救出。
逃亡者達。
或る日の夕食時。
「あ…」
「どうしたんだ、桜」
「人間が迷い込んできたのじゃ」
「何人だ?」
「2人。男と女じゃな」
「ここへ連れてこなアカンのちゃうか?」
「そうだ、そうしよう。ゾンビに見つかる前に」
「じゃが、夜になる。あまり結界の外へ出るのはオススメできないのじゃ」
「距離は?」
「西へ1キロ」
「それなら、僕が救出に行ってきます。僕の高速移動なら大丈夫でしょう。ねえ、姫」
「俺も行く。1人で2人抱えるのは大変やろう」
「クラマさん、お願いします」
「ほな、行ってくるわ」
走る2人。高速剣士にしか出せないスピードだ。
いた。
2人、支え合うように毛布にくるまって座っている。
「無事ですか?」
「お前達は!?」
「大丈夫、人間です。助けに来ました」
「本当か?」
「はい。それよりも時間がありません。僕等の陣地までお連れします」
2人は立ち上がった。
女性の方のお腹が出ている。
妊婦のようだ。
「瞬、お前は妊婦さんを丁重に運べ。俺は旦那の方を背負っていく」
「わかりました」
瞬は、女性を“お姫様抱っこ”した。
「行きますよ」
「スピードは出るけど、怖がったらアカンで」
「はい」
瞬達は、無事に神社の結界の中に戻った。
「お帰りなさい」
「お兄ちゃん、遅かったわね」
「これ以上、早く動くのは無理だよ」
「ちょっと待って、その女の人!?」
連れ帰ってきたカップルの、女性の方はゾンビだった。
「どういうことかしら。こちらの女性は?」
「ゾンビです」
一同が構える。
「やめてください。妻は、まだ人を食ったことは無いんです」
「あなたの奥様なんですか?」
「ええ。結婚して、ちょうど10年くらいです」
30代半ばの男性が事情を話してくれた。
10年程前、2人は結婚した。
すぐにゾンビウイルスが蔓延、奥さんはゾンビになった。
だが、ゾンビになってからも片時も夫の側から離れず、
ずっと2人で逃亡していたらしい。
戦闘で奥さんが戦ったことはあるが、
人間を食べることは無かったという。
「結論から言って、信じるのは難しいのじゃ」
桜が言った。
「どういうことだ?桜」
「下級ゾンビなら、必ず人肉を食おうとするはずじゃ」
「そういうものなのか?」
「そういうものじゃ」
「桜も人肉を食べないじゃないか」
「私はゾンビの中でも階級が上じゃからな」
「じゃあ、このお姉さんも階級が上とか…」
「だったら、上司から監視されているはずなのじゃ」
「じゃあ、このお姉さんは?」
「奇跡的な例外なのかもしれんな」
「まあ、無害だったらいいんじゃないか?」
「そやな、桜でゾンビとの生活には慣れたからな」
「そうだ、人間は残り少ない。少数ずつでも団結しないとな」
「桔梗は?」
「どっちでもいい。みんなで決めたことに従う」
「姫は、どう思いますか?」
「私は、新しい仲閒として迎えたいと思います。久し振りに出会えた人間ですから」
「では、そういうことで。よろしくお願いします」
「はい!よろしくお願いします。俺、ヘドロと言います」
「…リン」
「奥様はリンというのね」
「ほお、言語を操れるのか。リンに興味が沸いてきたのじゃ」
「すみませんが、リンは身重で、いつ生まれるかわからないんです」
「ゾンビでも子どもを産めるのじゃな?」
「はい。いつ産気づくかわかりません」
「その時は協力します。お二人とも、お腹は空いてませんか?」」
「あ、お腹空いてます」
「お二人も、どうぞ食べてください」
「ありがとうございます」
頼りになるのかわからないが、
新メンバーが加入した。
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