狩り。
アピールしたい存在感。
「じゃあ、森の中に入ってみます」
「瞬、これを使いなさい」
エリカが綺麗な剣をくれた。
「もらってもいいんですか?」
「ええ、どうぞ」
僕は剣を抜いてみた。
綺麗な剣だった。長さも重さもちょうどいい。
「武人だった父の形見です」
「そんな貴重なもの、受け取れません」
「いいんです。使って貰った方が剣も喜ぶでしょう」
「わかりました。ありがとうございます」
「はい。ご武運を」
「じゃあ、いってきます」
「気を付けてくださいね」
「お兄ちゃん、私は?」
「森の入口で木の実でも採っていろ、森の奥には入ってくるなよ」
「…わかった。森の奥で倒れても助けに行けないわよ」
「大丈夫だ。心配するな」
「別に、心配してるわけじゃないけど…」
僕は森の奥深くに入って行った。
早く新しい剣を使ってみたい。
最初に出くわしたのはゾンビ化した猿だった。
突然、木の上から飛び降りて襲いかかってきたのだ。
僕は猿を一刀両断にした。
すごくよく斬れる剣だ。
僕は剣の切れ味に満足した。
しかし、獲物を見つけないといけない。
手ぶらで帰ったら、きっとガッカリされるだろう。
逆に獲物を持ち帰ったらありがたがられるに違いない。
僕と菫の居心地を良くするには結果が必要だ。
見つけた。
大きな猪がいた。
ゾンビ化はしていないようだ。
僕は高速で猪に襲いかかった。
猪がこちらを振り返った。
僕は猪の頭を打ち砕いた。
大猪は即死した。
やはりここはゲームの世界だ。
元いた世界なら、僕にこんなにこんな活躍は出来ないだろう。
初めての狩りの獲物としては充分だ。
森の中は道が無いので迷う。
僕はちゃんと、歩きながら木に傷をつけて進んでいた。
だから帰り道に迷うことも無かった。
僕は猪を背負って皆のところに戻った。
真っ先に駆け寄ってきたのは菫だった。
「うわ、猪!」
「ラッキーだったよ」
「あまり調子に乗らない方がいいわよ」
「そうだな。気をつける」
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「どうしてお兄ちゃんはいつでも正直に話すの?」
「正直?」
「正直というか、素直というか…」
「嘘をつく理由も無いからな」
「単純なんだね」
「何だって?」
「ううん。羨ましいって言ったの」
皆、猪に大喜びだった。
「肉なんて何年ぶりやろう?」
「とても美味しいわ」
「瞬、よくやってくれた。これからも頼むぞ」
「任せてください」
「ポックル、よく料理できたな」
「肉をさばいたのは久しぶりです」
皆、肉に飢えていたのだ。
「瞬、ゾンビ化した獣には遭遇しなかったの?」
「ゾンビ化した猿に襲われました」
「お兄ちゃん、猿に襲われたの?」
「ああ、一刀両断にしたけどな」
「調子に乗っていると、いつかひどい目に会うわよ」
「やっぱり俺達は森の奥に行けないな」
「やめておいた方が良いと思います。かすり傷でも致命傷でしょうから」
「瞬の加入で食糧に関しては改善されたな」
「これからは肉を食えるんやなぁ」
「夢みたいだ」
「魚はどうですか?」
「ダメなんだ。ゾンビ化している魚もいる。噛みつかれたら終わりだ」
「近い内に、魚を獲って来ましょうか?」
「魚か、魚もええなぁ」
「お魚も、何年も食べていないわね」
「食料は植物だけだったんですか?」
「ああ。植物はゾンビ化しないからな」
「植物だけでは味気ないが、ポックルが料理上手なので助かっている」
「確かに、植物だけでも美味しかったです」
「そうだろう。ポックルは料理の名人だからな」
「いやあ、それほどでもないですよ」
「しかし、猪一頭でもこの人数ではスグに食べ終わってしまうな」
「これから、もっと沢山の獲物を獲るようにします」
「瞬、無理はしないでね」
「はい。でも、もっとお役に立ちたいので」
「どうせ私は木の実しか採ってこれないわよ」
菫が不機嫌になった。
「何を怒ってるんだよ」
「べつに、おこってないけど」
「菫さん、きっとあなたの魔法が必要なときが来るわ」
「そうや、今は小さいことを気にしたらアカン」
「ジン、お前も何か言えよ」
「…ああ、美味いな」
ジンはやはり寡黙だった。
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