5話
時刻は六時半になろうとしていた頃、夜に染まった町を白色の鳥と黒い人影が高速で異動する。
「白、あとどれくらいで花咲神社につく?」
白狐の仮面を被った男が前に飛んでいる鳥に話しかける。
「あと二分といったところかな?」
白が振り返りそう告げる。
「四十五キロを約三十分か……時速にしたら九十キロ……まあまあだなぁ」
一人事を呟く様にボソッと言う。
「人の身で九十キロ出れば充分早い方だと思うが……」
若干呆れた目を和樹に向ける。
「じいちゃんは全盛期、東京と大阪を一時間で異動したそうだから俺はまだまだ遅いよ」
屋根から屋根へ忍者の様に飛び移りなが目的地へ向け疾走する。
「次郎は世界中の陰陽師やハンターと比べてもトップクラスで速かったからねぇ……あやつより速いやつは七人程しか知らない」
「七人もいるのか…………世界は広いな…………」
「しかし、七人と言っても全員人間ではないがな…………」
何か遠い記憶をおもお返す様に言う。
「吸血鬼や人狼か?」
「いや……そやつらならどんなに速くても次郎と同じか少し劣るくらいじゃ……そやつら圧倒的に速く、強い」
「まさか……吸魂鬼…………か?」
「そうじゃ…………神々によって力を与えられ、全ての命ある物を殺す処刑人吸魂鬼……世界にたったの九人しか産まれず、その存在を殺すことは事実上不可能」
「どうして殺せないんだ?」
「吸魂鬼は吸いとった獲物の寿命分生きることができるため、仮に殺そうとすると、吸いとった寿命分殺さなければならない…………つまり、十人分の、魂を吸いとった吸魂鬼を殺すには人を十回殺すダメージを与えるか、十人分の寿命を使い切らせるしかない、それに…………吸魂鬼には物理ダメージも霊的ダメージも与えられない……倒すには相手の魂を吸い取り尽くすしか方法はないのじゃ」
「…………そうか…………そいつらに勝てる様になるかな……?」
夜空に輝く星をみながら呟く。
「なれるさ…………和樹ならば絶対!!」
白のその言葉にはな是か、確信に近いものがあった。
「和樹、見えて来たぞぉ……今日の集合場所、花咲神社が!!」
神社の境内に着地し、落ちていた桜の花びらが和樹の回りを円を描く様に舞って再び地に落ちる。
「今日はやけに速いじゃねぃか、お前が三十分も前に来るとは」
境内の奥の方から砂利を踏む音と共に、参、と背中にかかれた法被を着てアゴ髭を蓄えたワイルドな男性が現れる。
「次元大五郎あんたも来ていたか……」
仮面ごしの少し曇った声で答える。
「今日はメンバー全員に対して強制招集が掛けられている、もし遅刻でもしたら大変だもんな、強制招集の原因はもちろん、例の件についてだ」
「昨晩の吸血鬼どもによる、大規模侵略についてか……」
「そうだ、お前も相当吸血鬼を狩ったらしいな、白からの報告でそう聞いている」
大五郎は太く、毛がボサボサの腕を組み、好敵手を見つけたような顔をする。
「たかが、雑魚吸血鬼をいくら狩っても意味はない……上位を狩らなければ被害は防げない」
大五郎の視線を完全に無視して淡々と話す。
「さすがは、神の足と呼ばれた西原次郎の後継者、エドワードやクリスタ、サムスンを殺して雑魚呼ばわりとはねぇ~」
「それは俺に対する嫌みか?、それとも……」
大五郎の目に視線をゆっくり合わせ、静かに言う。
「フフ……別にお前とやりあうつもりはねぇ……メンバー同士の争い事は厳禁だ」
鼻で笑い、法被を正す。
「俺はメンバーに入りたいとも、なりたいとも、いった覚えは………」
和樹が言い終わる前に、回りの空気が凍てつき、大五郎からおびただしい霊気が溢れる。
「それ以上言えばいくら次郎の後継者でも殺されるぞ」
そこには、さっきまでの人を小馬鹿にている中年のオッサンでなくいくつもの死地を潜り抜けてきた強者がいた。
「殺すではなく、殺されるか……やっぱり貴方は甘い人ですね」
大五郎の放つ霊気に臆することなく平然と話す。
「こっちは本気で言っているんだぞ……」
大五郎の霊気が一層強くなり空気がバチバチと弾く。
「心配してくれてありがとう、だが考えは変わらない」
和樹が一瞬で大五郎の後ろに移動し、大五郎の肩を軽く叩いて境内の奥にある神木へと向って歩く、その背を追うように白いカラスが飛んでいった。
「化物だな……あの速さで十五とか末恐ろしいな……健次」
近くにあった木の陰から肆と背中に書かれたロングコートの男性が現れる
「やっぱりばれていたか……」
全く反省していない声で言ったあと大五郎に向かって高い靴音を立てながら歩く。
「健次、お前はアイツの動き見えたか」
「見えたが、ヤツの視線を感じた、間違いなくきずいていると思う」
大五郎の前にたち、苦笑いをしながら、言った。
「自信無くすなぁ~、一様人守衆の中でもトップクラスの速さと隠密なんだがね~」
健次はどこからともなく、黒のシルクハットを取りだし深く被る。
「彼は会う度に凄味が増している、我々の敵にならないといいがね」
言い終わると、大五郎の横をすどうりして境内の奥にある神木へと向かう。
「我々の敵……か………………」
(俺はメンバーに入りたいとも、なりたいとも、いった覚えは)
和樹の言った言葉が脳裏に浮かび、消える。
「俺は常に和樹の見方でいたいな……」
誰にも聞こえ無いような小声で呟き、満天の星空を眺める。
「さて、そろそろ俺も行くか」
神木へと向かった大五郎の背を月明かりが照らし桜の花びらが跡を追うように舞った。