獣檻 ケモノノオリ
その怪物は全身が黒く、ライオンやトラのような大型のネコ科動物の体を持ち、そして絵に描かれていた目をしていた。絵そのものが抜けて出て来たからか、キャンバスが真っ白くなっている。
尻尾をひらひらと動かし、鼻をクンクンと嗅ぎながら歩き続けている。僕は台所に隠れて慧子さんに連絡したが、その着信音はソファーの方から聞こえた・・・・・スマホ持たず散歩に行ったのか・・・気付かなかった僕もアレだけど・・・
「(あぁもう最悪だ!どうするどうするどうする・・・ハッ!)」
パニックになる中、僕は辺りを歩き回る怪物を静かに観察した。とはいえどうすればいいのか・・・まだ慧子さん帰って来ないし・・・
しばらく観察していると、怪物は棚に置いてある物を見つけた瞬間、前足で落とし始めた。ガシャンパリンッと割れる音が響き、次々と落としまくってる・・・これじゃあイタズラ猫だ。その後はソファーを見つけて、ガリガリと爪とぎを始めた。
ソファーが傷だらけになる・・・もうどうすりゃいいんだ?僕は何も出来ず、ただ隠れて怪物を観察する事しか出来ない・・・・そう考えていると、怪物は爪とぎをやめて台所の方へ向かい始めた!マ、マズイ・・・!
奴が来る・・・しかし狙いは僕ではない・・・冷蔵庫だった。一瞬僕の方を見たけど、全く興味を示さなかった。ん?待てよ?もしコイツが猫科の動物なら・・・・アレを狙ってるんじゃ・・・
グゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・
案の定・・・怪物は牛乳を飲もうと台所へ来たんだ!冷蔵庫を開けようと噛んだり前足で叩いたりしている・・・あぁもう滅茶苦茶だよ。どうすりゃいいんだ・・・っと、頭を悩ませた時だった。
ボ~~~~~ン・・・・ボ~~~~~ン・・・・
グゥゥ!?
冷蔵庫の隣にある棚に、あの蝉が音を立てて止まっている。怪物はその蝉に興味を示したのか、棚へ向かって前足で蝉をヒョイヒョイと触ろうとしている。猫が虫を狩ろうとしているように・・・っとその時!
「ハァ・・・ハァ・・・泉君!!!」
この声・・・・・慧子さんが帰って来た!!!怪物はその声に気付き、口を大きく開けて威嚇している・・・
グゥゥゥゥゥゥゥゥガルルルッ・・・!!!
「フッ・・・・案外小さいわね?でも檻に入れるにはちょうどいいわ!」
すると、怪物は逃げるように絵の中に入って行き、何も描かれていなかった真っ白なキャンバスに、再び目の絵に戻っていった。
「逃げたか・・・・しかしまぁ・・・最悪ね・・・酷い有り様だわ」
た、助かった・・・だけどこれからどうする?あんな猛獣を慧子さんはどうやって倒すのだろうか・・・?
怪物によって割られた品物を片付けている中、慧子さんはソファーに座ってタバコを吸いながら絵を見つめ続けていた。
「ふ~~・・・・ごめんね泉君」
「いえ・・・でもホントにどうしたんですか?急に変になって・・・」
「分かんない・・・分かんないけど、ただ・・・この絵を見た瞬間、何か嫌な感じがしてさ・・・逃げたくなった」
「慧子さん・・・」
「でも師匠の事を思い出したら・・・何ビビってんだって気付いた・・・・だから戻って来たの。もう逃げないわ・・・フンッ!」
すると、急に立ち上がって絵を放り投げ、机やらイスやら・・・・・挙句の果てにソファーまで退かし始めた!
「あっ!あぁ~あぁ~あっ!!絵が!け、慧子さん何を!?」
「ハァ・・・檻作んのよ!相手は絵獣だからね!あぁこれも邪魔邪魔!!」
「か、かいじゅう?あぁそれゴミ箱!片付けたやつが・・・」
慧子さんが言うには・・・・あれは絵獣と言われる怪物で、人間の嘆きや悲しみ、怒りなどのマイナス感情によって描かれた絵が生命を持った存在らしい。
しかしそれにはもう一つ、絵を描いた本人の血がなければ誕生しないそうだけど、ん?待てよ?そういえば洋一君が行方不明なった時、絵の他に彼の血が残っていたって言ってたな・・・まさかそれで?じゃあ洋一君はどこに?
「彼は自身が生み出した怪物の中に閉じ籠った・・・つまり喰われたのよ」
「喰われた!?あの怪物に?じゃあもう彼は・・・」
「大丈夫、胃の中に引き籠ってるだけでまだ生きてるわ・・・やる事は一つ!洋一君と本体の核をゲロッて吐かせる事よ!」
洋一君の他にも、絵獣の本体と言える核があるらしい。自身の絵と同じ形だそうだけど・・・・・・とにかく絵獣を倒すには、その核を破壊しなければならないって事か・・・大変そうだなぁ・・・
「・・・・・・・これをこうしてっと・・・・・よし出来たわ!!!」
クローゼットから持って来たロープやらチョークやら使って・・・大きく広い檻を完成させた。普通だったら簡単に抜け出せる檻にしか見えないけど、慧子さんは術を使ってハメるつもりのようだ。最後にキャンバスの裏にお札をペタペタと貼った後、檻の中央に置いた。
「フ~~~~・・・これで準備完了!さてと・・・出るまで待つとするわ。今日はお疲れさん!また明日ね!そんじゃおやすみ!zzzzzzzzzzz・・・」
「・・・・ね、寝るの早いな・・・」
檻を作って疲れたのか、慧子さんはすぐにソファーで眠った。とりあえず今日は帰ろう。でも何でだろう・・・すっごく嫌な予感がするのは・・・
読んでいただきありがとうございました!
気付けば30話突破・・・まだまだまだ
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