26話
「いってぇ~ぇなあぁぁ!!」
突然頭をハリセンで叩かれた和樹はここ一周間夢の中で白の無茶な稽古をしていたこともあり、この上無いくらい不機嫌な顔で山田を睨み付けたが当の本人は何故かニコニコ、いや、どちらかと言えばニヤニヤしながら「どうしてそんなに上機嫌なのか?」っと言う言葉を待っているように見えた。
「朝からお前はやけにニヤニヤしているなぁ...あっ!!、もしかして余りにも女子に軽蔑され続けたために、とうとう自我をうしなったか?」
和樹は大袈裟に身ぶり手振りしてアピールしたが、山田はそんな挑発何処吹く風と笑顔を崩さず、和樹の首に手を回し頭をワシャワシャとかき回した。
「おい!!、山田!!、お前様子がおかしいぞ!!何があったんだ!!」
「よくぞ聞いてくれました!!」
山田は急に和樹から離れて両手を左右に上げ、胸を張り、体操の選手の演技後の様なポーズをとり無駄なテンションで答えた。
「じつわなぁ!!」
「じつわな?」
「なんと?!」
「なんと?」
「あの春夏キララが...グハッ!!...」
山田は和樹と言葉遊びの様な問答をしたあと見るからに怒っているキララに脇腹を蹴られ、教室の後ろにあるロッカーまでぶっ飛んだ。
「さっきはよくも見てくれたわねぇ...この駄目田!!」
「おっ...おはようキララ...」
和樹はあえて山田の事に触れずキララに空元気の挨拶をするが、やっぱりバレバレだったようで八つ当たりとも言える拳を顔にくらい山田の隣のロッカーに衝突した。
「俺...何も言って無いのに...」
「察した時点で同罪よ!!」
キララは腕を組、天井を見上げている和樹達を冷たい視線で見下ろしたあと、まるで汚れが靴についているかのようにポケットからポケットティッシュを取り出して上履きを拭くと山田の顔に投げつけた。
「もしさっきの事を誰かに言ったらこの程度じゃすまないからね!!」
和樹と山田を指差しして宣言したあとキララは大きい足音で自席にもどった。
「山田...何があったかは知らないが気付けろよ、キララは短気だから些細な事でもすぐ暴力振るうから...」
「誰が短気じゃ!!」
「うわっ!!いっ...てぇ...」
和樹は山田に小声で言ったが、キララ本人に聞こえていたらしく和樹の顔面にキララの投げた上履きが見事に命中した。
「何か言うことあるだろ、カ・ズ・キ!!」
「スミマセンデシタ」
赤く腫れた鼻を押さえながら和樹はキララに謝り、目線で「上履きを持ってこい」と言われて和樹はキララの上履きを拾い席に向かうとまるで使用人がお嬢様に靴を履かせるように丁寧に履かせると、何故かそれを見ていた女子たちがキララを、「憧れ?」の様な視線を送っていた。
・・・・
キーン、コーン、カーン、コーン♪
昼休みのチャイムが鳴り和樹は教科書を机にしまうと教室を出でて、例の屋上へと向かった。
「神苛さんお待たせ」
「ううん、私も今来たところ」
和樹が屋上のドアを開けるとすでにベンチに神苛が座っておりもはや恒例と成りつつある会話文を述べる。
「和樹くん、今日のおかずは特製生春巻きとだし巻き卵よ」
神苛はベンチの隣においてあった鞄からピンクと水色の二段式弁当箱を取り出して蓋を開けた。
ピンクの弁当箱の上の段にはだし巻き卵をはじめとするほうれん草の和え物やサラダが入っており、水色の弁当の上段には生春巻きがぎっしりと並べられており、下の段はそれぞれのりご飯となっている。
「今日も美味しそうだ、では...」
「「いただきます」」
二人は手を合わせたあとお互いア~ンをしながら食事を続ける一方で和樹は屋上のドアの向こうでパイプ椅子に座りアイドルの写真集を持っているであろう山田に「(これで文句ねえだろ)」と鋭い視線をチラチラ送った。
するとドアが少し開き胡散臭いグラサンをかけた山田が親指を上に立て、グッドと言ってきた。
「(あのやろういつか必ずとっちめてやる)」
何故二人がこのように昼飯を屋上で一緒にとるようになったのか、はあそこで楽しそうにこちらを見ている山田せいである。
神苛と和樹のやり取りが校内で生中継された次の日、昼休みになったとたん山田率いる残念男子が残念男子特有の悪のりで二人をイチャつかせて、からかい、その光景を楽しもうと考えたため、二人を半ば無理やり屋上に連れていき昼飯を一緒に食べさせたのが始まりで。
今は神苛さんの手作り弁当を食べるのが和樹の学校生活の楽しみの一つとなっているのはナイショである。
和樹は心の中で山田に対して怒りとかわいい神苛さんの手作り弁当を食べれる感謝の気持ちの二つの感情を感じながら箸をすすめる。
「ごめんなさい、全然足りなかったかしら?」
神苛が申し訳なさそうに言ってきて箸先に視線を向けると弁当箱は二つとも空になっており和樹の箸は空を切っていた。
「あはははは...今日の弁当もとてもおいしいかったよ、足りなかったって言うよりはこれからも神苛の手作り弁当もっと食べたいなって、感じかな?」
神苛は赤くなった顔を両手で隠すと体を左右に動かして照れ隠しをし、そのかわいい姿の神苛を和樹は改めて守りたいと強く思った。
しかし和樹の後のドアから除き見ている山田は、リア充死ねと和樹に対して中指を立て、嫉妬の炎を燃やすのであった。




