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戦場日常。時々平和。  作者: 楽助 陽気
3/3

1-2求人

 その声の主は――ボスだ。俺の部隊は、国家直轄の特殊部隊だからボスから直接司令を受けている。恐らくボスは国の重要人物かなにかであろう


「こんな時に何の御用で? そもそも、わざわざ猫に通信装置を付ける意味ありますか?」

「む。それはお前がだいの猫好きと聞いてな」


 俺は寒気がした。どうしてそこまで知っているのだ。


「俺が猫好きなのは俺のオペレーターにしか話してないはずなんですが」

「·····」

 沈黙かよ。

「それに、もう通信装置はあるじゃないですか。電話型の」

「ね、猫の方が連れていて違和感はないだろう。」

 猫が喋り出すみたいで違和感大アリだろ。何か裏があるな。調べるか。

「ちょっと用事が出来ました。少々待っててください」

「分かった。早めに済ませろよ」

 俺は一旦首輪に付いているそれらしき装置のスイッチを押し、ボスとの通話を切った。ミレイをひと無てし、首輪をミレイの首から外す。

 いつかちゃんとした首輪買ってやらないとな。

 俺はベッドの上からデスクに移動し、カーテンを閉めて暗くなっている部屋の電気を付けた。ミレイがニャーと鳴いてデスクの上に飛び乗ってきた。ああ、可愛い。


 デスクの上で首輪をじっくり眺めていると、何か首輪の後ろの部分がキラっと光を反射して光った。

「おいおいおい·····」

 俺は直ぐに、近くにあった携帯型のアレを取ってボスをコールした。


「首輪に通信装置の他に小型カメラが付いているんですが。まさか盗撮ですか?」

「違う」

 食い気味に否定したな。


「――それにしても、あの猫は中々勘が冴えるようだな·····全くお前を写してくれんのだ·····」

「――ッ!」

 俺は得体の知れない恐怖で打ちのめされそうになった。寒気が止まらない。オッサンなのに未だに思春期が終わらないとこうなるのか。


「今のは取り消してくれ」

「無理ですよ。この端末での会話は全て記録されてるんですよ? 俺に軍法会議にかけられたくなかったら二度とこんな真似しないでください」

「――分かった」


「では」

 俺は早急に通話を切りたかった。こんな居心地の悪い通話は耐えられるものでは無い。


「ち、ちょっと待て。俺がお前に通話したのはちゃんと用があってだぞ」

「·····なんでしょうか。はぁ」

「ため息が漏れとるぞ。そんなに嫌なのか」

「盗撮しに来るストーカーと話すのは誰だって嫌ですよ。それより早く話を済ませてください」

「悪かった。それで話というのが、任務を終えたばかりだがお前に新たに命令を出すぞ」

「内容はなんでしょうか?」


「部下を増やせ」


 部下か·····

 部下は邪魔になるだけだし、軍からの配備になると十中八九男だ。少し高慢かもしれないが、俺を見るなり鼻の下を伸ばして寄ってこないだろうか。男として生きているが、容姿は完全に華奢な女性だ。前にも何名か部下を入れた覚えがあるが、ほとんど全員抱きついてきた。しかも夜にだ。意図は分からないが、恐らく良くない事だろう。骨を二、三本折って病院送りにした。

 しかも軍の兵は皆一律して同じ訓練を受けているため俺の独特な戦術には合わない。はっきり言って居ない方が良いだろうな。


「嫌です。軍の調教が入った兵など邪魔になるだけですよ。それに――気持ち悪いんですよ」


「そう言われてもな····· そもそも、お前の部隊はお前一人しか居ないのだ。戦場で孤立した時は一人よりも生存率が格段に上がる。それに、一人では複雑な作戦を実行できない。少なくともあと一人は用意しろ」


「·····じゃあ人は俺が確保します。訓練も俺の好きなようにさせてもらいますよ。軍の兵は絶対に嫌です」

「分かった。ただし、今月までにしろ。出来なければこちらから派遣する。これだけ自由なのはお前だけなのだぞ?」


 俺は通話を切り、デスクの上にある首輪を叩いて壊した。


 グゥ〜

 腹が鳴った。そういえば、任務中に簡易栄養食を食っただけだったな。お昼にするか。

「ナー」

 デスクを離れると、ミレイがついてきた。そういえば、あまり気にしなかったのだが顔を中々こちらに向けなかったのは首輪のカメラが俺に向かないようにするためだったのだろうか。

