30話
真っ白な夢現の世界で青と金色の軌跡がいくつも交わり、空気を切り裂く爆音と霊術の衝突が続き、最早地面は平坦ではなくクレーターばかりの月面と化していた。
「もうどれくらい戦っているのだろうか?」
和樹は休むことなく一郎の猛攻をしのいでいるが、頭は別の事を考えだしている。一郎の攻撃は初めとは比べ物にならないくらい激しさを増し、考えて行動するのではもう間に合わないスピードまで来ていたが無心の状態で攻防が出来るようになり、思考が和樹に戻ってきたのだ。
「白雷」
一郎の指から音速を越える速さで雷が和樹へ向かうが和樹心眼で予知し紙一重で避けお返しに氷の礫を数十個一郎へ向けて撃つが、一郎はすべて交わし、和樹との距離を積めて拳を打ち和樹の頬を掠める。
和樹は一郎の腕を掴み柔道の一本背負いをするが空中で一郎はもう片方の腕を使って和樹に肘うちを食らわせて逃れる。
そして互いに格闘で勝負するが結果は互角で再び霊術の衝突が始まる。
幾度となく繰り返される格闘、霊術、そして格闘の繰り返しはやがて終わりを迎える。
「和樹、そろそろお主を倒して終わりとするかのう...」
「わざわざあなたのレベルになるまで待っててくれてありがとございます」
和樹は目線を一郎からそらすことなく頭を下げる。
「しかし俺は負けるつもりは微塵もありません、あなたを宣言通り倒します!!」
「そのいきじゃ、だがそう容易く負けてはやれんのう...、
せっかくだからワシの取っておきを和樹に見せてやろう」
一郎の体から半透明の霊力と雷が溢れだし白い空に雷雲が広がる。
「なら俺は俺の全てをこの技に注ぎ込む!!」
和樹の体から青い霊力が溢れ、左半身が完全に凍りつく。
「チッ...まだ制御が上手く行かない...だけどあのジジイの技は冗談抜きでヤバい!!対抗するにはこれしか手段はないな...」
「これがワシの取っておきじゃ!!」
「「火雷大神」「絶対零度」!!」
辺り一面を白い光と青い閃光が被い尽くし無音の世界が広がった、やがて二つの光は収束し回りの景色が徐々に鮮明になり、炎と氷の境目に人影が一つ立っている。
「和樹...大きくなったのう...」
一郎は地面に背をつけて倒れている和樹に優しく言う。
「じゃが、今回の勝負はワシの勝ちじゃ...あと一歩届かなかったな」
一郎は自分の左半身を被う氷に手を乗せる。
「なぁ...次郎...お前はワシがこれからする事を馬鹿と言うか?」
一郎は白の夢現から現実に意識を戻し隣で不機嫌そうな顔をする白を見る。
「和樹のレベルはワシとさほど変わらぬ所まできた、あとは和樹の頑張り次第と言った所かのぅ...」
「おい、一郎...お主死ぬ気じゃないだろうなぁ?」
白は紫の瞳で一郎を睨み付ける。
「白殿...いや白○○殿、実はもうすぐアルフォードと戦争する事が決まりました」
一郎は重く言葉を言い、少し間を取って続きを話す。
「ワシが率いる人守衆、紅秋花率いる大森林、アラン・リグレー率いる近衛く組はアルフォード達吸血鬼を殲滅するために協力する事を決定しました。
我々はアルフォードと接触時戦い、相手を倒すには地形の変形はもちろん地図を大幅に変更しなければならないくらい激しい戦闘になると予想し、やつらにバレないよう用心しながら強力な結界を大里山に施し今宵決着をつけるつもりです」
「通りで珍しく和樹に稽古をつけたいと言って来たわけか...」
白は一郎の目に強い覚悟を感じ、ため息をつく。
「最後に和樹と戦って気持ちの整理を付けるためにな...
二つ一郎に言っておく事がある、和樹はお主を許さんじゃろうな、そして、和樹は必ずアルフォードに勝つ!!」
「それではまるで和樹がすぐに目を覚まして大里山に来ると言っているのと同じことだぞ?!
和樹はワシとの戦闘で酷く消耗した上に気絶している、早くても起きるのは明日の昼頃じゃろ!!」
「それはお主とて同じじゃろ、ま、どうせ何か策はあるのだろうがな」
「ああ、その通りだ白殿、これを使う」
一郎は懐から金色の呪符を取り出す。
「それがお主の霊符か...」
『霊符』
術者の霊力を貯蓄し必要に応じて引き出す事の出来る呪符の事である。
「どうせアルフォードとの戦闘では使う隙などないからな、どうせ使わないなら今使うと言うわけじゃ!!」
「一郎、お主の意外と貧乏性なのじゃな」
「さて、ワシはそろそろ戦地へと赴くかのおぅ...」
一郎は腰をゆっくり腰を上げて立ち、見納めと和樹の顔を一目みてから優しく微笑んでから白に背を向け手を降り決戦の地、大里山へ向かった。




