隠風 オキノカゼ
月夜 慧子視点
「久しいな・・・・・・・・・郁子・・・・」
私のパパ・・・パパだ・・・あの写真のパパが・・・20年以上経って老けたパパが・・・目の前にいる。ずっと会いたかった・・・ずっと・・・
「パパ・・・パパ・・・・・・・・・・・フンッ!!」
「うっ・・・・・!」
この手でそのムカつく顔をぶん殴りたかった!!!ようやくそれが叶ったわ・・・あぁスッキリ!!!マジで最高!!!でもまだよ・・・・こんなんじゃ済まない、絶対に済ませたくない!何度でもぶん殴ってやる!!!
「ちょっ!?慧子さんやめてください!!!」
「け、慧子!!やめぇてぇ!!!」
怒りが収まらない・・・泉君や姉さんに止められても、私はどうしてもぶん殴りたい!コイツを・・・この糞親父を・・・!!
「姉さん放して!!コイツだけは・・・・!!!!」
「落ち着いてください慧子さん!!ハァ・・・だ、大丈夫ですか!?」
「フッ・・・・・殴られるのは覚悟してたよ・・・良いパンチだ・・・昔はもっと小さかったのに・・・これほどとは・・・」
覚悟してたんならもっとくれてやる!!ぶっ殺しても構いやしない!!!何がなんでもコイツだけは・・・っとその時・・・
「グッ・・・えぇ加減にせぇや慧子ぉぉぉぉぉぉ!!!!!!フンッ!!!」
ガンッ!!!
「いっ!!??・・・痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
姉さんから頭突きを受けて頭に激痛が走った。久しぶりに受けたわ・・・超石頭だからめちゃくちゃ痛い・・・
「ハァ・・・こんでちょっこし頭冷ぇたか?あぁ!?殴ぅんじゃのうて、話し合ぁてケリつけれぇ!!わぁたか!?」
話し合ってケリつけろだって?ふざけんのもいい加減にしろってのぉ全く・・・・まぁ確かに頭は冷えたけど・・・分かったわよ・・・でもそれで決着つかなかったら、今度こそ殴って殴って殴りまくって殺してやる・・・
いろいろと事情を聞いた後、私達は遊覧船に乗って、ローソク島がある場所まで向かった。パパの計らいか、船が動くのはこの一隻だけ・・・・貸切って事らしい。まぁその方がいいかもね・・・
「うぅ寒ぅ!あぁ・・・おぉ慧子?いつまでそっぽ向ぇちょぉの?」
隣にパパが座ってるけど、糞親父の顔なんて見たくもないわ・・・けど、ちょっとぐらいなら・・・いや、やっぱりいい!フンッ!
「いいんですよ・・・怒って当然だ。殴られて当然だ。顔だってもう見たくないだろう・・・娘を捨てたダメな父親なのだから・・・」
「フッ・・・ダメな父親だって?糞以下の間違いでしょ・・・」
「慧子ぉ!」
「いいんです貴子さん・・・・・・まさにその通りだ。あの日から俺は糞に成り下がった!いや糞以下だ・・・娘を友人に託した後、俺は島に戻って酒に溺れる毎日だったからな・・・今もそんなモンさ・・・ハハハッ・・・」
なに笑ってんのよ全く・・・ん?あっ!あれは・・・ローソク島だ!どうしてだろう・・・こんなに懐かしく思えるなんて・・・・昔と変わらない姿で、安心感すら覚えてしまう。
ちょうど来るタイミングがよかったのか、夕陽が先端に重なって火が点いてる!あぁ凄い・・・完全なローソクだわ!!これよ・・・これが見たかったのよ・・・・本物のローソクの火が・・・こんな時にママも一緒だったら・・・
「美しいな・・・・最後に来た日もこんな感じだった・・・覚えてるか?」
「どうかな?あんまり覚えてない・・・あぁそうだ。荒神の事だけど・・・」
「約束を守った。分かってるさ・・・母さんが死んだあの日から、俺は全て分かってた。この日が来る瞬間も全てなぁ・・・だから待ち続けたんだ。それに・・・俺なんかと一緒じゃ、娘を不幸にさせるだけだ・・・」
