第3話 村人 ギルドへ行く
ギルド職員に連れられてきたのは、古びた佇まい洋館だった。中に入ると受付があって、その前のにある椅子には、多分、ギルドで仕事を探しに来たかと思われる数人が座っていて、その中の一人が俺を連れてきた職員を見て叫んだ。
「おい!!オードリ!!どうなっているんだ!!」
すると職員は
「ハウエルさん。どうなされたのですか?」
「サマンサちゃんがいないんだけど・・・」
すると職員がふぅーとため息を漏らした。
「サマンサは、今、伯爵様案件の業務についておりますので、そちらのカウンターへ行かれてみては?」
「なんで俺が?あんな案件、やりたくもないわ」
すると俺を見て睨んだ
「こいつは?」
「ああ・・こちらの方ですか?・・たまたまスライムを倒しているところを見かけてお話を伺うとギルドに登録されていないようでしたので、ここへお連れしたんです」
「ふーん・・・スライムをね・・・で?登録して伯爵案件でも押しつけるつもりかね?」
「いえいえ・・・そんなつもりは、ございません。取りあえずスタンバイ村に住まれているそうですので、これから登録だけでもと来ていただいただけです」
職員は少し顔色が悪いのは気のせいだろうか?するとその男は俺の肩をバンと叩いた。
「そうかい・・あんた・・気をつけな?登録しても下手に伯爵案件には手を出さねぇ方が身のためだぜ・・何せ、伯爵付きの魔導士ヘンダーソンは、行かねぇそうだから・・・」
そう言うとその男は元の位置に座ってしまったのだった。
「ささ・・こちらへ?」
俺は職員に誘導されるがまま、別室へと連れて行かれたのだった。そこにいたのは、紫色の髪の毛で市松人形のようなざっくりとしたボブカットの女性が座っていた。
「ギルドへようこそ!!まずはここに座って、この用紙に所定の内容を記入してください」
俺は言われるがまま座り渡された用紙を見るとそこには、住んでいるところと名前、そして、経歴欄がある。これには困った。何せ何にも経歴がない。取りあえず住所と名前を記入してどうしたものかと悩んでいると目の前の女性が話しかけてきた。
「経歴欄には、魔法科学校とか○○道場とかでもいいんですけど・・・」
困った俺の顔を見て彼女は何かを察したようだった。
「ひょっとして・・・・あ・・・名前が村人って・・・?」
「俺・・・経歴は何もないんです・・・」
素直に話をすると彼女は軽く溜息をついた。
「やっぱり・・・でも大丈夫です」
「え?大丈夫なんですか?」
「はい・・・経歴がない方は結構いらっしゃいますので、Dランクからのスタートになります」
「あ・・・わかりました」
すると一人の男が入って来た。
「サマンサ、加入者はどうかね」
「あ・・ランスロット所長、経歴がないそうですのでDランクになります」
するとランスロット所長は難しい顔をした。
「経歴がないだと!!オードリ!!どういうことかね」
「あ・・・すみません。私は、西の森でスライムをナイフで瞬殺したのを目撃したのでてっきりナイフの達人かと思っておりましたので、まさか、経歴がないとは思ってもいませんでした」
するとランスロット所長は腕を組んで俺をしばらく睨んだ。そして、ため息をついたかと思うと二人に耳打ちをしたのだった。
「伯爵様の案件であと一人送らないといけないんだよ・・・なんとかならんか?」
「それならリサーチをしてみますか?」
サマンサが言うと二人は軽く頷いた。そして、サマンサが話しかけてきた。
「今から私があなたのランクをリサーチいたします」
「リサーチって?何ですか?」
「貴方の能力をはかります。」
「能力をですか?あなたが?」
「はい?私、人の能力を鑑定できるんです。ですから安心してください」
ニッコリとその女性は微笑んだ。そして
「ま・・経歴がなくてもオードリさんが見て連れてこられたんですから、最低でもDランクはあるとおもいますよ。じゃ・・・今から行いますので、じっとしていてくださいね」
「じゃ・・・お願いします」
すると彼女の髪の毛の色が紫から金色に輝き目の色が左が赤と右が緑へと変化したのだった。やがて1分ほどして彼女は元に戻ったのだった。そして、大きく溜息をついた。
「「どうだった?」」
二人の質問にサマンサは両手で顔を隠した
「もう・・・信じられない・・・Fランクなんて・・・はじめて・・・」
「「Fランクだと!!」」
その言葉を聞いた目の前でランスロット所長とオードリは頭を抱えたのは言うまでもなかった。
「困ったぞ・・・オードリ、これはどういうことなんだ?」
「どういうことと言われても、私は、スライムを倒したところを見ただけでなんですが」
「スライムということは、偶然で倒せた可能性もあるということか?サマンサ、スキルはどうか?」
「スキルなんですけど・・・コロコロと変わるんですよ。サイコキネシスとか、フォースとか、ジャックザリッパーとか・・・あと、テレキネシスとか出ています。一体どういう意味でしょうか?」
「サイコキネシス?フォース?聞いたことないな・・・けど、スキルはある様なんだな」
「はい・・でも・・・体力は偏差値で30、魔力も偏差値で30、他の能力も軒並み偏差値30ですよ・・・どうやってもFランクですよ。所長、如何なさいます」
「荷物運びの馬の代わりか・・・しかし、せめてDランクくらいにしないとな」
「え?Dランクにするんですか?」
「じゃないと伯爵様の作戦にも出すこともできない」
「しかし・・・確実に死にますよ彼は」
「ま・・・これも人生だろう」
3人が俺の方を向いた。
「あの・・・全部聞こえているんですけど」
その言葉に顔が歪んでいる。そして、ひきつった笑顔でランスロット所長で話しかけてきた
「相談なんだが、伯爵様案件を受けてくれたらDランクの資格を与える。しかし、受けなければFランクだがどうする?」
さっきまでの話を聞いていて、伯爵様案件は確実に死を選ぶことになるということは、折角、転生してきたのだから、もう少し生きてみたいというのが信条だろう。という訳で即答した。
「Fランクでいいです」
その言葉を聞いたランスロット所長は肩を落とした。実は伯爵様の案件にはもう一つややこしい話がある。この案件の中心人物は伯爵の長男ゴーンだった。そして、ゴーンはこの案件に成功することで父に認めてもらい。その地位を継ぐことを考えているようだった。しかし、伯爵には病弱な美男子の次男と後妻との間に生まれた3男ジャッカルがいるのだった。そして、伯爵は3男を跡継ぎにしたいと考えていたのだった。
すると彼らの悪魔のささやくは続く
「Fランクですと、ほとんどお仕事はありませんよ」
「そうですよ。今、伯爵様案件に参加されて、成功された場合、出世の道が開けるのは確実です」
どうしたものだろうかと俺は思案するのであった。