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愛敵  作者: コモルー
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7話

まるで王宮を連想させるような、黄金の竜が掘られている巨大な扉が開き、竜の間に入るとそこには、何千もの椅子が何重にも円を描く様におかれており、中心に向かうほど低く、逆に外に向かうほど高くおかれている、椅子の中心には直径二十メートルほどの大理石の演壇があり、十二単を着て、竹柄の扇を持った小麦色の髪の女性に、狩衣を来て、長い白髪を後ろで結んでいる七十代のお爺さん、プレートアーマーを着て、顔が見えない人物が演壇の上に立ちこちらを凝視していた。


「遅い……」


小麦色の髪の女性が扇を閉じて静かに口を開く、室内はほぼ満席で人がいるはずなのに、ヘアピン一つ落とせば聞こえるような静けさに包まれ、無言の殺気が、和樹たちを襲う。女性がこちらに視線を向けて、一秒もたずに和樹、大五郎、キララ、健次を除き全員が気を失い倒れ、和樹は演壇の上のにいる小麦色の髪の女性に得体のしれない恐怖を覚えた。


「……マジか……ふざけんなよ、ただの殺気だけでこの重圧は……」


手足に冷や汗を掻きながら、頭の中でどうやってあの化け物を殺すか考えるが、どう考えても今の実力では勝ち目はないと結論付けるしかなかった。


「ほう……少しは出来るやつもおるのじゃのう……」


小麦色の髪の女性が殺気を受けてもまだ立っている四人に静かに言うと、わずかに笑みを浮かべる。


紅秋花(こうしゅうか)殿、大五郎達は時間丁度に来たまで、矛を納めてください」


白髪の老人が丁寧に小麦色の髪の女性に言う。


「矛など出しておらん!少し気が立っただけだ!!」


紅秋花が鬱陶しそうに言うと、竹柄の扇を開き再び口元を隠す。


「少し気が立ったくらいであのレベルの殺気を放つなど正気ですか!!うちの者だけならず他の者達まで気を失っておるではないか!!」


紅秋花の殺気に必死で耐えていたので気がそこまで回らなかったが、殺気の被害者はどうやら和樹達人守衆だけではなく、紅秋花自身の大森林、近衛組、その他中小の衆派を巻き込み、集会に集まっていた人の三分の二を失神、気絶、失禁させる結果となった。


「この程度の殺気で、気を失うなど軟弱としか言いようがありませんわ」


この光景が面白いのか紅秋花の目元が笑っている。


「ですが、流石にこれはやり過ぎです!」


プレートアーマーを来た人物が、紅秋花にゆっくりと歩み寄り、前に立つ。


「大森林の頭である貴方の殺気は遊びのつもりでも、一般人は死に、ベテランの者でさえ、立っていられるのがやっと、貴方はこの場にいる新人達を皆殺しにする気ですか?」


「そう言うお前とそこの爺は平気なくせに」


紅秋花は面白くなさそうに、扇を開いたり閉じたりして遊び始める。


「一郎殿も私もお互い衆、組のトップですから、この程度で臆する事などあり得ません!」


プレートアーマーを来た人物が言い終わると同時に紅秋花がさっきの

殺気は遊びとも思えるほどの霊圧が部屋に広がりほぼ全員気絶する。


「ほう……妾の殺気をこの程度とは……言ってくれるのうアラン……」


紅の背中に地獄の業火思わせる赤い霊気が立ち上り、まるで大地震が起きているかのように建物が振動する。


「まったく……」


アランと呼ばれた人物から、紅秋花とは逆に激流を思わせる青い霊気が吹き荒れ、部屋が更に激しく揺れ天井や壁がきしみをあげる。


「この霊圧でも怖じけずかないとは、さすが近衛組十三代目大将アラン・リグレー」


「これ程の霊圧は私も始めてですよ、さすが、大森林の頭で天狐の紅秋花」


アランと紅秋花は互いの顔を見て薄く笑みをうかべる。


「二人ともいい加減にせい!!」


老人が柏手を打つと部屋に充満していた、霊気が消し飛び、静寂が訪れる。


「お主達、ケンカをしに集まった訳じゃなかろうが!!回りを見てみよ!!」


二人が回りを見渡すと美しい星空の描かれていた天井はボロボロになり、綺麗な森林の壁画にはヒビが入っており、大人、子供、初心者、ベテラン、に関わらず全滅している。


「ほんとですよ、お姉様が本気を出せば正気を保てるものなどほぼおりませんわ」


大森林若頭の蒼秋花十二単に着いた埃を霊力で払いのけながら演壇の上に上がってくる。


「大将も柄になくはしゃぎ過ぎですよ、おかげで、身代わりのお守りが二つ駄目になりましたぜ」


兜を小脇に抱えた、青い髪の二十代後半の男性が蒼秋花とは反対側から演壇に上がってくる。


木村総司(きむらそうじ)副将、貴方は無事でしたか……」


同胞がいて安心したのか、アランは胸を撫で下ろし一息つく。


「無事じやねえ!!人の話をちゃんときけ!!トラックに引かれても、大丈夫なお守りが二つも壊れたのだぞ!!お前は半分人の域出ているのだから自覚しろ!!、その内死者が出るぞ!!いや……もう出てるかもな……」


余りにも荒れ果てた室内を見渡し、さすがに事を起こした二人は表情が曇る。


「幸いにも死者は出ておらんよ」


一郎がそう言うと、出入り口付近で倒れている、大五郎を指差す。


「一郎さんは相変わらす鬼ですね……」


大五郎はゆっくり身体を起こし、演壇に向かって歩いていく。


「二人の霊気から部屋にいる人を守る為に結界を張れとは……」


演壇の上に上がり、その場にいる人達を見渡す。


「何とか結界は張れましたが二人の霊気が強すぎる為に無効とまではできなかった」


大五郎がい終わると同時に演壇を囲っていた不可視の結界が音を立てて崩れ、消え去る。


「この封波五重結界もそれなりに強いはずなんだねぇ……」


























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