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話をしましょう

 ペンダントをプレゼントしてあげたら、テトラは今までで最高の笑顔になってくれたと思います。

 こんなに喜んでもらえるなんて、とても嬉しいです。

 テトラの喜んだ笑顔の破壊力は意識が飛びそうなほどでしたが、それに輪をかけて僕の心臓に負担をかけたのはその後でした。

 

 テトラはそのまま動けない僕へと近寄ってきて、背向けてペンダントを付けて欲しいと言いました。

 真紅に染まった長い髪をかきあげて、首元を差し出してきたんです。髪をかきあげて、そこから見える頸に僕の心臓はボンボン音を立てて鳴り響きました。

 女性にペンダントを付けるのなんて初めてですし、頸を間近で見るのも、首に手を回すのも初めてです。

 それがテトラみたいな美少女なら尚のこと、僕の精神に大ダメージを与えました。

 

 何とか意識を失わずにペンダントを付ける事が出来ましたけど、付け終わる頃には息も絶え絶えでした・・・。

 なんか、本当にドラゴンとは思えなくなってきてます。

 

「どうだ、その。我に似合っているか?」

 

 ペンダントを付けて振り返ったテトラは、まるで聖書に描かれる女神様の様に思えました。

 ほんと、僕と一緒にいるのが勿体ないくらいの可愛さです。なんか、すいません。

 

 僕が似合ってるよと答えると、テトラは少し目を逸らして言いました。

 

「ペンダントを付けているからな。これからは気軽にドラゴンの姿には戻れんな。」

 

 それを聞いて僕はハッとしました。ドラゴンの姿に戻った時のことを考えてませんでした!

 

「ご、ごめんよ!!そこまで考えてなかった!」

 

 慌ててテトラに謝ると、テトラは首を横に振った。


「そ、そういう意味ではない。

 ・・・まぁ、そういう所もテトの優しさと思って受け取っておこう。」

  

 ???

 なんか、変なこと言いました?

 よくわからないですけど、テトラが満足してくれたならそれでいいです。


「もし外しにくかったら言ってね。外してあげるから。」

「・・・・・・わかった。」

 

 なんでしょう、今の間は?

 まぁ考えても仕方ないですね。

 

「わっ!?」

 

 突然テトの身体が浮き上がり、驚いて声を上げる。動く事が出来なくなった彼を、テトラが抱き上げたのだ。

 テトはお姫様抱っこをされて、管理室へと戻っていく。

 

「えっ!?えっ!!?」

 

 突然のお姫様抱っこに、テトは困惑して状況を理解できていなかった。

 テトラはそんなテトを見つめて、微笑ましい眼差しを送っていた。

 

「ほら、暴れるな。どうせ動けないのであろう?このまま運んでやる。」

 

 テトはそのまま恥ずかしそうに黙り込んで、いつも腰掛けているモニター前まで運んでもらった。

 その内心は、嬉しさと恥ずかしさで大変な事になっていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 今度こそ意識を持っていかれる所でした。テトラって、ほんと恥ずかしげもなくこういう事しますよね。

 やっぱりドラゴンだと、人間に対して僕みたいな感情は持たないんでしょうか?

 

「さて、お前はそこで休んでいるがいい。

 誰か来ても、我が起こしてやろう。」

 

「そんなに毎日、テトラをほっぽって寝たりしないよ。お客さんが来るまで、話でもしよう。」

 

 せっかく二人でいるんですから、会話くらいはいいですよね?最初は面と向かうのすら恥ずかしかったけど、少しずつ慣れてきてます。

 これからは、ちゃんと顔を見て話が出来そうです。

 

「無理はしなくていいのだぞ?」

 

「無理なんてしてないよ、ここのところ昼に寝すぎて夜眠れないし。テトラの事がもっと知りたいな。」

 

 テトラは毎日、僕の事を心配してくれますね。弱い自分が情けないです。

 もう少し、頼りになれればいいんですけど。

 

「それなら、我もテトの事が知りたいな。お前は何故、一人で生きていこうと思ったのだ?それも、あんな危険を冒してまで。」

 

「僕の事、ですか。あんまり面白くはないですよ?」

 

 テトラも物好きですね。僕の事なんて、本当に語る様なことはないんですけど。

 人の事を訪ねるならまずは自分から、親にも昔から言われてましたね。テトラは黙って、僕が喋り始めるのを待っています。

 

「僕が家を出たのは、単に村にいたくなかったんだよ。理由は本当にそれだけ。

 昔から人付き合いがあまり上手くなくて、周りにも親友と言える様な友達は作れなかったんだ。

 特にやりたい事も無かったし、とにかく別の所へ行ってみたかったんだ。授かったスキルで何かできないか試してみたけど、単色の食器なんて中々売れないし、材料を取りに行くのも難しかった。

 それで色々と試しているうちに、仮想空間を作れる事がわかったんだ。ダンジョンを作ろうと思ったのは、昔父さんから聞いたダンジョンの儲け話が切っ掛けだよ。

 今やってるみたいに、冒険者が倒した魔物の素材を売って生活できないかって、作り始めたんだ。これは、初めて会った日に言ったね。

 作り出したら楽しくてさ。全部作るのに半年かかっちゃった。でもそのおかげで、テトラと出会えて、こうやって話をしてる。

 不思議な縁だと思うけど、今は凄く充実してるよ。」

 

 そう、とても充実している。こんなに楽しい毎日は、生まれてから初めてだと思う。

 明日が来るのが待ち遠しい毎日なんて、来るとは思っていなかった。

 テトラはじっと僕の顔を見て、真剣に話を消えてくれている。


 自分の事をこんなに話すのも、初めてですね。

 

「そうか、我も・・・テトと」

 

《パンパカパーン》

 

 来訪者を告げるランプが光り、同時にアラームが部屋に鳴り響いた。


「テトラ、今なんて?」

 

 テトラの話が途中でアラームにかき消されたので、もう一度聞き直す。

 

「いや、何でもないよ。

 それより、待っていたお客さんだぞ?今度はどんな奴がやって来たのか、楽しみだな。」

 

「そうだね!でも、話の続きはまた後でしようね!!

 テトラの事を聞いていないから。」

 

 僕の事よりテトラの事を聞きたかったです。それにしても、さっき騎士団が帰ってから随分早いご来場ですね。

 今度来たのはどんな人かな。

 

 モニターを覗いてみると、ダンジョン入り口に一人の女性が立っている。

 お一人様でダンジョン攻略ですか!?

 

 や、止めるように注意しておいた方がいいのでしょうか?

★閑話★

ラ「テトは軽いな。」

テ「そうですか?」

ラ「と言うか肉付きが悪すぎる。ちゃんと食べて、運動しないと大きくなれんぞ?」

テ(なんで親みたいな事言うんですか?しかもお姫様抱っこ中に!)

ラ「それにもう少しまともな食べ物を食べるのだ!栄養が偏ると病気になるぞ!」

テ「・・・・・・はい。」


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