29話
「ここは...」
和樹は暗くい洞窟の中で目を覚ました。
上半身を起こして辺りを見渡すと所々鍾乳石が垂れ下がり規則正しく水滴を垂らして静かで不思議な音楽を奏でる。
「たしか俺は...」
和樹の最後の記憶は白の夢現で一郎と戦っており、心眼で一郎の動きを見切った、と思っていた心の隙を突かれて一郎の切り札である雷公を食らったところで途切れた。
「あのジジイ次はぜってい勝つ!!」
和樹は握りこぶしを作り一郎にリベンジを誓うと起き上がり前後に広がる一本道を見渡した。
「所でここは何処だろう?、三途の川は渡って無いと思うから死んでは無いはず...
前も後ろも道の先は真っ暗で何も分からないが、なんかどちらもハズレな気がするから」
和樹は高さ三メートル程の天井を真っ直ぐ見つめ、霊力を込めた拳で殴りつけた。
「道を作る!!」
殴りつけた天井は思いのほか脆く、亀裂がたちまち全体走り洞窟は崩壊して薄黄色の光へと変わり、世界は限りなく続く美しい草原と青空に変わって行く。
「これが正しい選択だといいな...」
和樹は美しい世界を気の向くままに歩きやがて満開の桜の下に寝転ぶ人影をみつけて歩みより話しかけた。
「あの...すみません...」
白い狩衣姿で顔が何故か見えない少年は和樹をチラッと見ると、「まだ眠い...」っと言って寝返りをし、和樹を手で追い払った。
すると突然、和樹の足元に底の見えない大穴が現れ和樹を暗闇へ引き込んだ。
「うあああああぁぁぁぁぁ!!!!!
あ!!....ハァ...ハァ...ハァ...」
和樹は目を覚まして辺りを確認すると、白い空と白い地面が限りなく広がりところどころ地面がえぐれて何者かが戦った跡が見てとれる。
そう、和樹は帰って来たのだ白の力によって作られた世界、夢現に。
「フッーーーーウ...」
和樹は息を吐き切り無事に夢現に帰って来れたことに安心すると、後ろに僅かに殺気を感じて氷の壁を背中に作る、すると分厚い氷の壁におびただしい亀裂が入り僅かな間をおいてくだけ散った。
「初めて死んだ感想はどうじゃった?」
一郎はまるで小学生が初めてお使いに行き無事に帰って来た事のようなニュアンスでいい、右手には雷が帯電し空気を弾くような音が鳴り続く。
「その質問には答えない、それにあんたは白の作り出した西原一郎の分身体じゃねえだろ!!」
「なぜ、そう思った?」
一郎は警戒を続けたまま和樹がどのような答えを言うのか興味深そうに和樹を見据える。
「俺はある程度心眼が使えるようになったと思っている。
そして、明らかに俺の体のそばに白じゃねえ馬鹿げた霊力があり、今、こうして西原一郎の分身と戦っている」
和樹は堂々と立っている一郎を指差し大きな声でいい放つ。
「絶対!!、本人だろオォォォオオオ!!」
数秒の間が流れ一郎は大きくため息をついてから白髪の頭ポリポリかき改めて和樹を見る。
「で、なに?」
和樹「・・・・・・」
一郎「・・・・・・」
和樹「・・・・・・」
一郎「・・・・・・」
和樹「それだけ?」
一郎「それだけじゃ」
一郎「では始めるとするかのう」
一郎の拳に渦巻く雷が輝きを増し、集会で紅秋花が放った殺気と同レベルの殺気と重圧が和樹の体を襲た。
「畜生...今までの強さでまだてを抜いていたのかよ...はは...」
和樹は口では諦めに近い事を言いながら目だけは戦意を失わずに力強く一郎をみさだめる。
「掛かって来ぬのならこちらから行くぞ!!」
一郎の体から溢れ出す霊気はまるで一つ一つが意志を持つかのように体の回りを循環し、バチバチと空気を弾くような音を奏でる。
「かなり前倒しになってしまったが、宣言通り一年以内西原一郎、お前を越える!!」
和樹も負けじと霊力を高め和樹の回りには冷たい冷気が漂い、足元から氷が地面に広がる。
「そして、アルフォードは俺が倒す!!」
和樹の瞳が蒼く燃え上がり、白髪が空間に光の軌跡を描きながら一郎と拳を衝突させ雷と氷の戦いが始まった。




