4話
「ただいま白」
和樹はいつものように玄関て帰りを待っている白に向かって言う。
「お帰りなさい和樹」
白もいつものことの様に答える。
「和樹、帰宅して直ぐで悪いけど、人守衆から召集がかかっています、時刻は午後七時、場所はここから北北東に四十五キロ先にある花咲神社の神木だそうです」
少し口早に報告したあと、和樹の横を通りすぎ、外へと飛び去ってたいった。
「本当にいつもありがとう……」
白の飛び去った方を見ながら小さくつぶやき、誰にも聞こえることもない声は雑音に消えた。
「さて、風呂入って少し寝るか!」
和樹は開けたままの玄関を閉め、居間に向かう、和樹の家は築五十年はたっており、昔ながらの日本家屋で母屋は六畳ほどの玄関と八畳の和室が五室あり、十二畳の台所がある、庭には九畳ほどの小さな池があり松や桜、銀杏などが植えられている、池の先には倉庫と分家がありトイレと風呂は母屋の隣に外付けされている。
和樹は風呂から見える桜をながらプチ露天風呂をたんのうしたあと風呂から出てジャージを着る。
「腹へったなぁ……何食べようかな………適当にチャーハンかな?」
台所で冷蔵庫から食材をとりだし手早くチャーハンを作り味見をする。
「うん…………旨くもなく不味くもない……まっいっか」
フライパンから皿に移して、特に味わうこともせず食べ、あとかたずけをし、歯磨きをして布団に潜る。
「午後三時か……四十五キロくらい一時間あれば充分間に合うよな……」
目覚まし時計を五時半にセットし和樹は眠りについた。
・・・・
冷たい雨が森林に降り注ぎ、空には無数の稲妻が走るなか、狩衣姿の老人が七才くらいの男の子を背負って駆け抜ける。
「和樹、少し目を閉じていなさい」
老人が子供に向かってそう告げ、男の子に消音の呪術を掛け終えると後ろに振り替える。
「そう簡単に逃がしてくれないか……」
振り替えった先には黒色のローブを着た赤い目の人が次から次へと
木の影から出てくる。
「………………」
黒のローブを着た集団は無言で老人と男の子に一斉に襲いかかる。
老人は迫り来る敵を呪術で弾き飛ばしたり、射ぬいたり、切ったりと倒して行くが減るどころか時がたつにつれてどんどん増えていく。
(このままではワシもこの子も助からん………せめてこの子だけでも助けなければ……)
「………………」
目の前を鋭い斬撃が通り、間一髪よけたが姿勢を崩し男の子と離れてしまう。
「………………」
黒のローブが男の子にゆっくりと近ずき鋭い爪の生えた白い手が降り下ろされる。
爪から血が滴り落ち、地面に鮮血が広がり、辺りに血の匂いが流れる。
「はぁ……はぁ……無事か……和樹……」
老人の胸を貫いた手は男の子のほんの数ミリ手前で止まる。
「和樹……すまんのう……」
白髪であごヒゲを長く伸ばしたおじいさんが笑顔でそう言い、自分を貫いた、ローブと共に後方へ飛ぶ。
老人は薄れゆく意識のなか懐から複雑な魔方陣が書かれた赤い長方形の紙を取りだし和樹に向けて放った。
放たれた紙は男の子の額に張り付いて、男の子を中心に直径五メートルほどの魔方陣を書き何処に男の子を転送した。
・・・・
目覚まし時計の鳴る音が聞こえ、乱暴に止める。
「うぅぅぅんん………………」
上半身を起こし背伸びをする。
「ひさびさにみたな…………あの時の夢…………」
疲れが取りきれていない体を無理矢理起こし、和室の一角にある仏壇にてを合わせる。
「じいちゃんは敵討ちは辞めろと言うと思うけど……俺は必ず……敵は取るからな……そうじゃないと……何も出来なかった自分が許せないから……」
二分ほど仏壇にてを合わせてから、仕事服の黒色のマントと白狐の仮面を手に取る。
「白戻ってきてるか?」
「とっくに帰って来てますよ!!」
和室の障子をくちばしで器用に開け、入ってくる。
「集合場所に向かう、直線での最短ルートを教えてくれ」
玄関に向かって歩きながら言う。
「分かってると思いますが人の家走って行くのですか?」
「何か本気で走りたい気分なんだ」
靴を書き外に出て、鍵を閉める。
「今日はゆっくり寝れるといいなぁ」
髪が白く、瞳が蒼くなり、マントと仮面を身につけて、彼は、日の沈んだ町へ飛び出した。