鬼外 オニハソト
2月上旬・・・・節分の日がやって来た。外では「鬼は外!福は内!」っと言って親子が豆まきしている光景が盛んに見られる中、慧子さんはそんな光景とは真逆に確定申告で忙しそうだった。僕もそうだけど・・・
「あぁ~しんどぉ・・・毎年毎年嫌になるわ。何で廃止にならないのか・・・」
「手伝いましょうか・・・?」
「いいわよ別に、アンタは勉強に専念しとけば・・・・あぁヤベぇ!間違えた!!もうムカつく!」
慧子さんは確定申告を、僕は勉強を・・・今はこんな感じでお互い朝から事務所に籠って忙しくしてる。こんな調子じゃ仕事どころではなさそうだな・・・
その夜、書類を書き終えた慧子さんはピザを食べながらテレビを観ている中、僕は仮眠を何度も取りながらずっと勉強に専念し続けた。依頼の電話が来ない以上、他にやる事がない・・・かといって家に帰ってもなぁ・・・
「そういえば・・・どこの大学に出んの?」
「花苑大学です。父さんに勧められましてね・・・母校だったから・・・」
「あぁラグビーの強豪校ね?ふ~ん・・・受かったら部活とかサークルはちゃんと入っときなさいよ?そうじゃなきゃ何の為に大学入ったか分かんないしね」
「ええ、受かったら考えときます・・・・・ん?」
バン!・・・・バン!・・・・・・アァ~・・・・アァ~・・・バン!・・・
その音は玄関から来ていた。赤ん坊のように唸り声を上げながら、玄関ドアを叩いている・・・その姿は明らかに人間ではなかった。
「あ・・・・・・・・あ・・・あれは!!」
体が真ん丸で手足が小さい・・・その姿を例えるなら、赤く大きいボールに小さい手足を付けたような化物だった!その口に太い牙を生やし、一つ目をギラギラ輝かせている・・・まさか・・・悪霊!?
「け、慧子さん!?外に化物が!!」
「あぁ赤坊鬼か、やっぱ来るわよねぇもうやだやだ・・・だから節分嫌いなのよ」
「あ、赤坊鬼?」
赤坊鬼・・・・慧子さんが言うには、別名で疫鬼と呼ばれ、毎年、節分の日の夜になるとどこからかやって来て、家に不幸や災いを振りまく悪鬼。自然災害や疫病による負のエネルギーが具現化した姿だそうな・・・
「早く追い払わないと不幸になっちゃうから・・・これを」
慧子さんは台所の棚から、スーパーで買った節分用の豆袋を取り出した。まさかそれで追い払えると?あんなデカい鬼を!?どう考えても無理だろ・・・
「まぁ見てて・・・・・おいクソガキッ!毎年毎年来やがってぇ、鬱陶しいのよ!ほら出てけ!鬼は外ぉ!!!」
アァ~!アァ・・・アァ・・・アァ・・・アァ・・・
ドアを開けてすぐに豆をぶん投げた!するとどうだろう・・・赤坊鬼は泣きじゃくりながら後退りしている。慧子さんは赤坊鬼が諦めるまで豆を投げ続けた。まるで確定申告のストレスをぶつけるように・・・
「出てけぇオラァこの野郎!ほら早く出てけやゴラァ!」
アァ~~!アァ・・・アァ・・・アァ・・・・・・・・アァ・・・
赤坊鬼は諦めたのか、煙となって空へと舞い上がった。あんなに豆ぶん投げられて、なんだかアイツが惨めに思えてきた・・・可哀想に・・・
「ふ~~・・・全くムカつくわ・・・あっ、恵方巻き買うの忘れてた。買いに行かない?」
「今頃ですか?まぁいいですけど・・・」
「よし!今年は南南東よ!もし間違えたら家にあの鬼が来るかもよ?気を付けてね泉君?」
「ええ、それだけは絶対に御免です・・・」
地面に豆が散乱している中、僕達は恵方巻を買いに向かった。豆掃除は明日にしよう・・・今日はもう何も考えたくないし・・・
翌日の朝、外に散乱した豆を掃除している時、一匹の三毛猫が寄って来た。首輪が着いてる・・・「松現」・・・これ確か猫又って妖怪の・・・何やら口に紙を咥えている・・・手紙?
ぺッ・・・ニャ~~ン・・・
猫は手紙を地面に置いてそそくさと逃げて行った。どうして僕に?そう思って手紙の裏を見ると・・・雪江さんの名前がある!早速開けてみると、紙には一言だけ添えられているだけだった。
慧子、件の王が京都に来ている。詳しい話を聞きたいなら松現に来い。
小泉 雪江
件の王?誰だか知らないけど、この手紙は慧子さん宛てだったようだ。すぐに見せよう!僕は掃除を止めて、ソファーでぐ~たら眠ってる慧子さんを起こした。
「慧子さん!慧子さん起きてください!慧子さん!!」
「う~~ん・・・何よ騒々しいわねもう・・・」
「雪江さんから手紙来てますよ?ほらコレ!」
「雪江さん?ハァ~何で電話じゃないのよ・・・どれどれ・・・」
慧子さんが手紙を見た瞬間、大きく目を見開き、寝ぼけてた表情が真剣な表情へと変わった。しかも息を荒くしてブルブルと震えてる・・・
「く、件の王が・・・京都に・・・嘘でしょマジで・・・!!」
件の王?どうにも嫌な予感がする・・・一体何者なんだ?
読んでいただきありがとうございました!
私も節分嫌い・・・豆が不味いから
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