だから月夜家に託したと・・・確かにそれが正解ね。おかげで良い暮らしさせてもらったわ。義理の両親は私を、自分の娘のように大事に育ててくれたし、姉も出来たしで、本当に幸せだった。
でも・・・心のどこかで、本当の両親に会いたいって気持ちはあった。ずっとずっとずっと・・・パパとママに会いたいって・・・それがようやく叶ったんだ・・・今になって・・・パパと・・・ママに・・・
「ねぇ・・・その・・・・ハァ~~・・・・・・・・・・・・・パパ」
「!・・・・い、郁子・・・」
「い、いろいろ話しましょ?ママの事とか・・・しゅ、趣味とか・・・もうなんでもいいからさぁ!あのローソクが消えるまで!ね?いい!?」
「・・・・・・・・・・・・あ、ああ・・・話そう・・・・」
ローソク見てたら、もうどうでもよくなってきた・・・何もかも忘れて、昔話とか趣味とかいろいろ話をして、盛り上がって・・・親子で笑い合って・・・ママの時と同様に、凄く幸せを感じた。
だけどそうしているうちに・・・・・終わりが来てしまった・・・
「そろそろだな・・・覚えてるか?ローソクの最後に「隠岐の風」を歌ったのを・・・」
「ええ、でも3人じゃないと・・・ママが・・・」
「いるさ・・・・夢をぉ~乗せて吹くぅ風ぇ♪想い出ぇ運んでぇ~♪懐かしいぃ便りはぁ~♪故郷の香りぃ~♪かすんでぇ見えるぅ~遠いぃ~想い出ぇ♪風にぃ~吹かれて届けぇ♪隠岐ぃの島の風ぇ~♪」
パパが急に「隠岐の風」を歌い始めた・・・どうして・・・その時、隣に誰かいる気配を感じ・・・・・え・・・・・・・ママ!?
『言葉はぁ何もいらなぁい♪心の隅に~♪想い出ぇつづればぁ~故郷の香りぃ♪つまびくぅギターのぉ♪かわいたメロディ~♪風にぃ~吹かれて届けぇ♪隠岐ぃの島の風ぇ~♪』
フッ・・・・フフフッ・・・・笑える。もう会えないと思ってたけど、こんな形でまた再会出来るなんて・・・そうね・・・やっぱ3人で歌わないとね!!
『「「
かすんで~♪見える~♪遠いぃ想い出ぇ~♪
風にぃ~♪吹かれて届けぇ♪隠岐の島の風ぇ~♪
風にぃ~♪吹かれて届けぇ♪隠岐の島の風ぇ~♪
風にぃ~♪吹かれて届けぇ・・・・隠岐の島の風ぇ~~♪
」」』
ローソクの最後を見ながら、3人で「隠岐の風」を歌う・・・・これが正真正銘のラスト・・・ママはもういない・・・これで終わった・・・本当にこれで・・・
翌日、私達は船に乗って本土に帰った。パパも連れて行きたかったけど、島に残ると言って断固反対された。想い出があるからって頑固だっつぅの・・・・まぁいいや。本人がそう言うなら仕方ないし・・・
それにしても良い風だわ・・・・島から流れる風が、こんなにも気持ちいいなんてね・・・また来よう!さよなら!!私の故郷!!!隠岐の島!!!!
姉さんは出雲に帰って、私と泉君はようやく事務所に帰った。もう遠すぎてしんどい・・・それに腹減ったわ・・・ピザ食べたい・・・
「あぁ慧子さん!ピザ奢らせてください!誕生日プレゼントって意味でぇ・・・・その・・・」
「どんな誕生日プレゼントよ・・・まぁいいわ。じゃあマルゲLサイズ2枚で耳にチーズソーセージ入り・・・あぁ後・・・ん?」
チャリリリリリリリン!・・・・チャリリリリリリリン!・・・・
こんな時に仕事の電話かいな・・・明日にしてほしいんだけど・・・いや!やるか!!何かやる気出て来たし・・・!!!
「ピザは後!ささっと終わらせるわよ!準備は?」
「はい!!いつでも・・・!!!」
「フッ・・・・・・・・・・・・・・・もしもし、幽霊屋です」
隠岐の島にある洞窟・・・封印された石碑が砕け散り、黒い影が姿を現した。獣のように赤く目を光らせながら、高らかと雄叫びを上げ、がむしゃらに外へ飛び出して行った・・・
読んでいただきありがとうございました!
第1部完!!!第2部始動!!!!
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