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#3

 

 慣れない道で走るときは気をつけようね。

 お姉さんとの約束だよ。

 いや妹だけど。


 そんな感じでノリで駆け出し謎生物にトドメを刺したことをサクッと綺麗さっぱり忘れようとしたところ、腐葉土と靴底にこびりついた謎生物の肉片が華麗にコラボレーションをかまして足を滑らし今に至る。

 足を滑らした勢いで坂を転がり落ちた。

 土が柔らかかったから無事だけど。


 リュックを下敷きにして仰向けになったまま、木々の切れ間の空っぽいオレンジ色を眺める。

 あいも変わらず日が落ちきる気配はない。

 あーーこれ、完全にリュックの中身、潰れたわ。

 マシュマロとか平たくなってるわ。

 マシュマロせんべいだわ。


 よっこらせっと立ち上がって自分のどろどろ具合を確認する。

 どろどろ選手権を予選落ちする程度には無事だけど、エントリーできるくらいには無事じゃない。

 長くもなく短くもない髪に絡まった落ち葉を乱暴に払った。


 なんだろこの疲労感。

 HPバーがあったら端っこだけちょっぴり半端に削れてる感じの。

 ちょっぴりすぎて気付くまでは気にしないのに気付いた途端に座りが悪くなってうずっとなるやつ。


「ステータス画面表示が欲しいなー……」


 今ならバッドステータスにどろんこって書いてる、絶対。

 右手にぺちゃんこのマシュマロ、左手に金時計。

 持ち物確認をしながらそんなことぼやいた。


【鞍月黒香

 よわい

 どろんこ

 呪Lv1】


 ……ん、なんか今一瞬、視界の端に?

 飛蚊症かな。


 とりあえずこのまま下に降りてみようか。

 坂道はとりあえず降りてみるものだ。知らんけど。

 もともとゆるやかーな下り坂だったんだけど転がり落ちたおかげでショートカットしたし。

 ペンギンみたいによたよたと木の根を踏みつけ降りていく。

 目線を変えても森はやっぱり終わりが見えそうになかった。



「さて……」


 水です。

 泉です。

 ようやく景色がはっきり変わった感じがします。

 ちょっと万歳とかしてみる。

 夕焼け空は大きく開けて、水面は光を浴びてキラキラと金ぴかに輝いている。

 底が見えそうなほどに透明だ。

 綺麗すぎて逆に気持ちが悪い。

 えー、逆に毒とか入ってそうじゃない?

 飲んだらステータス異常とか付くタイプのトラップとかじゃない?

 ないか。

 そんな意地の悪いクソゲー、あったとしてもプレイしないから実質ないようなもの。

 問題はここ、ゲーム感はさほど強くない気がすること。

 だってあんなに歩き回ってデカいミミズ的ヘビ的生物一匹にしかエンカウントしないとか、こう……ダメじゃん。

 ゲーム性ないじゃん。


  【泉

 きれい】


 幻覚再び。いや、見たらわかるっての。

 まさかこれステータス画面なのか。

 雑ぅ。


 あまりの雑さに天を仰いだ。

 開けた空は一面のオレンジ。

 昼間の余韻も夜の予兆もない、一面の夕暮れはびくともしない。

 流石の私もいい加減狼狽える。


「誰かー? 誰かいませんかー」


 水辺だし、結構遭遇率はいいんじゃないだろうか。

 いるわけないか、と後に続きそうなくらいに投げやりに呼びかけて最初の無駄な警戒がなかったかのように泉に近付く。


「ふむ。その『誰か』の中に吾輩は定義され得るだろうか」


 誰かの声が聞こえた。

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