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#2

 #2

 

 ここに迷い込んでから二時間も私は何もしていなかったわけじゃない。結構色々したのだ。

 例えば居眠りをしたり居眠りをしたり居眠りをしたり。


 いやいやこれも結構深い考えがあってのこと。

 一応まず、こういうのは夢かどうかを疑うのが定石。

 で、頬をつねってみたわけだけど私はそこで思い出した。

 私、夢にそこそこ痛覚あるタイプなんだよね。これじゃ無意味だ。

 そんなわけで、寝るという選択肢を選んだのだ。別に夢の中で寝たら夢を見てその夢の中でまた寝たら夢を、なんて夢の入れ子夢ができるかなーなんて好奇心に耐え切れなかったわけじゃない。

 これが夢だというのならば起きればいいだけで、起き方がわからないというのなら一旦わかりやすく寝てしまえばいい。

 電源を落として再起動みたいな。

 なんかそんな感じ。

 うーん。自分でもよくわかんなくなってきた。

 大体こういうのはノリと勢いとニュアンス。


 ここが異世界であるという断定はまだ早いのはわかっている。

 わかっているけど、一度思いついてしまった途端に「ああそうだここは異世界なんだ」というどうしようもない納得感に襲われた。

 例えば「私は人間である」といったごくごく当たり前のことと同じようなレベルで。

 確かめるすべはないわけで、じゃあ多数決1:0で暫定的にここは異世界。

 そういうことになった。


 あれじゃない?

 なんか異常に眠かったのもそういうことじゃない? 

 どういうことだ。

 割とどこでもすんなり寝付ける自信のある私だけど、流石に見ず知らずの森の中でってのは……ちょっと……我ながら引くわ。

 熊とか出たらどうするのさだわ。

 まったく誰だろうね、ここはどこ私は誰状態で爆睡かますのは。


 棒で倒した道の方をずんずんと進んでいく。

 そう、道がある。

 舗装されているというわけでもないし広い道でもないけれど、多分人がそれなりに通った形跡のある道だ。

 闇雲に動くよりちょっと待ってみた方がいいかなー、とか頭がシャッキリしはじめてからもじっと構えていたけど流石に飽きるしらちが空かない。

 お菓子のストックはのんびりと構えてられるほどあってもお茶のストックは水筒分しかないのだし。

 なんか不測の事態があったら?

 その時はその時だ。

 大人しく死ぬ。

 骨を拾ってくれた誰かさんへ。

 宇宙葬でお願いします。

 星になるのが夢でした。


 道が少し広くなる。

 森が開けてきたみたいだ。

 よし、ありがとう棒倒し。


 しかしなんというか、この森、妙にハリボテっぽい。

 別にニセモノっぽいだとか遠近感がおかしいだとかそういうことではないんだけど。

 大自然特有のぐちゃぐちゃ感が甘いというかなんというかなのだ。

 軟弱な現代っ子が特に危機感を覚えないくらいには実家のような安心感、つまり自然公園とか研究林的な作り物めいた親しみ深さ。

 人の手が入ったどころか、誰かに作られたと言われても不思議じゃない。

 なーんて。

 私がふわふわ考えちゃったりするくらいに暇を持て余しながら歩き続けていた時だ。


 ぷちゅ。

 ……ぷちゅ?

 足元で絶妙な感触がした。

 ていうかなんか絶対踏んだ。

 カエル?

 なんか両生類っぽい感触じゃない?

 やーだーなー、とか思いつつも足元を確認する。

 ガン見する。

 めちゃくちゃでかいミミズだった。

 蛇かと思った。

 私の足に踏みつけられてない胴体の半分がビチビチとのたうっている。

 キモ……。


 私はちょっとフリーズする。

 これどうする?

 ミミズはまだ足元でビチビチしてる。

 足、上げた方がいいのはわかるんだけどだって蛇くらいあるんだもん。

 蛇っぽいミミズじゃなくてミミズっぽい蛇だった時の可能性考えておくと、うん。

 ぷち。

 ビチビチしていた残った胴体の方をもう片方の足で踏んだ。

 ごめん不思議生物。

 たとえこっちに非があろうと報復はメッッッチャ怖いから念入りにとどめはさしておけ、っていうのが鞍月家の家訓なんだ。


 私はそのまま脱兎のごとく逃げ出した。

 こっわー。

 うねうねする肌色のうねうね、めっちゃなんかよくわかんなくてこわー。


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