戦闘。
戦闘開始、そして…。
「瞬、飛び出すなよ!じっくりと引きつけるんや」
「わかりました」
「まだやぞ」
「はい」
ゾンビ軍団の最前列が近寄ってくる。
斬りかかりたい。じっと待っているのが怖いのだ。
だが、我慢する.
自分でわかる。早く戦いたいのは、待つのが怖いからだ。
「まだやぞー!」
「はい!」
「よし、戦闘開始や!馬車を守れ!!」
僕は攻撃を開始する。
目の前のゾンビの頭を大剣で潰す。
剣を横に薙ぎ払う。
ゾンビの首が飛ぶ。
残酷なシーンだが、心が麻痺しているので何も感じない。
「瞬、それ以上前に出るな!全体を見ろ」
「はい!」
つい、どんどん斬り込んで行こうとしてしまう。
だが、それでは陣形が崩れてしまうことはわかる。
チーム戦は初めてだ。
つい、自分勝手に戦おうとしてしまう。
正直、じれったい。
他のメンバーは落ち着いていて、来る者だけを斃している。
時々、後ろから光が射す。
菫が僕の背中を守ってくれている。
僕は安心はしていたが、緊張もしていた。
皆と合わせて戦うことが難しい。
「瞬、前に出すぎやっちゅうねん」
「すみません!」
ゾンビの数が多い。
精神的に疲れてくる。
「あ!」
「クラマさん、どうかしましたか?」
「今、噛まれてしもうた」
「大丈夫ですか?」
「わからん。朝飲んだ瞬の血が効くかもしれん」
「きっと、大丈夫ですよ」
「気休めを言うな。俺がゾンビになったら、スグに殺してくれ」
「はい!」
僕は戦い続けた。
「クラマさん?」
「なんや?」
「大丈夫じゃないですか?」
「ホンマや、ゾンビになってない」
「良かったですね」
「死ぬ覚悟していたんだけどな」
「お役に立てて嬉しいです」
僕達は黙々と戦い続ける。
「瞬!」
「あ!」
前に出すぎた。
脇を何体ものゾンビにすり抜けられた。
ー まずい! ー
「うわー!」
「ポックル!」
馭者のポックルがゾンビに囲まれた。
「うわー!嫌だ-!」
ポックルは何体ものゾンビに襲われた。
「菫!」
「わかってる」
菫の魔法で、ポックルに覆い被さっているゾンビ達は吹き飛ばされた。
ポックルが倒れていた。
「ポックル!菫、少しの間、ここを任せる」
「え!?早く戻ってきてよ」
僕はポックルに近寄った。
ポックルは全身を噛まれていた。
「え!?」
ポックルはゾンビ化した。
「なんで?俺の血を飲んでいるのに」
「ゾンビウイルスの量の問題だと思うわ」
姫が言った。
「どけ」
僕はジンに押しのけられた。
ジンは無言でポックルの頭を矛で潰した。
「ジンさん!?」
「ゾンビになってしまったら、もう人間には戻れない」
「ですけど」
「瞬、今は戦闘に集中しろや!」
「お兄ちゃん、私1人じゃ支えきれないわよ」
「わかった」
僕は自分の持ち場に戻った。
戦闘は、かなり長い間続いた。
「アカン、体力がもてへん。姫!」
「わかったわ」
姫がクラマに回復魔法を施す。
「よっしゃ、体力が戻った。ありがとう、姫」
「苦しいでしょうが、頑張ってください」
「へい!」
どんなに長くても、終わりは訪れる。
僕達は勝った。
僕達の前には、無数のゾンビの屍(元々死んでいるが)の山があった。
菫は脱力して座り込んだ。
僕も膝をついた。
「そうだ、ポックルは?」
僕はポックルの亡骸に近寄った。
他のメンバーも集まる。
「俺は、瞬の血のおかげで助かったんやけどな」
「クラマはゾンビウイルスの量が少なかったからだと思うわ」
「俺が陣形を乱したせいで…」
僕の目に涙がにじんだ。
「瞬、泣いてる場合やないで」
「でも、俺のせいで…」
「もう、気にすんな」
「…はい」
「ポックルの亡骸を埋めようや」
「それから、移動だな。ここは、もう危険だ」
「ジンの言うとおり。移動や」
僕達はポックルの遺体を土に埋め、馬車を進めた。
森に沿って移動した。
「なるべく川か泉の側がいい。水源は重要や」
「森が近ければ食料も獲りやすいからな」
その夜、僕達は眠らずに移動した。
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