仲間。
「朝っぱらから大声出すなよ」
デクが眠たそうな顔で起き上がった。
基本的に、馬車の中で眠るのは姫とポックルだけのようだ。
他の男性陣は外で毛布を被って寝ている。
雨の日はどうするのだろうか?
「せやけど、やっぱりこいつゾンビにならへんねん。おかしいやろ?」
「落ち着きなさい、クラマ」
姫が馬車から降りてきた。
「姫、おかしいやろ?おかしいと思いません?」
「もう認めるしかありませんね」
「認めるって?何をでっか?」
「瞬には抗体があるのよ」
「まさか!?」
「そうね。本当に奇跡だわ」
「そんなアホな…」
「でも、現実を受け入れなければなりません」
「ゾンビにならない…」
「頼もしい仲間よ」
「仲間…」
「頼もしい…」
「確かに、これからのゾンビとの戦闘では期待できるあなぁ」
「いくら逃げても戦闘は起こるからな」
「そうですよ、心強い味方です」
「そうやな、味方になれば戦力がアップするな」
「瞬、私達の仲間になってくれますね」
「はい!是非!!」
「クラマ、デク、縄をほどいて」
「わかりました」
縄はほどかれた。
ようやく、僕は本当の意味で解放された。
「お兄ちゃん、良かったね」
「菫、心配させてすまなかった」
「別に、心配なんてしてないわよ」
「そうか」
「そうよ」
「これで、菫を1人にしなくてすんだな」
「1人にしてたら、マジ怒ってたから」
「心配させてすまん。もう大丈夫だ」
「だから、別に心配なんてしてないってば」
「そうか」
「でも、これからも私を1人にしたらマジ怒るわよ」
「それは怖いな」
「そうよ、私は怖いの。だから言うことを聞きなさい」
「はい、はい」
「姫」
「何?クラマ」
「こいつがゾンビにならへんのなら、妹にも抗体はあるんちゃうか?」
「そうね、その可能性が高いわね」
「もし、そうなら、本当に最強の兄妹だな」
「いやいや、多分、妹に抗体はありません」
「どうして?」
「菫とは血の繋がりが無いんです」
「血の繋がりがない?」
僕は、僕と菫のことを簡単に説明した。
「そうでしたか。では、菫さんはこれから気を付けないといけませんね」
「はい。気を付けます」
「かすり傷でも命取りですからね」
「はい」
「菫」
「何よ」
「姫には素直だな」
「うるさい!」
「でも、菫さんには魔法がありますから」
「姫、これは…」
寡黙なジンが言った。
「そうね。だからこそ瞬と菫さんはこの世界に呼ばれたのかもしれないわね」
その言葉に、僕はハッとした。
縛られている間、僕はずっと考えていた。
何故、僕達はこの世界に来たのか?
その答えが、今、姫が言ったことであれば理解できる。
僕はゾンビにならない存在として、この世界から必要とされているのではないのか?
だとしたら、きっとゾンビとの戦闘で活躍の場はあるだろう。
だが、菫は?菫は多分、噛まれたらゾンビになるだろう。
僕のサポートをするためか?
もしくは菫は巻き込まれただけなのか?
菫を巻き込んだのなら、申し訳ない。
「そうかもしれません。俺達、頑張ります」
「ちょっと待ってよ、どうして私まで一緒にこの世界に来たの?」
菫は勘の良い娘だ。
「菫さん、どういうことですか?」
「お兄ちゃんがこの世界に招かれたのはわかります。ゾンビにならないから。でも、どうして私まで?」
「どうしてかしら…」
「菫、巻き込んだのかもしれない。すまん」
「いやいや、お兄ちゃんが1人で行方不明になっても困るんだけど」
「瞬と菫さんはコンビで戦うと言っていましたね」
「はい。ゲームでは僕が斬り込んで菫が僕の背中を守ってくれます」
「では、2人でひとつ、そういうことなのでしょう」
「2人で、ひとつ…。私も頑張ります」
「2人共、歓迎するわ」
「ありがとうございます」
「とりあえず、何かの役に立ってもらおうか」
「食料を獲ってきます」
「獣か?」
「はい。ずっと植物だけしか食べてらっしゃらないようでしたので」
「ちょっと鈍いんとちゃうか?どうして動物を獲りに行かないかわからへんか?」
「え?わかりません。動物が少ないのかなぁと…」
「森の奥へ入って行ったら獣はおるわ。けどな、獣にもゾンビはおるねん」
「獣のゾンビ?」
「そんな奴に噛みつかれたらアホみたいやろ?」
「ああ…」
「俺達の場合、かすり傷が致命傷になるからな」
その時、閃いた。
「僕なら、かすり傷を気にせず獣を獲りに行けますよ!」
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