「お手柄だぞ。ミレイ」

 家にあったツナ缶をたらふく開けてやろうかな。


 俺はキッチンで簡単な食事を用意した。スクランブルエッグにパン、ベーコンという簡素なものであるが、これをパンに乗っけると美味しいのだ。最近はいつもこれで食事を済ませている。

 俺が思うに、食事は高級な肉より格安のデカいベーコンをたらふく食べた方が幸せをより感じられると思うのだ。俺の仕事は、月五百万と高月給であるがあまり贅沢はしない様にしている。

「ほら、お前のもあるぞ」

 足元にミレイが寄ってきたので、棚に入っていたツナ缶を取り出して皿に盛り付けてやった。皿を床に置くと、ミレイはとても美味しそうにツナを頬張った。

 そんな愛くるしいミレイを横目で見ながら、俺はパンかじった。



 ――さて、食事も済んだことだし、部下をどうやって増やすか考えないとな。ボスの前では強気にああ言ったものの、対して策は考えていなかった。

 とりあずデスクについたはいいが、そのまま何も出来ずに固まっている。

 うーん。まぁ、分からないことは調べればいいよな。果たしてネットには部隊の部下の増やし方など載っているだろうか。ものは試しである。載ってある事を祈ろう。

 デスクの上に置いてある首輪の残骸をゴミ箱に捨て、奥からキーボードを引っ張ってき、パソコンを立ち上げた。

 すぐさまネットで調べようとキーボードを打っていると、キーボードの上にミレイが乗ってきた。ミレイはそのまま私の手が置いてあるキーボードの上に鎮座し、こちらを見つめてきた。

「かまって欲しいのか?」

 ミレイのお腹の温もりを感じる。パソコンの画面を見ると、Eキーが押されているのか、えの字が永遠と入力されている。

 俺がミレイの下から手を引き抜くと、今度はミレイによってHの字が入力され始めた。

「全くもう。憎めないヤツめ」

 キーボードの上で体を丸めているミレイの背中を優しくなでる。モフモフの毛並みが気持ち良い。やはり猫は最高だな。いつも見ていた猫動画ではこうなでていると寝てしまうのだったか。


 ――ミレイをなで続ける事三十分。ようやくミレイは寝てくれた。俺はミレイが寝ているキーボードをそのまま持ち上げると、机の上に置いておいた。

 すぐさま俺はデスクに戻り、代わりのキーボードをPCに接続する。

 部下 増やし方

 で検索をかけると、求人広告を出すというサイトが多く見られた。

「ほう。中々引っかかるものだな」

 俺はネットの凄さを改めて実感した。私は施設育ちなので、こうして特殊部隊を結成するまでこういうのには触れて来なかったのだ。

 説明のサイトを詳しく読んでみると、とある求人広告を出すサービスで求人広告を作成し、載せてもらうという手順を踏んで広告を出すらしいと分かった。


 そうと分かれば実践あるのみだ。

 俺はそのアプリをダウンロードし、開いてみた。利用も無料らしい。しかも、誰でも分かるように簡易化されているようだ。求人を募った画像をサイト上部の掲示板に貼るだけで広告が掲載されるようだ。手軽だが、拾ってもらえるのだろうか。かなりの利用者が居るようだ。

 さて、広告を作ってみるとするか。


 広告は以外にもすぐに出来た。まぁ、国の秘密保持の為に仕事内容や職業名は端折ったからなのだろうな。

 しかし、こんなサイトに命の危険がある仕事を貼って大丈夫だろうか。そう思ったが、

『本職に就いた場合、あらゆる事故については責任を取りません』

 とでも書いておけば良いだろう。


〇 〇 〇 〇

 ボスからの司令に従っているだけで月五百万の高月給!

 職に就くだけで衣食住が全て保証されます!

 サザナカルト連邦のカードン寮にあるサンライズマンションの406号室で面接を行います。

 ※あらゆる事故については責任を取りません

〇 〇 〇 〇


 怪し過ぎるな。これに釣られる奴は相当金に困っている輩だけかもな。

 まぁいいか。もう投稿してしまった。

 さて、どんな輩が来るか見物だな。


 おっと、ミレイが起きたようだ。俺は立ち上がり、ミレイと一緒にソファに座る。テレビを付け、ミレイとの楽しいひと時を過ごした。



 ――うん·····?

 また眠ってしまったらしい。ミレイが膝の上で拗ねて丸くなっている。

「ああ、かまってやれなくてゴメンな」

 外を見るともう夕方になっていた。そろそろ夕飯の支度をしようかな。

 そう思った瞬間、家のインターホンが鳴り響いた。


 ピンポーン

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