狩りの危険。
ゾンビ以外の危険。
翌日、また僕は狩りをした。
森の奥に入り込む。
痛い!
と思ったら、ゾンビ化した蛇に足をかじられていた。
僕は蛇を剣で両断にした。
蛇は苦手だ。
さあ、獲物を探そう。
しばらくすると、ゾンビ化したウサギを見つけた。
俊足で近付き剣の腹で殴った。ウサギは気を失った。
僕はぐるぐる巻きに縛った。
そして今度はゾンビ化した鹿を見つけた。
一瞬。
鹿は振り向く暇も無く頭を強打されて倒れた。
鹿もぐるぐる巻きに縛る。
この世界の僕は、まるでスーパーマンだ。
こんなに素早く動けるなんて。
正直、僕は銚子に乗っていた。
自分の力を自覚するほど気分が良くなる。
それから、川へ向かった。
ワニがいるということだが…。
いた。
一匹のワニがゆうゆうと浅瀬で休んでいる。
ゾンビ化はしていないようだ。
僕は捕まえることにした。
皆の食料になるからだ。
僕は浅瀬まで跳んだ。そして、ワニを頭上から刺した。
良い剣だ。本当によく斬れる。
ワニを殺したのは、ゾンビ化していないので即食料にするためだ。
僕は、ウサギと鹿とワニを引きずって帰った。
僕は皆から歓迎された。
「今日は大量やな」
「重かっただろう?」
「いえ、僕、この世界ではあまり重さを感じないんです」
本当に、重い物を持っても平気だ。
やっぱり、ここでの僕はスーパーマンだ。
自己陶酔してしまいそうになる。
自然と笑みがこぼれる。
「そうか。じゃあ、実験の続きをするか」
「ええ」
僕は台の上にウサギを置いた。
「皆さん、離れていてください」
また、瞬の血を飲ませる。
しばらくすると、正常化した。
リスと魚に続き、ウサギも治療できるようだ。
「ただのウサギに戻りました」
「リスとか、小動物には有効やねんなぁ」
「次は鹿です」
鹿にも血を飲ませる。
しばらく待つ。
もうしばらく待つ。
あと少しだけ待つ…。
「ダメです!ゾンビ化したままです」
「そうか…」
ガッ!
ジンが鹿の頭を矛で叩きつぶした。
その時、僕は目眩と寒気に襲われた。
その場に倒れる。
「瞬、どうしたの?」
「急に目眩と寒気が…」
「どうしてかしら?」
「お兄ちゃん!」
菫が抱きついてきた。
菫が僕の額に手を当てる。
「お兄ちゃん、すごい熱だよ!」
「瞬、原因はわかる?」
「そういえば!蛇に噛まれました」
「毒蛇だったのね」
「俺、死ぬのかなぁ」
「お兄ちゃん!」
「瞬、回復魔法を施します」
「お願いします。菫を置いていけません」
「お兄ちゃん、しっかり!」
「菫さん、どいて」
「姫、お願いします」
「…」
姫が呪文の詠唱を始める。
僕は次第に楽になっていった。
詠唱が終わると、僕はスッカリ健康になっていた。
「瞬、どう?」
「治ったみたいです」
「森の中で倒れなくて良かったわ」
「そうですね。森の中で1人で倒れてたら死んでいましたね」
「お兄ちゃん、どうして蛇の毒に気付かなかったの?」
「ゾンビ化した蛇だったんだ。俺にはゾンビウイルスの抗体があるから大丈夫だと思った。毒のことは気付かなかった」
「お兄ちゃん、だから調子に乗るなって言ったのに」
「ごめん、菫。もう、大丈夫」
「でも、さっきの“菫を置いて行けない”という台詞は良かったわよ」
「いい心がけだろう?」
「そうね。お兄ちゃんは私を置いて死んじゃダメなの」
「わかってるよ」
「今度、調子に乗ったら本気で怒るからね」
「わかった。ごめん」
僕は自己陶酔する気分じゃなくなった。気を引き締めた。
「瞬、気を付けてくださいね」
「はい。ありがとうございました」
「とにかく無事で良かったやんけ」
「ああ、一時はどうなるかと思ったけどな」
「…ゾンビ以外にも危険はある」
珍しくジンも言葉を発した。
「毒蛇にやられるとは思っていませんでした。これからは、油断しないように気を付けます」
「瞬も無事やったことやし、今日はワニでも食おうや」
「ポックル、出来ますか?」
「はい。料理できると思います」
「私も手伝います」
「…あ、わ、私も…」
菫の方から姫達に近付いた。
瞬は嬉しくなった。
他の人とも気楽に話せるようになれば、きっと菫は楽になる。
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