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瞬の血。

瞬は救世主なのか?

 リスに僕の血を飲ませると、みるみる正常化していった。


 ゾンビ化が治まり、ごく普通の生きているリスになった。


「これは…」


「スゲェ!」


「魔法みたいだ」


「これ、人間にも効くんとちゃうか?」


「おそらく、それは無理ね」


 盛り上がっていたところで姫が冷静に言った。


「どうしてですかい?」


「ここに来る前に瞬は何人ものゾンビに噛まれてきたわ。当然、瞬の血をすすっているはず」


「なるほど。俺を噛んでも人間に戻れなかったということですね」


「そうよ」


「でも、実験したいなぁ」



 そこへ、本当にタイミング良くはぐれゾンビが現れた。


「こいつで実験したらええねん」


「瞬、縛ってこい」


「お兄ちゃん、危ないよ」


「大丈夫だ。心配するな」


「だから、誰も心配してないって」


 菫はそっぽを向いた。


「みんな、一度噛まれたらアウトなんだ。僕が適役なんだよ」


「…好きにすれば」


 僕はロープを持って、はぐれゾンビにゆっくりと近付いた。


 極力、音をたてないようにした。


 至近距離に入って、僕は一気にゾンビを縄で縛った。


 失敗したときのために、ジンが矛を持って立っている。


 結果的に、ジンの助力は必要無かった。


 僕1人で、はぐれゾンビを縛り上げた。


 皆の所へ引きずっていく。


「皆さん、離れていてください」


 僕は、また指先を切った。


 滴る血をゾンビに飲ませた。


 様子を見る。


 結局、晩になってもゾンビはゾンビのままだった。


「やはり、姫の仮説が正しいようですね」


「人間のゾンビには効かないみたいね」


「畜生、期待したのにな-!」


 クラマが悔しそうに言った。


「明日も実験しましょう」


「どんな実験ですか?」


「猪とか鹿など、大きな動物に解毒剤が通用するか」


「なるほど。どこまで有効か?確認するんですね」


「でも人間に効かへんとは…。ガッカリしたけどまあええわ。今日は魚が食べれた分、幸せや」


「魚は全て通常の状態に戻っていましたから」


 と、ポックル。


「でも、ちょっと怖いなぁ」


「大丈夫です。念のため、全ての魚に瞬さんの血を飲ませています」


「魚なんて、何年ぶりだろう」


「魚って、こんなに美味かったんだな」


「瞬に感謝よ」


「サンキュー、瞬」


「おおきに」


「…ありがとう」


「魚は沢山あります。簡単に釣れたので」


 楽しい夕食だった。



 だが、その時!


 縛っていたゾンビが縄を千切って立ち上がった。


「おい!」


「戦闘準備」


「逃げろ!ポックル」


「うわあああああああ」


 ポックルが悲鳴をあげた。


 ポックルはゾンビに噛みつかれた。


 スグにジンの矛がゾンビの脳天を打ち砕き倒した。


「うわああああああ!僕、噛まれたあああ!」


 うろたえるポックル。


 僕は指先を深めに切って、ポックルの口の中に指をねじ込んだ。


 どれくらい時間が経ったのかわからない。


 どれくらいポックルに血を飲ませたかわからない。


 いつまでもポックルはゾンビ化しない。


「良かった。もう大丈夫ね」


「姫、僕は?」


「これだけ時間が経ってもゾンビ化しないのですから、もう大丈夫ですよ」


「よ、よ、良かったああああ」


 ポックルは座り込んだ。


「また面白い実験結果ね。噛まれてスグに瞬の血を飲んだらゾンビ化しない」


「これから、予防薬として瞬の血を飲んでから戦闘するというのはどうだ?」


「それ、おもろいな-!」


「…できるか?」


「俺は構いませんよ」   


「お兄ちゃんの馬鹿!そんなに血をあげちゃったら貧血で倒れるわよ」


「菫さん、大丈夫です。私の回復魔法がありますから…」


「……」


 菫は姫には逆らわない。


「じゃあ、明日、ゾンビ化した猪とか鹿とか猿とかを捕まえてきます」


「あんまり調子に乗っていると痛い目にあうわよ」


「この世界で生き抜くには、全力で挑まないといけないんだと思う」


「確かに、生きていくのが厳しい世界だけど…」


「出し惜しみをしている場合じゃない。全力で生き抜くんだ」


「まあ、いいわ。気を付けてね」


「それに、俺は菫を守らなければならない!」


 菫は何かを言いかけて…言葉にするのをやめた。





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