忘想 ワスレナイオモイ
月夜 慧子視点
それからの夏の日常は、毎日が清々しい気分だった。夏休みは海で遊んだり、名所の日御碕灯台行ったり、夏祭り行ったり、釣った魚を焼いて食べたりと満喫した。
物静かだった真弓ちゃんも、マスク姿ながらも幸せハッピーな笑顔を見せるようになった。家の方もそうだ・・・義母さんは真弓ちゃんを自分の娘のように愛してくれて、義父さんは寡黙ながらも将棋や香を教えてくれたり、姉さんは・・・・まぁ普通かな?宿題を手伝ってくれたぐらいか・・・
夏休みだけでなく、冬休みも月夜家で過ごした。冬は雪だるま作ったり、かまくら作ったり、鍋パーティしたりして食べまくった。まぁ具材がそんなに無い素麺鍋だけどね・・・・・新年を迎えても、私達は変わる事なく毎日が幸せだった。これがずっと続いてくれたらいいなぁと・・・
だけど・・・・・・・・・そんな事にはならなかった。
『え!?岐阜へ引っ越すの!?』
『うぅん・・・・・・ごめぇん慧子ちゃん・・・・』
それは悲劇の始まりのような突然の出来事だった。真弓ちゃんが・・・・岐阜へと引っ越す事になった。理由は父親が過労で倒れたのが原因。他に頼れる人がいない為、岐阜にある母方の祖父の家で一緒に暮らすそうだ。
つまり真弓ちゃんがこの出雲にいられるのは・・・後1ヶ月・・・もう時間はあまり残されていなかった。
『ねぇ慧子ちゃぁん・・・行く前にさぁ・・・慧子ちゃん家に泊っていい?これで・・・最後だかぁら・・・』
『え?・・・・・・・う、うん・・・うん!もちろん!最後にね・・・』
『ありがぁと・・・慧子ちゃんありがと・・・ありがと・・・』
別れが惜しい・・・ようやく出来た友達が遠くの地へ引っ越すのが・・・別れるのがあまりに惜しすぎる。嫌だ嫌だと心で叫んでも、運命は変えられない・・・いつも仕事で家にいない父親だけど、娘を一人ぼっちにさせる最低な父親だけど・・・真弓ちゃんにとっては大切な父親だから。大事な家族だから・・・
真弓ちゃんが学校にも家にも来なくなってから時が過ぎていき・・・ついに最後のお泊り会がやって来た。これが最後のお泊り・・・・最後の食事・・・・・最後のお風呂・・・・そして最後の就寝・・・・だけど、これで最後だと思うと全然眠れなかった。
それは真弓ちゃんも同じ・・・お互い眠れない中、何か話そうと思った。なんでもいい・・・とにかく話そうと・・・それでこの嫌な空気を紛らわせようと・・・・でも話すネタがない・・・たった一つを除いては・・・
『・・・・・・・ねぇ真弓ちゃん・・・私の秘密教えてあげよっか?』
『秘密?』
『私ね・・・ホントはここの子じゃない。血は繋がってないの・・・』
『え!?』
家族以外にこの話をするのは、真弓ちゃんが初めてだ・・・私は誰かに連れられてこの家に来た。その人が誰なのかは分からない・・・そもそも本当の両親は?私はどこから来たの?それすらも全く記憶がない。
義父さんと義母さんにその事を問い詰めても何も喋ってくれない・・・それは最期になっても教えてくれなかった。唯一の手がかりは、この勾玉の首飾りだけ・・・
『この家に来る前からずっと、肌身離さず持ってた・・・それだけは分かる。だけどこれが何なのか分からない。誰の物なのかどこの物なのか・・・』
『慧子ちゃん・・・・』
『もし本当のパパとママに会えたらさぁ・・・・・その時は一発ぶん殴ってやる。いや・・・一発じゃ足りないかもね?フフッ・・・』
『・・・・・・・きぃっと会えるよ・・・きっと・・・』
『ありがと・・・さぁもう寝よ!明日早いんでしょ?おやすみ!』
『・・・・・・うぅん!おやすぅみ!』
私達は布団にうずくまり、無理してでも目をつぶって眠りについた。明日・・・・真弓ちゃんが出雲を去る。心では、離れたくない思いでいっぱいだった。このまま時が止まってしまえばいいのにと・・・・だけど現実は甘くない。時はずっと進み続け、気付けば朝を迎えていた。
月夜家最後の朝食を終えた後、家族全員が別れの一言を告げた。
『じゃあね真弓ちゃん!またいつでも遊びに来てね!素麺大盛りにして待ってるから!』
『いつでぇも待っちょぉよ!!ぐすん・・・』
『向こうでも・・・・・・・気を付けてな・・・』
『うぅ・・・・はぁい!お世話になりましぁた!!ホントに・・・愛してくれて・・・ありがとうございまぁした!!!』
マスクを外し、泣きながら深く頭を下げた。これを見て私は一緒に住もうって叫びたかった。このまま離ればなれになんてなりたくない・・・・だけどそれは出来ない。それは真弓ちゃんの為にならないから・・・
一緒に駅へ向かうと・・・駅前には真弓ちゃんのお父さんがいた。体が痩せ細り、杖を突いて歩く姿を見て、真弓ちゃんがいなければダメだと感じた。もし娘がいなかったら・・・支えてあげなければ・・・命は長くないだろうと・・・
『・・・・・・・・・・じゃあね慧子ちゃん。これで最後だね・・・』
『ええ・・・・・元気でね・・・・・・』
『私・・・慧子ちゃんのぉこと絶対忘れなぁい・・・絶対に忘れないぃよ!ホントにありがとぉう!ありがとう!!!!』
『うん!またいつか会お!その時は皆でパーッとしよ!パーッと!!』
『うぅん!!』
お互い別れを告げ、真弓ちゃんはお父さんと一緒に電車に乗った。忘れはしない!絶対忘れはしない!!短いながらも、退屈のない最高の人生をくれた親友を・・・私は忘れない!
読んでいただきありがとうございました!
寝るのは5時間で充分だとここ最近感じる・・・
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