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幽霊屋   作者: ダストン
第八章  絵に潜む獣
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獣檻  ケモノノオリ

その怪物は全身が黒く、ライオンやトラのような大型のネコ科動物の体を持ち、そして絵に描かれていた目をしていた。絵そのものが抜けて出て来たからか、キャンバスが真っ白くなっている。


尻尾をひらひらと動かし、鼻をクンクンと嗅ぎながら歩き続けている。僕は台所(キッチン)に隠れて慧子さんに連絡したが、その着信音はソファーの方から聞こえた・・・・・スマホ持たず散歩に行ったのか・・・気付かなかった僕もアレだけど・・・


「(あぁもう最悪だ!どうするどうするどうする・・・ハッ!)」


パニックになる中、僕は辺りを歩き回る怪物を静かに観察した。とはいえどうすればいいのか・・・まだ慧子さん帰って来ないし・・・



しばらく観察していると、怪物は棚に置いてある物を見つけた瞬間、前足で落とし始めた。ガシャンパリンッと割れる音が響き、次々と落としまくってる・・・これじゃあイタズラ猫だ。その後はソファーを見つけて、ガリガリと爪とぎを始めた。


ソファーが傷だらけになる・・・もうどうすりゃいいんだ?僕は何も出来ず、ただ隠れて怪物を観察する事しか出来ない・・・・そう考えていると、怪物は爪とぎをやめて台所の方へ向かい始めた!マ、マズイ・・・!


奴が来る・・・しかし狙いは僕ではない・・・冷蔵庫だった。一瞬僕の方を見たけど、全く興味を(しめ)さなかった。ん?待てよ?もしコイツが猫科の動物なら・・・・()()を狙ってるんじゃ・・・




グゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・




案の定・・・怪物は牛乳(ミルク)を飲もうと台所(ここ)へ来たんだ!冷蔵庫を開けようと噛んだり前足で叩いたりしている・・・あぁもう滅茶苦茶だよ。どうすりゃいいんだ・・・っと、頭を悩ませた時だった。



ボ~~~~~ン・・・・ボ~~~~~ン・・・・




グゥゥ!?




冷蔵庫の隣にある棚に、あの(セミ)が音を立てて止まっている。怪物はその蝉に興味を示したのか、棚へ向かって前足で蝉をヒョイヒョイと触ろうとしている。猫が虫を狩ろうとしているように・・・っとその時!




「ハァ・・・ハァ・・・泉君!!!」




この声・・・・・慧子さんが帰って来た!!!怪物はその声に気付き、口を大きく開けて威嚇している・・・



グゥゥゥゥゥゥゥゥガルルルッ・・・!!!



「フッ・・・・案外小さいわね?でもおりに入れるにはちょうどいいわ!」


すると、怪物は逃げるように絵の中に入って行き、何も描かれていなかった真っ白なキャンバスに、再び目の絵に戻っていった。


「逃げたか・・・・しかしまぁ・・・最悪ね・・・酷い有り様だわ」


た、助かった・・・だけどこれからどうする?あんな猛獣を慧子さんはどうやって倒すのだろうか・・・?





怪物によって割られた品物を片付けている中、慧子さんはソファーに座ってタバコを吸いながら絵を見つめ続けていた。


「ふ~~・・・・ごめんね泉君」


「いえ・・・でもホントにどうしたんですか?急に変になって・・・」


「分かんない・・・分かんないけど、ただ・・・この絵を見た瞬間、(なん)か嫌な感じがしてさ・・・逃げたくなった」


「慧子さん・・・」


「でも師匠の事を思い出したら・・・何ビビってんだって気付いた・・・・だから戻って来たの。もう逃げないわ・・・フンッ!」



すると、急に立ち上がって絵を放り投げ、机やらイスやら・・・・・挙句の果てにソファーまで退()かし始めた!


「あっ!あぁ~あぁ~あっ!!絵が!け、慧子さん何を!?」


「ハァ・・・(おり)作んのよ!相手は絵獣(かいじゅう)だからね!あぁこれも邪魔邪魔!!」


「か、かいじゅう?あぁそれゴミ箱!片付けたやつが・・・」



慧子さんが言うには・・・・あれは絵獣(かいじゅう)と言われる怪物で、人間の(なげ)きや悲しみ、怒りなどのマイナス感情によって描かれた絵が生命(いのち)を持った存在らしい。


しかしそれにはもう一つ、絵を描いた本人の血がなければ誕生しないそうだけど、ん?待てよ?そういえば洋一君が行方不明なった時、絵の他に彼の血が残っていたって言ってたな・・・まさかそれで?じゃあ洋一君はどこに?


「彼は自身が生み出した怪物の中に閉じ(こも)った・・・つまり喰われたのよ」


「喰われた!?あの怪物に?じゃあもう彼は・・・」


「大丈夫、胃の中に引き籠ってるだけでまだ生きてるわ・・・やる事は一つ!洋一君と本体の(かく)をゲロッて吐かせる事よ!」



洋一君の他にも、絵獣の本体と言える(コア)があるらしい。自身の絵と同じ形だそうだけど・・・・・・とにかく絵獣を倒すには、その核を破壊しなければならないって事か・・・大変そうだなぁ・・・



「・・・・・・・これをこうしてっと・・・・・よし出来たわ!!!」



クローゼットから持って来たロープやらチョークやら使って・・・大きく広い(おり)を完成させた。普通だったら簡単に抜け出せる檻にしか見えないけど、慧子さんは術を使ってハメるつもりのようだ。最後にキャンバスの裏にお(ふだ)をペタペタと貼った後、檻の中央に置いた。


「フ~~~~・・・これで準備完了!さてと・・・出るまで待つとするわ。今日はお疲れさん!また明日ね!そんじゃおやすみ!zzzzzzzzzzz・・・」


「・・・・ね、寝るの早いな・・・」


檻を作って疲れたのか、慧子さんはすぐにソファーで眠った。とりあえず今日は帰ろう。でも(なん)でだろう・・・すっごく嫌な予感がするのは・・・

読んでいただきありがとうございました!


気付けば30話突破・・・まだまだまだ


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