ファニーテイルズ~ダンジョンとぬいぐるみと魔物の物語~
昔、人間同士でたくさんの争いがあった頃。
地面に大きな穴が開きました。
地面の穴からはたくさん、魔物たちが現れました。
たくさん、たくさん現れてきました。
魔物たちはたくさんの人間に襲い掛かりました。
人間は魔物から逃げたり、戦ったりしました。でも、魔物は強くて人間たちはどんどんと追い詰められていきました。
ある日、ぬいぐるみを抱いていた女の子が逃げ遅れました。走って逃げている途中で、こけてしまいました。
倒れた女の子に襲い掛かる魔物。女の子はぬいぐるみを守りたくて、ぎゅっとぬいぐるみを抱き締めました。
その時、奇跡が起きました。抱きしめていたぬいぐるみから強い光が生まれ、魔物はひるみました。
光が収まると、女の子を守ろうと魔物の前に立ちふさがる一つの影がありました。
それは、ぬいぐるみでした。
女の子の腕の中から跳び出したぬいぐるみが、女の子の前に立っていました。
動くぬいぐるみのファニーは、短い手足を動かして飛び跳ね、魔法を使って魔物を倒しました。
そのファニーは、『最初のファニー』と呼ばれるようになりました。
その日から、あちこちでファニーが誕生しました。
うさぎのファニーはぴょんぴょん跳ねて、ニンジンの形をした魔法を使いました。
クマのファニーは小さくても力持ちで、ペンギンのファニーは泳ぎが上手。
少しずつ増えて行くファニーのお陰で、人間は逃げなくて大丈夫になりました。
少しずつ失った国を取り戻していきました。
そうしてたくさんのものを取り戻して、最後に大きな穴を塞いで、人間は平和を取り戻しました。
人間はみんな、喜びました。
世界中に開いた小さな穴からはまだまだ魔物が出てきましたが、もう大丈夫。
ファニーたちがいますから。
人形屋の人たちがぬいぐるみを作れば、新しいファニーが生まれます。
ファニーが怪我をしても、人形屋の人たちが魔法の糸や綿で直してくれます。
人間はやがて、魔物たちが現れない様にしたいと考え始めました。
そうして、地面の穴を調べるようになりました。
地面の穴には、不思議な洞窟がありました。
誰が作ったのか分からない、不思議な洞窟でした。
とても長い通路と迷路。
階段を下りた先も、通路と迷路。
階段を下りた先には、迷路じゃないこともありました。
夜空が広がる森、風の強い一本道もあれば、砂と岩だらけの場所もありましたし、たくさんの川が流れる場所もありました。
とても不思議な地面の下の世界。
それはやがて、ダンジョンと呼ばれるようになりました。
ダンジョンには魔物が沢山いました。
そして、不思議な物も落ちていました。
見た目以上にたくさんの物が入る袋や、こすればこする程入っている水が温かくなる水筒。
一度転がせば何かに当たるまでずっと転がる玉や、吹くと動物の鳴き声が出るラッパ。
魔物を減らすため、不思議な物を見つけるため、たくさんの人間がダンジョンに入る様になりました。
もちろん、ファニーと人形師もダンジョンに入る様になりました。
人間の生活が穏やかになると、争いはまた起きるようになりました。
ファニーたちにとっても、困った事が起こる様になりました。
これは、ダンジョンとぬいぐるみと魔物の物語。
物語の結末は、まだまだ先となります。
楽しい結末になるのか、悲しい結末になるのか。
それは、物語が進んでからのお楽しみ。