椀湖 ワンノミズウミ
月夜 慧子視点
孤集・・・・中立者の創設メンバーの一人であり、御意見番であるぬらりひょんが自ら製作した陶器。月をイメージして作られたのか、内側の中心に黄金色に輝く丸い印が施されている。陶芸作品として見事だが・・・・実際は史上最悪の椀として有名だ。
「王はあの椀が欲しいって言うの?いくらなんでもそれは・・・」
「まぁ無理だろうな・・・椀が湖のようになっては、誰もが本物を手にする事なぞ不可能・・・しかも猶予は明日の夜だ」
「明日!?明日発つの!?どうしてもっと早く・・・!」
「無理だと思ったからだ!この40年、本物を見た者は誰もいない。誰も手にしていない!正直・・・悩みに悩んだ。お前に話すべきかを・・・すまない」
雪江さんが渋るのも無理ない・・・偽物の中から本物を探すなんて不可能に近いからだ。私も昔、挑戦した事あるけど3分でギブアップした・・・・そもそもあれを挑戦しようだなんて無謀極まりないわ。
「諦めろ慧子。今回ばかりは・・・」
「やるわ・・・・明日の夜まで見つけりゃいいんでしょ?」
やるしかない・・・・僅かな望みに賭けるしかない!私は王が来る日をずっと待ち続けて来た。何年も何年も・・・・だから絶対に本物を見つけてみせる!!こんなチャンス二度とないんだから!
「慧子、気持ちは分かるがお前一人じゃ・・・」
「私はずっとこの日を待ってたの。自分の過去を知る為に・・・・命を削ってでもやってやるわ!」
「ハァ~・・・言うと思った・・・・それならあの子は?助手はどうした?」
「この件は・・・私の問題よ。泉君は関係ない・・・じゃあまた明日ね」
椀がある場所は知ってる。もう時間がない・・・徹夜してでもやってやるわ!
松現を出て外の世界へ戻った後、私は大仁さんがいる店へ向かった。実はあまのじき路地には秘密の洞窟があって、その洞窟の入口が・・・この店の裏にある。
「おや慧子さんお帰りで・・・」
「孤集に挑戦したいの。リベンジってやつよ・・・今回は3分で終わらせないわ。だからやらせて!」
「おぉほぉ!?やるんですか!?こりゃ面白い!!この数年、挑戦者なんて一人も現れませんでしたからねぇ・・・よろしい!ではご案内致しましょう!」
奥の作業場へ向かい、押し入れを開けると重苦しい風が吹いて来た。先が見えない暗い洞窟・・・電気を点けて薄暗い階段を降りると、そこにあったのは・・・孤集の湖だった。
「・・・・・・・・・・・・前より増えてない?」
「そうですか?いつもと同じに見えますけど?」
孤集がなぜ史上最悪の椀とされているのか・・・それは、触れると増えるからだ。つまり椀に触ってしまうと、そこから偽物の椀がポンポンと出て来る。それはまるでポップコーンのようにポンポンと・・・
この洞窟は本来、孤集を保管する為に作られた場所だが、いつしかそれは宝探しとして遊ばれるようになり、その結果・・・偽物が大量に増えてしまって大きな湖となった。
私がこれからする事は、この偽物の湖からたった一つ、本物の孤集を探し出すことだ!当然、こんなの無謀だって分かってる・・・でも王に会う為にやるしかない!
「はい慧子さん、防護服です!」
偽物とはいえ普通の陶器と同じで、ヒビが入るわ割れるわ・・・そのまま湖に飛び込んだら血だらけになるのは当たり前。最悪死ぬ・・・そうならないよう防護服を着用しなければならない。
「さて、本物か何か・・・・覚えてますよね?」
「ええ、マークが付いたやつでしょ?分かってる・・・」
誰が付けたか知らないけど、本物にはペンで描かれた✕マークがある。それが最大のヒント。幸い偽物にはマークが無い・・・それだけが唯一の救いか・・・
「そんじゃ頑張ってください!期待してまっせ?ほな!!!」
「え?手伝ってくれないの?」
「ええ、私はもう偽物を見るのは嫌なんですよ。アレルギー起こしちゃいそうでね・・・ほな!」
助けてくれないか・・・泉君、連れて来たらよかったかな?いや、弱気になったらダメだダメ!これは私の問題なんだから・・・一人でやるしかない!
読んでいただきありがとうございました!
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