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第八話  宿屋の娘と受付嬢

今回は受付嬢マーヤの視点で御座います。



       《冒険者ギルド受付嬢マーヤ》




・・・時は少し遡る・・・




「パルミナちゃん、何度来ても一緒です冒険者にはさせません。」


「何でぇーっ!?」



今日もここ最近日課になりつつあるパルミナちゃんとの攻防を繰り広げる。




この子はまだ十歳だ、それなのに毎日足繁くギルドに通って冒険者登録をしようとする。


この歳でも登録は出来るがその審査には実績のあるパーティの推薦とその推薦者が責任を持って面倒を観る事が前提だ。



「私を冒険者にしてくだせい!」


「駄目です、そろそろ宿屋に戻らないといけない時間ですよ、のんびりしていて良いんですか?」


「うー、明日も来やす!」



そう言ってパルミアちゃんはギルドの出口に向かう。


しかし、タイミングが悪い・・・


ちょうど()()()()()()()の【ゴールデン・フォース】がやって来た。


案の定パルミナちゃんは彼等を凝視する。


そして感極まったのかパーティリーダーのアラン君に抱きつく・・・

いえ、正確には彼の差している剣に。



「おいおい、今日もかい?冒険者に憧れてるのは判るが俺達にはどうにも出来ないんだゴメンな。」



このやりとりもギルドの定番になりつつあるが私はその光景を見てそのたびに反吐が出そうになる。




アラン君は周りから期待の新人として注目を集め初めているが私の評価は底をブチ抜いてマイナスの彼方だ。



私は騙されない。


彼等の冒険者稼業を舐めた態度も他人を見下す態度も今は上手く隠しているが知っている。


私の大切な人を苦しめた彼等の本性を私は絶対に認めない。




それにまだ十歳の幼な子に欲望に濁った瞳を向けているのがバレバレだ。


こんな少年が期待のルーキー?



まったくもって世も末だ。



「パルミナちゃん、早く帰らないとお母さんに叱られるわよ?」



この子の弱点である女将さんを持ち出して帰路を急がせる。


少しでも早く屑の獣から引き離さなくては。



「また明日!!」



そう言って今度こそパルミナちゃんは帰っていった。



明日もまた来るのだろう。


ギルドに来る時間を作る為に夜も明けない内から起きて宿屋の仕事をこなし、僅かな時間で冒険者登録をせがむ・・・


あの子も彼を失った悲しみを呑み込めていないのだ。




考えただけでも涙が溢れそうになる。





・・・帰宅・・・




今日も惰性の職務を終えて自室に戻り無気力にベットに倒れ込む。


あの子の気持ちが痛いほど分かる。


私だって本当は仕事を投げ出して迷宮に行きたい!


行って彼の安否を確かめたい。

もしかしたらまだ何処かで怪我を引きずって彷徨っているかもしれない。

助けを求めているかもしれない!




