28話
空も地面も真っ白な世界でハンターの少年西原和樹と、一守衆総長西原一郎は激闘を繰り広げている。
「(右足の蹴り、フェイント、視線誘導、刀の凪ぎ払い、白雷、掌底...)
和樹は心眼で一郎の動きを読み全て避けるか、ダメージを軽減するように受けながすことで何とか対処出来るようになったが、和樹の体はもう限界を越えており、あと一撃まともに食らえば死は確定するほど問い詰められている。
しかし、これだけ追い詰められるまで心眼が開眼出来なかったのも事実であり、和樹の口元に苦笑いの緩みができた。
「相手の動きが読めてきたからといって油断していないか?」
「なっっっ!!」
突如、一郎の動きが変わり凪ぎ払いの次の白雷が相手の動きを制限させる光の枷と変わり和樹の手足を完全に拘束し地面に固定するため四つの光の杭を和樹の枷に打ち込み、和樹は大の字で地面に固定された。
「クッソオ!!!」
「これで終いじゃ!!短い人生に別れを言いな!!」
一郎は真っ白な空に、膨大な霊力を打ち上げて雷雲を作りだし辺り一面が暗闇に染まる。
「雷公」
今までの戦闘がまるでお遊びだったような、馬鹿げた大きさの雷が和樹の体を突き抜け、和樹は夢の中で死んだ。
そしてこの夢の世界は夢でありながら現実の体にも影響が出るため白の部屋で正座している和樹の体は生気を無くし、畳に倒れこむ。
「この大馬鹿者!!、殺す気でやってくれとは言ったが本当に殺す奴がおるかぁ!!」
白は隣で座禅を組、和樹の夢中に侵入していた一郎に怒鳴り散らかした。
「そういわれてもノオ~~、死んだのは奴が未熟だった上に油断したからでねぇ~~、ワシ一人のせいでわ無い!!」
あたかも一郎自身は悪くなく、戦闘の途中で油断した和樹が悪いと言う一郎に白は紅秋花以上の殺気を一郎に向けて放ち、一郎の額に冷や汗が一筋流れた。
「まぁまぁ、まだ完全に死んで、魂が消えた訳でわない、お前さんの殺気は老いたこの身にこたえるわい...」
「何が老いた身だ!!、和樹はまだまだ子供じゃがそんじょそこらの魔物なら一瞬で殺せる程の実力があるのじゃぞ!!、それを子供を相手にするように翻弄し、殺したのはお主ではないか!!」
気楽な一郎に対し白は今にも一郎に飛び掛かるいきよいで怒鳴る。
「ワシとて何の作も無しに殺した訳ではない!!」
一郎はそう言うと、狩衣から左肩を出してアルフォードとの戦いでついた痣を白に見せつける。
「大分薄くなったがね、あのアルフォードとか言う吸血鬼に紅秋花とアラン・リグレーで挑んだときについた傷じゃ...
戦いは数秒にも満たない時間だったが、この国でトップ争いをするワシらが束になっても奴を倒せずにこの様よ。
だから和樹がカミーラを守ると決めた以上、近いうちにアルフォードと戦うことになる、ワシは血は繋がっていなくとも亡き弟の孫を見殺しに出来んのだ!!」
一郎は力強い目で白を見る。
「その大事な孫を殺したのは一郎...お主じゃがな!!」
「だから言っておるではないか!!、何の作も無しに殺した訳ではないと!!」
「ならさっさと作とやらを言え!!、お主の下らん覚悟などききとうないわ!!、ハァ...ハァ...」
白は肩で息をし、一郎を睨み付ける。
「一郎..,お主にとって、弟の孫の和樹が大事というのは十分わかっとる、そして、アルフォードの危険性も大体はわかっとるつもりじゃ!!
じゃがな、次郎の孫は私の孫でもある、血は繋がらなくともな」
白の何処か母親のような、優しい雰囲気に一郎は「気持ちは同じだな」と思い、胡座をかいた。
「さっきも言ったが和樹はまだ死んでおらん、ワシの術で仮死状態になっておる」
「仮死状態でも十分危険ではないか!!」
「落ち着け白殿...、仮死状態にしたのにはちゃんと意味がある...
まず一つ目は本当の命をかけたやり取り(戦闘)に勝る稽古はないからだ。
二つ目は和樹自身の身に宿る力に気づかせるため。
三っ目は稽古時間の延長だ」
「ちょっと待て!!なぜ、仮死が稽古時間の延長になるのじゃ?!」
「白殿は今、夢現(現実の体にも影響がでる夢)を和樹に掛けているのだろ、夢現は現実とは時間の流れが異なるはずだ、夢を見ているときは自分はこの世界で何年も過ごしていると思っているのに、いざ目が覚めるとまだ夜中だったと言うことがあるように。」
「確かにお主の言うとおり私は夢の中の時間を現実の三倍ほど速く動かしておるが...」
「なら夢の中で仮死して自分の精神世界に入ったらどうなる?」
まるで初めからそれを狙っていたかのように一郎はドヤ顔で白を見る。
「精神世界は不安定ではあるが走馬灯と言う言葉があるように一瞬で己の一生を見ることができる世界...
あっ!!、お主まさか、和樹に受け継がれた血の力のを呼び覚ます気か?!」
「それもある、精神世界なら上手く行けば血の力を見つけて、使えるようになるかもしれない、しかし当然、血に飲まれるかもしれない、もし血に飲まれる事になったとき現実世界で暴れるより白殿の夢現の世界の方が対処しやすいし、被害も最小限ですむからね」
「一郎...もし和樹が血に飲まれたら責任はしっかり取ってもらうぞ!!」
「ええ、もしそのときはワシを煮るなり焼くなり好きせよ。
しかし白殿も少しは和樹を信じてみたらどうじゃ?」
「私は怖いのだよ...また愛する人が死ぬのがね...」
白は思い更けた目で天井の向こうに広がる空を見る。
「その割りには和樹を殺す気でこの一週間稽古していたのではないか?」
「ほざけ、私はあくまでも殺す気だけだ、本当に殺して仮死状態にしたお主に言われとうないわ!!」
すでに日は落ち真夜だと言うのに一人と一羽の和樹を思った痴話喧嘩は朝まで続きそうないきよいでしゃべり続くのであった。




