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桔梗。

桔梗の思い。

「あ…」


 食事中、桜が声を出した。


「どうしたの?桜さん」


「この街の外れに人間が来た」


「ゾンビに襲われているのか?」


「ああ、襲っている」


「助けなくちゃ!」


 全員が立ち上がった。


「桜、とりあえずゾンビ達を止めてくれ」


「いいのか?」


「いいのか?とは?」


「私が人間と親しくしていることが上にバレれば、私の権限が剥奪されるかもしれない」


「権限を失ったら、どうなるのかしら?」


「もう、このエリアのゾンビを操れなくなる」


「姫!どうしやす?」


「人間は、誰であれ残り少ない仲閒だからな」


クラマもデクも救出したいようだった。


勿論、全員がそう思っていた。


ただ、桜の管理者としての権限を失ったら、また、ゾンビからひたすら逃げる逃避行になってしまう。


結局、最終判断は姫に委ねられる。


姫は言った。


「桜さん、ゾンビからの攻撃を止めてください」


「わかった。交戦中だったが、ゾンビ達を引かせた。今のうちに、誰かが迎えに行くといい」


「誰が行く?俺が行こうか?」


 デクが言ったが、桜が遮った。


「私と瞬で行こう。高速キャラの方がいい」


「桜、ごめんなさいね」


「いや、気にするな。瞬、行くぞ」


「わかった」


「お兄ちゃん」


「なんだ?菫」


「調子に乗って怪我しないでね」


「ああ、わかった」



「西へ真っ直ぐだ」


「わかった」


 瞬と桜のスピードは常人のものとは違う。


「あそこだ」


「本当だ、女だな」


「1人か?」


「1人だ」


 高校生くらいの女の子が、へたり込んでいた。手には弓を持っている。


 ゾンビが引き上げて行ったので、ホッとしているのだろう。


 瞬と桜が女の子の前まで辿り着いた。


 慌てて、女の子は弓に矢をつがえる。


「待て!」


「え?」


「俺達は人間だ。敵じゃない」


「あんたは人間っぽいけど、隣の女はゾンビじゃないの」


「私か?私はゾンビだ」


「ほら、敵じゃないの!」


「こいつは大丈夫だ。話せば長くなるので後だ、早く安全な所に移動しよう」


「え?」


「君を僕達の仲閒の所に連れて行く。安心しろ」


「って、あなた、瞬じゃない!」


「え?って、桔梗か?」


「そうよ。どういうこと?」


「話は後だ、瞬」


「行くぞ」


「わかった」


 桔梗は、瞬と同じ学校の同級生。弓道部だ。毎日、ランニングしているので結構、足は速かった。ちなみに、家は近所だ。

 

 と言っても、桜と瞬のスピードに比べたら足手まといになる程度だ。


 瞬と桜は、桔梗をかついで皆の元へ戻った。


「ふむ」


 桜が頷いた。


「桜、どうしたんだ?」


「助かったな。今回、人間を助けたことは上にバレていないようだ」


「私は… みんなからは姫と呼ばれていますが、あなたは?」


「桔梗です」


「あなたも異世界人ですか?」


「はい。学校からの帰り道で、いきなり何か光ったと思ったらこの世界にいました」


「今までは、どうしていたの?」


「馬車で旅する人達のグループと出逢って、それから行動を共にしていました」


「仲閒は?」


「元々8人だったのですが、戦闘の度に、1人死に、2人死に…」


「それで?」


「戦闘から戻って来た仲閒がゾンビになってたんです」


「それで?」


「意表をつかれて全滅しました。私だけ生き残って…」


「仲閒を失うのはツライですが、今、無事なことを喜びましょう。お腹は空いていますか?」


「はい」


「では、用意しますね」


 桔梗は食事をしながら、瞬と菫が異世界に来てからこれまでの話を聞いた。


それから、桔梗が言った。


「あのさ」


「どうした?」


「私、瞬の家の前を通りかかったときにこの世界に来たのよ」


「ふうん、それが何か?」


「私、あなた達の巻き添えでこっちの世界に来たんじゃない?」


「え?考えてなかったけど、もし、そうだったら?」


「私は瞬を絶対に許さない」


「巻き添えだったら謝る。でも、桔梗も使命があってきたのかもしれないよ」


「もし、あなた達の巻き添えだとわかったら、私は瞬を殺すからね」


「え?俺、殺されるの?」


「今までに、どれだけ怖い思いをしたことか」 



 食事の後、桔梗は毛布にくるまって早くから寝てしまった。


 相当、疲れていたのだろう。


 今までと違い、ようやく安心して眠ることが出来たのだろう。







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