出産。
ゾンビの出産、そして桜は?
翌日、安心したせいか、突然リンが産気づいた。
「男性陣は馬車から降りてください!」
男衆は閉め出された。
女性陣は、姫の指示の元、お湯を沸かしたり、バタバタして忙しそうだった。
「オギャー!」
やがて、馬車の中から赤ん坊の声が聞こえた。
「もう、男性陣も馬車に入っていいですよ」
瞬は、馬車の中を覗き込んだ。
「え!?あれ?その子?」
「はい。人間の赤ちゃんです。かわいいですね」
「ゾンビと人間の子は、人間なのか!?」
「そんなことって、あるんかいな」
「この子は、人類の希望だ」
「…何にしても、めでたい」
桜が瞬に飛びついた。
「瞬!」
「どうしたんだよ、桜」
「私達も子どもをつくろう!ゾンビでも子どもが産めることが証明された!」
桜は泣いていた。
「ゾンビでも子どもが産めるのか?ずっと不安だったのじゃ」
「泣き止めよ」
「これで、安心した。私は、子どもが欲しいのじゃ」
「わかった。わかったから」
瞬と桜を、菫と桔梗が見つめていた。
好意的な眼差しではなかった。
リンの息子は、ガクと名付けられた。
ゾンビパワーだろうか?ガクの成長は早かった。
1ヶ月もすると、5~6歳の体格まで成長した。
「おいおい、このまま老化してスグ死ぬんじゃないのか?」
「大丈夫じゃ、瞬、或る程度成熟したら、成長は緩やかになる」
「何故、わかる?」
「子どものゾンビがそうだったからな」
「そうなのか?」
「ああ」
「でも、あの子は人間だぞ」
「ゾンビの遺伝子も、ちょっとは受け継いでいるからじゃろうな」
「そんなものか」
「勿論、私もゾンビと人間の子は初めて見るから、“絶対”とは言えぬが、まあ、大丈夫じゃろう」
「そうか」
「それに、これは良いことでもある」
「どういうことだ?」
「いつ戦いが始まるかわからん、乳飲み子を連れて戦うのは難しい」
「あ!?」
「或る程度成長してくれた方がありがたいのじゃ」
「そういえば、そうだな」
「瞬」
「明日の狩りの時などは、どうだ?」
「どうとは?」
「子作りじゃ」
「え!?それは、ちょっと…待ってほしいかも」
「私は、いつでもOKじゃ」
「わかった」
「瞬は、私が嫌いか?」
「そんなはずないだろう」
「そうか、なら、楽しみにしている」
「ああ、楽しみにしていてくれ」
「言ったな、取り消しは許さないぞ」
「大丈夫だ、待っていてくれ」
「よし」
「姫に相談があるのですが」
「何でしょう?」
「ちょっと、こちらへ」
「はい」
馬車から少し離れたところで並んで座る。
「どうしました?珍しいですね」
「菫と桔梗と桜の件です」
「3人が、どうかしましたか?」
「今、桜からアプローチされています」
「知っています。全員が知っていますよ」
「僕は、その気持ちにこたえるべきでしょうか?」
「それは、瞬の気持ち次第でしょう」
「最近、気持ちにこたえてもいいかなぁと思う時があるんです」
「それなら、迷うことは無いではありませんか」
「そうなったとき、菫と桔梗から僕はどう思われるのでしょうか?」
「そうですね、まあ、良くは思われないでしょうね」
「やっぱり…」
「それでも良いではありませんか」
「このグループで、チームワークが乱れてはいけないような気がして」
「それとこれとは話が違います。生き残るために、戦闘の時は結束するでしょう」
「そうでしょうか」
「私は、瞬のしたいようにすれば良いと思います」
「そうですか、ありがとうございます」
「どうせなら、菫さんや桔梗さんも娶ったら良いのではありませんか?」
「いやぁ、それは無理でしょう」
「一夫多妻も、良いと思いますよ」
「どうして、そんなことを?」
「こんな状況です。私達はいつ死んでもおかしくありません」
「確かに」
「それなら、やりたいようにやった方が良いと思います」
「そうですね」
「今を大切にしましょう」
「わかりました。ありがとうございました」
「また、いつでも相談してください」
瞬達は馬車へ戻った。
「お兄ちゃん、姫と何を話してたの?」
「菫と桜と桔梗のこと」
「マジ?私達の何を話してたの?」
「たいしたことじゃないよ」
瞬は、話をはぐらかせた。
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