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魔王さんがやって来た その6

「ガイザックは、約2700年前に当時の勇者ラスタルによって滅ぼされた魔王の名だな。歴代最悪最強の魔王と言われている。」

 

 ベスティさんは自らの持つ知識で僕に解説をしてくれます。テトラがいなくて理解できない事が多いと思ってましたけど、ベスティさんがいてくれて助かります!

 でも、テトラは最悪最強の魔王と知り合いだったんですかね?

 2700年前の魔王・・・。

 

 ・・・・・・!?


「ちょっと待ってください!?テトラは1076歳のはずですよ?そんな時代の魔王を知っているはずがありません。」

 

 そうです、前は確かにそう言っていました。ガイザックさんって人も違う人なんじゃないでしょうか?

 

『大魔王ガイザックさま!?・・・貴様は・・・・・・一体・・・。』

 

 人違いだと思いたいんですが、大魔王さんという事で話は進んでるみたいです。テトラさん、あとでちょっとお伺いを立てますからね?

 1076歳って言ってましたよね?

 

 っと、魔王ノルマーはヨロヨロと立ち上がりました。今の一撃で終わりかと思いましたけど、流石にそうはいかなかったみたいです。


『あら、てっきりもう立ち上がらないと思っていたわ。力はないけど、根性だけはあるようね。』

 

 テトラは魔王の近くへと歩み寄った。テトラが優勢である事は間違いないと思う。

 負けてしまうと言う心配は既に無くなってます。

 

『最速、最大の技で勝負を付けさせてもらう。』

 

 魔王は持っていた剣を投げ捨て、両手を前にかざした。大きく息を吸い込むと、それまで切れ切れだった呼吸が落ち着きを取り戻し始める。

 その眼差しは真剣にテトラを見据え、先程までの相手を見下した様な表情は完全に消え失せていた。


「奴の掌に大量の魔力が集まっているな。」

 

 ベスティさんは解析のスキルを使って、魔力の流れまで把握できるようです。まさに渾身の一撃といった所でしょうか?


『ふははははは!!

 面白い。負けると分かっていながら挑もうとするその姿勢は、私は嫌いじゃないわよ?

 いいでしょう。その攻撃、土産の代わりにあえて受けましょう。』

 

 テトラは腰に手を当てて、口を開けて笑った。しかし、此方も先程のように挑発をするような口調じゃないです。しっかりと相手として認め、それでいて強者であるが故の絶対的自信に裏付けられた発言。

 初めは心配してましたけど、テトラの規格は僕らなんかでは計り知れないモノなのだと、改めて実感しました。

 

『ふ、余裕なのだな。しかし、手傷くらいは付けさせてもらうぞ!!』

 

『いつでもどうぞ?』


 魔王の周りの空気が少しずつ歪んでいるような気がします。黒い煙の様なモノが包み始め、掌を中心に黒っぽい紫色の光が現れ始めます。

 

『グリムジョーカー!』

 

 掌に集約されていた魔力を一気に解き放ち、魔王の前方広範囲を黒紫の光が一瞬で埋め尽くした。

 それは扇型に広がりを見せて、テトラのいた場所を丸ごと埋め尽くした。テトラは無防備にその攻撃を受け、一瞬遅れて爆発が巻き起こった。

 辺り一面に爆発の余波が撒き散らされて、黒い爆炎が広がっていきます。モニターからは大きな破裂音が響き渡り、その威力の凄まじさをヒシヒシと此方へ伝えてくる。

 本当に、大丈夫ですよね?もしこんなに余裕を見せて負けたりしたら、ただじゃおかないですよ?

 怪我してたって怒ります。でもまてよ?テトラの身体がもし無傷だととしても、着てる服とか大丈夫なんでしょうか?

 画面の真ん中では凄まじい爆発がおこってます。まさか、僕が見てはいけない様な姿になってませんよね!?

 

 そんな事を考えていると爆発が終わり、次第にあたりを包み込んだ黒紫の光が収まっていく。僕は躊躇しながらも、モニター越しにテトラの無事を祈りました。

 大丈夫、もしそうなっていたとしてもアクシデントです。すぐ目を瞑るから、セーフですよ。

 

『ば、馬鹿な!?』

 

 魔王の掛け声を合図に、テトラの姿が現れました。僕もドキッとしましたが、そこには普段と変わらないテトラの姿が写っています。

 どうやら服なんかも全て無傷の様ですね。安心しました。


『さて、これで気が済んだかしらね?テトの大事なダンジョンで暴れまわられて、私もこう見えて怒ってるのよ?

 覚悟は出来てるかしら?』

 

 テトラはゆっくりと、そして優しい口調で闘いの終わりを宣言しました。


『弱い者に、拒む権利などない・・・。』

 

 魔王もそれを受け入れた様に、抵抗をやめた。敵の強さを受け入れ、負ける事を悟った様に見えます。

 人ではここまで潔く負けを認められるでしょうか?初めは上から目線で如何にも支配欲の強そうな方だと思いましたが、ここに来てみると自分の弱さを受け入れて、潔く負けを認める事の出来る凄い方に見えます。

 それは、そんなに簡単ではないと思うんです。別に僕はそんな立場に立った事は無いですけど、一番である事を否定されるのは受け入れ難いでしょう。

 

『ふっ、素直な所は好感が持てるわ。なら、ここで一つ選択肢を与えるわ。

 一つは私に倒されること。もう一つは、このダンジョンの配下に加わること。

 魔王の一端であるなら、意味は理解できるわね?』

 

 テトラは唐突に話を振りました。そんな打ち合わせは全くなかったんですが、魔物の代わりにとんでもない勧誘をした者ですね。弱かったとは言え、魔王なんかが誰かの下に付くんですか!?

 

『是非もない。まさかその様な選択を迫られる事になろうとは。』

 

 でも、魔王も迷ってますね。どう答えるんでしょうか?

 

『最速を謳ったんだから、早く決めて欲しいわね。』

  

 テトラも無茶言いますね。そこで最速を出してくるなんて、皮肉がたっぷりこもってますよ?

 

『理不尽だが、強者に従うは弱者の務め。よし、俺はお前の下に付く事にする。』

 

 えっ!?予想もしていなかった答えです。ダンジョンに新たなボスの誕生ですか!?

 

『本当にそれでいいのね?』

 

『二言はない。』

 

 魔王は瞳を閉じて、自分を納得させる様に頷きました。それは同時に闘いの終わりを意味しています。

 魔王による侵略は、テトラの規格外の実力を持って阻止されました。

これにて魔王編終了です。

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