聖剣。
守りたいから。
姫の回復魔法の力もあって、瞬は数日で全快した。
「桜」
「なんじゃ?」
「聖剣のある場所を教えてくれ」
「なんと?正気か?守りはかたいぞ」
「今後の戦闘のことを考えたら必要だろう」
「本当に行くのか?」
「行く」
「今はまだ早い」
「じゃあ、いつだったらいいんだよ?」
「それは……」
「桜、地図を書いてくれ」
「いや、地図など要らん。私が案内する」
「桜には、僕等の子供を守るために残ってほしいんだけど」
「いや、私はゾンビだから噛まれても問題無い。同行者としては、私が適任じゃろう」
「私も行くわよ」
「いや、菫は残れよ」
「言ったでしょう?全身を硬質化させられるようになったから、ゾンビの牙は私にも効かないわ」
「菫、子供のことは?」
「姫、お願いしてもいい?」
「ええ、私は構いませんけど」
「では、この3人じゃな。うむ、現状でのベストメンバーじゃ」
「俺も行こうか?」
「私も」
「いや、この3人がいいのじゃ。ゾンビに噛まれても心配の無いメンバーじゃからな。悪いが、他のメンバーには残ってもらう。残る者も必要なのじゃ」
「では、行くぞ」
「この森を抜ければ、山の麓に辿り着く。山の中腹に洞窟があって、そこに聖剣があるのじゃ」
「そうなのか?森の中にゾンビはいるのか?」
「わからん。基本的には、洞窟を守っているはずじゃから、森にはいないと思うのじゃが……はぐれゾンビがおるかもしれぬ」
「まあ、今更引き返すわけにもいかない。行くしかないな」
「そうよ、行こうよ」
「菫、硬質化しておけよ」
「わかってるわよ」
「いるじゃん」
早速、ゾンビを見つけた。
「隠れろ、ゾンビは仲閒を呼ぶことがあるからな」
「わかった」
「また、いるじゃん」
「隠れろ」
「わかったわよ」
隠れながら移動して、3人は森を抜けた。夜になっていた。
「どうする?朝まで待った方がいいのか?」
「どっちにしろ、洞窟の中は真っ暗じゃがな」
「もう、行きましょうよ。月明かりで充分でしょ」
「菫は目がいいからな」
「スキルアップして、目が良くなったのよ」
「そういえば、俺も何故かよく見える」
「私も見えるのじゃ」
「じゃあ、問題無いわね、行きましょう。早く剣を奪って帰りましょう」
「そうだな」
「では、行こう」
「山の麓にゾンビが沢山いるじゃないか」
「だから、ゾンビの大群が守っておると言ったじゃろう」
「どうする?見つからない方法は無いのか?」
「無いな、どのルートを辿ろうがゾンビはいる」
「じゃあ、どのルートを辿っても一緒だな、じゃあ、最短距離で正面突破だ」
「わかった」
「そうこなくっちゃ」
「最高速で行くぞ!」
ゾンビの大群に3人は突っ込んだ。
瞬の剣が、桜の爪が、ゾンビの首をはねた。菫の落雷が冴えた。
最早、並のゾンビなど敵では無かった。何体いようが関係無い。
3人は、あっと言う間に山の中腹まで駆け上がり、洞窟に入った。
“!”
壮絶な殺気を感じて3人は同時に洞窟から出た。洞窟の中から、何かが来る。
白ずくめで長身のゾンビだった。
今まで、黒ずくめのゾンビは多く見かけたが、白ずくめは初めてだった。ありがたい、夜戦には目立ってくれる。だが、このゾンビは何かが違う気がした。
「桜」
「うむ。瞬の思っている通りじゃ。こいつは強い」
「桜とどちらが強い?」
「多分、私よりも強い」
「そうか、じゃあ、俺が殺る」
「待ちなさいよ、落雷!」
雷が落ちてきたが、白いゾンビは微動だにしなかった。
「やっぱり、魔法防御は完璧じゃな」
「物理的攻撃に頼るしかないな、じゃあ、俺が行く」
まただ。幾ら瞬が剣を振り回しても、残像しか斬ることが出来なかった。
「私も加勢するぞ」
「桜、無理するな」
「2対1なら、なんとかなるかもしれぬ」
そういう桜も、白いゾンビを捕らえきれない。爪が空を斬る。
そして、避けるばかりだった白いゾンビが遂に動いた。
爪が瞬の肩にくい込む。その白いゾンビの右腕を瞬が両手で握りしめた。
「桜!」
「おう!」
腕をつかまれて動けない白いゾンビの首を、桜が落とした。
「よっしゃあ!」
「やったぞ、瞬」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
瞬の傷は浅くはなかった。血が止まらない。
「大丈夫だ、菫」
「ああ、私も回復魔法が使えたら……」
「奥へ行こう。聖剣を取りに行かないと」
「早く行って、早く帰るのじゃ」
ランプに火を点けて、心細い灯りを頼りに奥へ進む。
突き当たりに、剣が2本、地に刺さっていた。
「これか」
「これじゃな」
瞬は右側の剣を掴もうとした。電気ショックが起こった。
「痛っ!どういうことだ?」
「剣が持ち主を選んでおるのじゃ」
「俺は、持ち主として選ばれなかったのかよ、畜生、せっかくここまで来たのに」
「いや、左側の剣を持ってみろ」
左側の大剣を掴んだ。持てた。地面から抜くことが出来た。
「おお、持てたぞ!俺は選ばれたんだ」
「じゃあ、右側の剣は?」
「菫、試しに抜いてみるのじゃ」
「わかった」
長剣が握れた。抜けた。
「私も剣に選ばれたの?」
「そのようじゃのう」
「菫、俺達兄妹がこの世界を変えられるかもしれないぞ!」
「え?じゃあ、やっぱり私も選ばれてここへ来たのね」
「なんだこれ?肩の傷が癒やされていく」
「聖剣の力じゃなぁ、聖剣は攻撃と回復、両方の力があるのじゃ」
「桜、ありがとう。聖剣があれば、未来に希望が持てるよ」
それは、相馬兄妹の聖剣伝説の始まりだった。
★メッセージ、コメント、評価、感想、レビュー、ブックマーク等よろしくお願いいたします★




