母は強し。
母として。
やがて、ナターシャ、ラーラ、アリスも妊娠した。
ベビーブームだった。次々と産まれて来る。クラマに至っては、もう2人目を授かっていた。
これで全員、子宝を授かったことになる。桔梗を除いて。
その桔梗が動いた。瞬は桔梗に洞窟へ連れて行かれたのだった。
「話ってなんだよ?」
「私にも子供をつくってよ」
「何を言ってるんだ?桔梗は僕を憎んでいるんだろう?恨んでいるんだろう?」
「恨んでる。瞬のせいで、私もこちらへ飛ばされたと思ってるから。そんなあなたに抱かれるなんて嫌」
「だったら……」
「でも、私だけ子供を授からずに死ぬのはもっと嫌」
桔梗は服を脱ぎだした。
「何も言わず、子供だけ作ってよ」
全裸になった桔梗が横たわった。瞬は逆らわなかった。
「中学までは、瞬が好きだったのよ」
その言葉が耳に残った。
やがて、桔梗も妊娠した。
だが、或る日、桜が真剣な声を出した。
「皆、集まれ、逃亡の準備じゃ」
「どないしたんや」
「運良く、全員が馬車の周囲に集まっています」
「桜、敵か!?」
瞬の声は冷静だった。この日が来るのは覚悟していた。この日のために、子供を沢山つくったのだ。
「ああ、今度はブロック長じゃない。エリア長だ。今までのボスよりも遙かに強敵じゃ。逃げた方が良い。多分、こちらに気付いている。真っ直ぐやって来る」
「敵の数は?」
ジンの声は緊張していた。
「1人じゃ。奴1人で充分だろうな。下っ端ゾンビ数百人よりも強い」
「では、馬車に乗って移動を開始しないといけないのではないか?」
「ナターシャ、慌てるな。奴は高速移動が出来るタイプじゃ。馬車でも逃げ切れない」
「この前は俺達の圧勝だったんだ、今回も負けやしねえだろ?」
「デク、今回の相手は舐めたら死ぬぞ」
「要するに、馬車が逃げられる用に時間稼ぎをしたらいいんだろう?」
「瞬!?行く気か?私が行くぞ」
「桜には、俺の子を守ってもらわないといけない」
瞬は、剣を抜いて前へでようとした。
「待て、まず中長距離戦を試してからでも遅くないのじゃ」
「行くぞ、地割れ!」
「かまいたち」
「落雷」
「水縛り」
「……やっぱりダメじゃな、完璧な魔法防御じゃ。物理的攻撃しか効かないようだ」
「みんな、逃げろ!俺は父親として、我が子達を守る、妻達を守る。時間を稼ぐから」
瞬が飛び出した。
高速移動、あっという間にゾンビに接近した。
瞬、得意の高速剣。レベルもかなり上がっている。
が、全く目標を捕らえられなかった。
全て避けられる。残像しか見えない。
瞬の肩の肉が裂けた。敵の武器が何かはわかった。爪だ。桜もよく爪を使う。
腿が裂け、腹が裂けた。血が噴き出る。
瞬はチラリと後方を見た。まだ馬車がいる。動いていない。
「逃げろ-!俺が時間を稼いでいる間に!」
全身、ズタズタに切り裂かれて、瞬は立っているのがやっとだった。
「瞬!伏せなさい!」
その時、桔梗が弓を構えていた。咄嗟に瞬は伏せた。
「母は強し!なのよー!」
ものすごい強弓だった。ゾンビの腹に大穴を開ける一矢だった。
瞬は、倒れたままうごめくゾンビにトドメを刺した。
「みんな、気付いていなかったようだけど、1番レベルが上がっていたのは私なのよ。ずっと結界を張りっぱなしでスキルを使い続けていたからね」
父として奮戦した瞬は、意識を失った。
気が付いたら、馬車の中だった。
姫が回復魔法を施してくれたようで、傷は浅くなっていた。
「父親として、カッコつけようと思っていたのにな」
「父親より、母親の方が強いのよ」
桔梗が、瞬の顔を覗き込んで、笑った。
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