朝は瞬の血を。
日課。
次の日から、皆が毎朝ゾンビウイルス予防に瞬の血を飲むようになった。
菫は、
「お兄ちゃんの血なんて飲みたくない」
と言って、初日はなかなか飲もうとしなかった。
「そう言わず、飲んでくれよ」
「嫌!嫌なモノは嫌」
「俺は菫が心配なんだ。頼む、飲んでくれ」
「…仕方ないわね、そんなに言うなら。ありがたく思いなさいよ」
と、菫はようやく飲んでくれた。
「では、言ってきます」
「瞬、ゾンビ化した動物をお願いしますね」
「わかっています。まだまだ実験が必要ですからね」
僕は森の奥へ入って行った。
奥へ。奥へ。
森の中を歩くのにも慣れてきた。
僕は蛇が苦手だった。
蛇を見つけたら、大小に関わらず逃げる。
僕は猿を見つけた。
大きくはない。
捕まえてみた。ゾンビ化していた。
暴れる猿を、僕は縄でグルグル巻きにした。
獲物、1体ゲット。
猿を背負って森の中を進むと、また猪を見つけた。
様子を見る。
今度はゾンビ化していた。
僕は猪に突進した。
猪もこっちに向かってくる。
僕は峰打ちで猪の頭を殴った。
猪がひっくり返った。
僕は猪も縄でぐるぐる巻きにした。
僕は猪と猿をひきずるようにして帰った。
「瞬、お疲れ様です」
「どうも」
「猪と猿か?さて、どうなるんやろな」
「皆さんは離れていてください」
「瞬、頼むぜ」
「はい。まず、猿からいきます」
僕は指先を切って、猿に血液を飲ませた。
しばらく待つ。
猿は正常な状態に戻った。
「おお、戻ったやんけ」
「次、猪いきます」
「猪のゾンビ化を治せたらええんやけどな。猪は肉の量が多いからな」
今度は猪に血液を飲ませる。
しばらく待つ。
変化は無い。
更に待つ。
変化は無い。
「姫」
「そうですね。これ以上見守っても時間の無駄ですね」
僕は剣で猪の頭部を破壊した。
「とにかく猿には有効だったんだ」
「小さい動物の方が効き目があるんやろか?」
「そうですね。大きい動物には効かないのかもしれませんね」
「じゃあ、ポックルは何故助かったのでしょう?」
「対処が早かったからではないですか?」
「ややこしいなぁ」
「とりあえず、この猿は食えるな」
「ええ、いただきましょう」
「魚もまだまだありますよ」
「本当に、食は大幅に改善されたな」
「瞬達のおかげです」
「私は何もしてないわよ」
菫が言った。少し拗ねていた。
「いいえ、あなた達兄妹は2人で1つ。あなたがいるから、瞬は頑張ってくれるのよ」
「……」
菫は、少しだけ顔を赤らめて黙った。
僕は、何か話そうとして、言葉にするのをやめた。
「瞬、まだしばらくの間、実験に協力して頂けないかしら」
「構いませんよ。猪と猿以外ですね」
「ええ。私達は瞬の血について、もっと知らなければいけません」
「今度はウサギとか鹿ですかねぇ」
「虎とか狼でもいいぞ。牛や豚も歓迎や」
「牛や豚なんて、何年も食べていないからな」
「わかりました。頑張ります」
「ライオンでもいいぞ。いれば、だけど」
「わかりました。片っ端から生け捕りにしてきます」
「もう少し奥へ行くと川が会ってなぁ」
「川に何が?」
「ワニがいる」
「ワニを仕留めるのは大変そうですね」
「まあ、無理せん程度に頑張ってくれや」
「はい」
「菫、寝ようか?」
「…うん」
僕達は座って、大きな木にもたれかかって寝る。
毛布はもらっている。
「お兄ちゃん…」
「うん?何?」
「すっかりヒーロー気取りね」
「そんなつもりは無いんだけどな」
「その内、失敗するわよ」
「そうかもしれないな」
「そうじゃ困る。もし、お兄ちゃんがいなくなったら私はどうなるの?」
「菫を独りにはしない」
「約束よ」
「ああ、約束だ」
「約束を破ったら、一生口きかないからね」
「ああ、わかった。菫と話せなくなったら困るから、気を付ける」
「お兄ちゃんは、私だけのヒーローでいいんだからね」
「え?」
「ううん、なんでもない」
僕等は眠った。
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