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この世界は②

 この世界についていろいろ考えさせられることは多かった。結論には至らないが、ここがもう今まで俺の住んでいた世界とは違うことを思い知らされた。

 

 そう、ゴブリンだ。あの緑色で小さな一本角が生えていて小鬼のような見た目は、ファンタジーアニメやゲームに出てくるゴブリンそのものだった。幸い、少し遠くにいる俺の様子にはまだ気づいてはいないみたいだ。もしかしたら、人間よりも目が衰えている種族なのかもしれない。しかし、その場合聴覚や何かしらの器官が発達している可能性もある。あぁ、また俺の分析して落ち着こうとする悪い癖だ。本当は漏らしてしまいそうになるほどの恐怖だ。

 

 人は、本当の恐怖が襲ってくると声が出せない。まさにそれだ。未知なるモンスターに何も武器もなく、スキルすらない俺が見つかれば間違いなく死ぬ。

 ここはこのまま息を潜めてやり過ごしたい。俺に立ち向かう勇気などない。いや、逃げよう。

 

「カサッ」


 本当に俺は昔からここぞという時に悪いことが起きる。ここで音を立てると見つかる。そんなことは百も承知だ。でも俺は、俺は音を立ててしまった。焦りで冷汗が出てくる。

 (頼む、気づいてくれるなよ…)

そんな俺の気持ちも届かず、ゴブリンは俺のほうをジッと見つめていた。前の世界でも誰かとこんなに見つめあったことはあっただろうか。

ゴブリンは奇声を上げながらこちらへダッシュしてくる。やばい、逃げるしかない。混乱の最中、空回りしだす俺の反射神経とともに俺の足は宙に舞った。そう。滑ったのだ。つくづく運がない。人間本当に危険な時は走馬灯のように景色がスローに見えるというが、本当だったんだな。

 

 何てことを思っていたら、思いっきり体ごとゴブリンに激突した。

 

 背中あたりに激痛を覚えたがどうやら生きているらしい。後頭部打たなくて本当によかった。じゃない!!!ゴブリンは!?


 背中に違和感を感じて起き上がるとゴブリンが気絶していた。俺そんなに太っていないけどなぁ。

 とにかく今はこいつをどうするかだ。異世界とはいえ命を奪う事には気が引ける。しかしやらなければこっちがやられてしまう。


 俺はその辺の石を持ち上げた。


 鈍い音が俺の中で響いて緑色の血のような液体が流れた。


 この世界では耳や爪等、何か討伐した証をギルドなどに持ち込むと換金してくれるだろうか。でも、俺にはそんな気も起きなかった。どこかに埋めてあげよう。生きるためにはこの先もやらなけらばならない時はくるだろう。でも今は、このゴブリンだけは埋めてあげたい。自分の罪悪感を少しでも軽くしたいというエゴかもしれないけど。

 ゴブリンの体を持ち上げると、赤い血の付いた高級そうな見た目のティアラが落ちた。ゴブリンの血が緑だったことを考えると、誰か他の人間から奪ったものである可能性が高いか…

できれば持ち主に返してあげたいが、まずはゴブリンを埋葬して考えよう。


 あまり誰かが通らない場所を選び、埋葬した。


 これからどうしよう。まずこのままではまた他のモンスターなどに襲撃されかねない。怪しまれるかもしれないが、とにかく人を探そう。そう考えている時だった。


「すまないが、ちょっといいか?」

不意に背後から話しかける声が聞こえた。



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