・・・だけど私には適正が無い。


その点では適正があったパルミナちゃんが羨ましい。




私の大切な人。


愚直だと周りから揶揄され【臆病者の堅者】と渾名をつけられてもブレる事なく自分の信念に誇りを持って正しく冒険者の理想を体現していた彼。




正直、彼が困っている時に私を頼ってくれた時には背筋に稲妻が走ったと錯覚するほどの得体の知れない感覚があった。



言葉を選ばなければアレは快感だった。


胸を締め付けながらも溢れる感情が心を満たす。


あの時の私は、はしたない事に甘美な感覚に負け濡れてしまった・・・




そしてやる気を漲らせた私はギリギリグレーゾーンのアシストに成功する。


しかも内容的には私の理想と言っても良いほどに完璧なアシストだった。




彼と職場の同僚となってからの日々に私は天にも昇る気持ちだった。


仕事の引き継ぎや分からない事の確認、担当新人の愚痴や私への感謝の言葉。


その全てが彼の口から発せられ、彼の眼差しが私だけに注がれる。


こんなにも素晴らしい事は他には無い。






しかし、そんな楽園の様な日々は唐突に終わりを招いた。



迷宮内であり得ない難易度変化が起きた。


引き起こしたのはカレアル・エーギル新人教官。



そう私の大切な人だ。



彼は新人達の静止を振り切り無謀にもモンスターハウスで元上級冒険者の腕を披露しようとして還らぬ人となった。

と言うのが公式での発表だ。


私は直ぐにそれが偽りだと見抜いた。


彼から新人達の性格は聞いていたし、何より演説ぶる様に彼の最後を喋る少年の瞳は濁り腐った闇を内包していたのだから。




私は真相を突き止めようとギルド支部長に直談判したが、まともに取り合っては貰えなかった。


しかも、あのルーキー達をカレアルさんの意思を受け継ぐ期待の新人として注目させる事でギルド職員の失態を有耶無耶にするつもりの様だ。


このギルドの迅速な対応に違和感を覚えるが私の様な下っ端職員にはどうする事も出来ず、ただ彼の居ない日常を惰性で生きている。




・・・惰性の日々・・・




「また明日来やす!」



今日も日課のパルミナちゃんの相手を終えて魔石鑑定に関する資料を更新する為に支部長室へ確認のサインを貰いに向かう。





支部長から認可を貰い支部長室を後にして階段を降りようとしたその時【ゴールデン・フォース】の面々が揃って階段を登ってくる。


なぜ彼等が?私はなんとなく柱の影に隠れてしまう。

そして聞いてしまった。



「しっかし、バルラスさんと知り合えたのはラッキーだったよなぁ!あの人の計画に協力したお陰で俺達は期待のルーキーだ。あの人の人脈が支部長にまで伸びてたおかげでトントン拍子で出世してんじゃね?」


「その為に私が文字通り身体を張ったんだから感謝してよね〜、あの人の相手は大変だったんだよ!流石の私も腰がガクガクだったんだから!」


「その割には満更でもなさそうな顔をしてましたけど?」


「そ、そんな・・・いや、まぁ、ね?流石は上級冒険者!って感じで大満足だったね!」


「セリカはビッチ可愛い・・・」


「タマちゃん・・・流石に可愛いって言えばなんでも許される訳じゃ無いよ?」


「バレた・・・」


「はいはい、セリカには感謝してるしミーアの実家がバルアスさんに渡をつけてくれたのも幸運だった、タマがあのお人好しを調べてくれたから的確に嫌がらせが出来た。俺達は良いパーティだって事っしょ。」






なにそれ・・・


支部長とバルアスさん、それにアラン君達は裏で繋がってるの?


しかも、まるでカレアルさんに害を与える為に結託していたかの様な口ぶりだった。




私が唖然としている内にアラン君達は支部長室にノックも無しに無遠慮に入っていった。


私は衝動的に少しでも中の会話が聞ければと思い扉に耳を傾ける。



・・・支部長室内・・・




「支部長さーん、急に呼び出してどうしたんすっか?」


「・・・何度も言っているが言葉使いに気をつけろ。お前達などバルラスの後ろ盾が無ければ、ただの教官殺しのチンピラと変わらないんだぞ?」


「その後ろ盾を用意出来たのは俺達の力っしょ?だったら全力で利用しても文句を言われる筋合いは無いと思うっすけどね?それに新人教官にトドメを刺したのは迷宮っすよ。」


「ふん!口だけは達者だな。・・・まぁ良い、早速本題だ。

バルラス達が現在【蟲魔の遊戯迷宮】で活動しているのは知っているな?」


「まぁ、俺達の地元ですし?」


「バルラスの報告によると、どうやら攻略に手間取っているらしく手駒が必要らしい、そこでお前達には【人魔の遊戯迷宮】で何かしらの成果を挙げてルーキーを早く卒業しろ。」


「その後で、あの迷宮街に凱旋してバルラスさん達の攻略に手を貸せってか?」


「そう言う事だ、私の出世の為にもバルラスには活躍して貰わねばならん。そのバルラスからもお前達が恩を返す時だと追記されていたぞ。」


「うーん、でもなぁ俺の勘だとあの迷宮ってなんかおかしいんっすよ。こう、・・・グチャッ!としてるって感じ?」


「ふむ、隠し部屋の件だな?確かに今までに無いトラップだったな。良いだろう、成果も今日明日で出せとは言わん、着実に準備を整えて確実性を上げろ。」


「リョーカイっす。暫くは浅層でこの剣の慣らしを兼ねて探索してみますよ。」


「ん!誰かいる・・・かも?」




・・・支部長室前通路・・・




「きゃ!?」


突然目の前の扉が開いた。


しまった!話の内容を聞き逃さない様にするあまり固執しすぎた。



「あれあれ〜?受付のお姉さんじゃないですかぁ、こんな所まで俺のストーカーとはモテる男は辛いなぁ。」


「マーヤ君・・・君は少し優秀過ぎるな。君だけは常に彼等を疑っていた、しかも今の会話を聞かれたとあっては私としても対処せざるを得んな。」


「だ、だれっ・・・」



大声で叫ぼうとした時にはすでにアラン君の仲間に口を塞がれて取り押さられた。



「そう言えば最近は仕事に身が入って無かったな。ちょうど良い、暫く休暇を愉しみ給え。」



支部長の冷徹な声を聞いた直後、私の意識は闇に沈んだ。





おかげさまでPVが徐々に伸びて来ております。

まぁ、ランキングに載るような人達とは天と地程の差があるんですがね。

それでも誰かに読んで頂けてる事が作者の励みになっておりますのでコレからも頑張っていきます。


ところで、もう少しで一章に当たる部分が終わるのですが登場人物のプロフィールとか必要ですかね?

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