恐怖 キョウフ
鴨川沿いをまっすぐ、ニョロニョロと移動していた蛇が、向きを変えて川へ落ちて行った。落ちた蛇は川を泳いで中央に生い茂っている雑草地に移動している・・・
「やっとね・・・じゃあ泉君、行って来て」
「はい!?」
「川は浅いから大丈夫よ、ほら行って来て」
「えぇ・・・・で、でも何があるか・・・」
「私の助手でしょあなた?言われた通りにしなさい!」
「・・・・・・・ハァ~・・・・・はい」
絶対何か嫌な予感がする行きたくないけど・・・仕方ない、僕は靴下と靴を脱ぎ、ズボンをめくって川に入った。
冷たい浅瀬を歩いて蛇が向かった雑草地へ着き、とりあえず周りの雑草を掻き分けながら蛇を探すが・・・・蛇がいない?そこまで大きくない雑草地、見つけるのはそう難しくはないはず・・・目を凝らして探すが、蛇は影も形もなかった。
「う~~ん・・・どこだぁ・・・・・・・・ん?」
・・・っとその時、何かヘドロにまみれた物体を発見した。触れたくはないがそれを取ってみると、何か顔に見え・・・・
「え・・・これって・・・・う、うわああああああああっ!!!」
その物体が何なのか判明した時、思わずそれを投げてしまった。すると、その物体からドス黒く、ボロボロの服を着た女性が姿を現し、僕の方へ向かって来た。
『ウゥ・・・・・怨ンデヤル・・・怨ンデヤル・・・』
女性はブツブツとそう言って、こっちに向かって来る・・・口から蛇を舌のように出し、まるで蛇に寄生されたゾンビのようだ。逃げようにも足に力が入らず、腰を抜けてしまって動く事が出来ない。女性から目を逸らそうにも逸らせない・・・
その時、あの事件の事が脳裏によぎった。あたり一面血まみれになって・・・友達の体がバラバラに散らばって・・・・
あの時のトラウマがフラッシュバックのように蘇る・・・・嫌だ・・・誰か助けて・・・助けて!
「こっちよ・・・!」
『!?』
パンッ!
『ウゲッ!アァ・・・・・・ァ・・・・・』
それは突然起こった・・・キラキラと輝く弾丸のような物が女性の頭を貫き、悲鳴を上げて塵のように消えていった。しかし口から出ていた蛇が飛び出し、ニョロニョロと川を泳ぎ、慧子さんの方へ向かって行く・・・
「甘いわね・・・・・・フンッ!」
ポケットから札を取り、浮上して飛び掛かって来た蛇をナイフのように切断し、蛇はピクピクと痙攣した後、静かに消えた。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・な、何だ?」
僕には今起こった事が理解出来なかった。あまりに一瞬の出来事過ぎて・・・ただ言えるのは、僕が見つけた物体は・・・腐りかけの生首だったという事だけだ。
その後、警察が来て周辺の捜査が始まり、慧子さんが事情聴取を受けている中、僕は現場から少し離れた場所で蹲る事しか出来なかった。あれが起きてからか、手の震えが止まらない・・・・・化物を見た恐怖だからか、それともあの事件のことを思い出したからか、もう頭の中がグシャグシャだ・・・
「いやぁおまたせおまたせ・・・待たせて悪いわね」
「い、いえ・・・・」
「大丈夫?手ぇ震えてるけど?」
「・・・・・・・」
もう何もかも疲れた・・・早く家に帰りたいと思う反面、何でこの仕事を選んだんだろうと思ってしまう。なぜこんな仕事を・・・?
「・・・まぁともかく、これが幽霊屋の仕事よ。あんな悪霊や化物を倒す仕事なの。お遊びじゃないって事が理解していただけたかしら?・・・・聞いてる?」
「あぁは、はい・・・」
「ハァ~・・・ねぇ泉君?あなたの過去に何があったにせよ、幽霊にうんざりするにせよ、幽霊屋で度胸をつけたいんなら覚悟する事ね?仕事をする度にこれは夢ではなく、本当の現実だって突きつけられる・・・それでも戦うのが幽霊屋としての義務ってやつなの」
「覚悟・・・・ですか・・・・」
「明日の朝までよく考えて・・・何の為に戦うか、何に向き合うかをね・・・やりたくないなら来なくていいわ・・・・・んじゃお疲れ!」
「何に・・・・向き合うか・・・・・」
「あっ!これだけ言っとくわ!やる価値はあるわよ!きっと良い経験になる!そんだけ!!じゃあね!」
そう言って慧子さんは車がある方へ戻って行ったけど、僕は夕方までずっと川を見つめながら考え続けた。ホントは何の為に幽霊屋に入ったのか・・・ただの好奇心とかじゃない・・・本当の答えが・・・
読んでいただきありがとうございました。
頭の中にストーリーがどんどん入ってくるので、これからもどんどん吐いて書いていきます
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