのよ全く・・・そっちの方に呪い受けたわ・・・ヒック・・・」
「そ、そうなの?・・・ってかあなた、まだ一杯だけよね?もう酔っちゃった?」
「はぁ?まだぁ酔ってないわよ・・・ヒック・・・これからよこれから!」
いやもう酔ってるやん・・・その後、飲んで飲んでさらにヒートアップした慧子さんは、カラオケで「隠岐の風」っていう知らない歌を何度も歌った。演歌じゃないなんて・・・珍しいな・・・
「
かすんで見えるぅ~遠い想い出ぇ~♪
風にぃぃ吹かれて届けぇ~隠岐ぃの島の風ぇ~♪
風にぃぃ吹かれて届けぇ~隠岐ぃの島の風ぇ~♪
風にぃぃ吹かれて届けぇ~・・・・・・・・隠岐ぃの島の風ぇ~~♪
はいどうも!ありがとうございましたぁぁ~!!ハッハッハッ! 」
「あ、あのぉ慧子さん?そろそろお開きにしませんか?」
「はぁ!?何でよぉ!?もっと聴きたいでしょ!?私が生まれた島よここはぁ!!分かってんのぉ~~・・・・・・・・う~~~ん・・・・zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz・・・・・」
あ~あぁ・・・ぶっ倒れて寝ちゃったよ・・・こりゃもうダメだな・・・宿に連れて帰ろう。僕はママさんに酒代やらカラオケ代やら払い、慧子さんを背負って店を出た。
「zzzzzzzzzzzzzzzz・・・もう食えなぃ・・・zzzzz」
「ハァ~・・・よいしょ!・・・さてと・・・・」
さて宿だが・・・「勝浜」って名前だったな。ここから少し距離がある・・・仕方ない!頑張って歩くか!!
・・・っとその時・・・
「・・・・・・・・送りましょうか?」
「ん?・・・・あっ!あなたは・・・!!」
目の前に現れたのは白髪の中年男性・・・・俊和さんだ!!!
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