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幽霊屋   作者: ダストン
第六章  面屋の仕事
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野箆  ノッペラボウ

青木さんは、お面になった美海ちゃんの顔の火傷部分を細かくスラスラと塗り続けている。まるで絵師のように巧みに塗り、芸術作品を作るかのように・・・そんな作業の中、僕はただ見てるだけだった。見るだけでも凄いけど・・・すると、青木さんが僕に質問をした。


「・・・泉さん、のっぺら(ぼう)と言う妖怪をご存じですか?」


「は、はい・・・確か顔が無い妖怪ですよね?」


「はい、実は面屋の起源は・・・そののっぺら坊から来てるんですよ」


「面屋の起源・・・!?」


「ええ、これは・・・昔々の話なんですが・・・・」



青木さんは作業をしながら、面屋の起源を教えてくれた。


昔々・・・とある山の奥地に、一人のっぺら坊が住んでいた。のっぺら坊は村々へ行っては顔を面にして奪い、コレクションとして集める・・・そういう悪行を何度も繰り返していた。


そんなある日・・・一人の僧がやって来て、のっぺら坊の弟子になりたいと懇願した。その度胸を気に入ったのか、のっぺら坊は僧を弟子にし、面符(めんぷ)と言う術を教えた。笛を用いて人の顔を面にしたり、戻したりする事が出来る術・・・さっき美海ちゃんの顔を面にした笛の音楽だ。


しばらく月日が経ち、長い修行を()てようやく術を取得した僧は、呑気に昼寝をしていたのっぺら坊を闇討(やみうち)・・・つまり暗殺したのだ。


殺害したのっぺら坊を埋葬した後、奪った面をそれぞれの人に戻した。その後、僧は面符の研究に研究を重ねた結果、顔を奪う術として使うのではなく、傷や(あざ)を治す為に使えるのではないかと考えた。



決意した僧は山に寺を作り、顔に傷や痣を持つ者を面符と絵具の技術を用いて治し続けた。僧が亡き後も、多くの弟子達が世界各地を回っては顔を治し、(のち)に人々はその者達の事を「面屋」と呼ぶようになったそうな・・・


「とはいえ現代社会で認められる技術ではありませんからねぇ。だから我々は表の世界から姿を消したのです・・・・我々の存在は一部の人しか知りません。奥さんは、我々を知ってる者から相談を受けたのですよ。だから依頼した・・・・よし!完成だ!では最後の仕上げに入りましょうか!」


そう言って青木さんは、面をのっぺらになった方の美海さんの顔に置き、笛を吹き始めた。すると、面が徐々に顔に食い込んでいき、継ぎ目が徐々になくなって同化し始め・・・元の「顔」に戻った。



しばらくしてから二人の目が覚め、もう終わったと伝えて鏡を見せると・・・二人は嬉しくなって涙を流し喜んでいた。


「はい・・・これで治療は完了です!お疲れ様でした!」


「あぁ凄い・・・ママ!私の顔治ってる!」


「あぁホントに・・・ありがとうございます!ありがとうございます!!」


何度も顔を触る美海ちゃん、塗った皮膚に涙が垂れ落ちても剝がれていない・・・青木さんが言った通り、(なま)の皮膚と完全に同化していた。






僕達は玄関を出て親子と別れた後、青木さんは(ふところ)からライターを取り出して、笠に乗ってるローソクに火を点けて被った。外を出る時はその姿なんだな・・・


「今日はお疲れさまでした。良い社会見学になりましたかな?」


「はい、いろいろ学ばせていただきました。とても・・・言葉に出来ないと言うか・・・(なん)と言うか・・・」


「実際言葉に出来ませんからね!ハハハハ・・・・泉さん、これだけは約束を願いたい。この仕事の内容については誰には言わないでください・・・・たとえあなたの上司(ボス)である慧子さんにも・・・誰であってもね。分かりましたか?」


「は、はい・・・約束します!」



「よろしい!では私はこれで・・・またどこかで会いましょう。幽霊屋さん」



そう言って青木さんは鈴を鳴らしながら、ローソクの灯と共に、闇へと消えて行った。あれが面屋か・・・説明しようにも難しい。いや、誰にも言わないと青木さんに約束したんだ。何があっても仕事内容だけは黙っていよう・・・







翌日・・・僕は学校を終えて事務所に向かった。


「それでぇ?面屋はどうだった?」


「はい・・・凄かったです。ホントに・・・感動しましたよ」


「それでぇ?()()()()()()()()()


「・・・・・・・・・・・・口で説明するのも難しいです。あれは・・・」


「フッ・・・それでいいのよ」


言葉に出来ない・・・誰にも分かるわけがない・・・原理すら理解出来ない方法を持った職業なのだから・・・

読んでいただきありがとうございました!


面屋編終了です。次はちょっとした妖怪を・・・


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