24話
「あ~つかれた~~」
和樹は玄関に鞄を投げ起き廊下にに腰を下ろして両手を床につけた。
「お帰り和樹」
白がくちばしで器用に引戸を開けて顔を除かせた。
「ただいま白、夕食が終わったら前にも話していたと思うが稽古をつけてくれ」
「あの神苛を守るためか?」
白の半分呆れた質問に対し和樹は少し低い声で返事をする。
「そうだ、そして十年前の件にけりをつける為でもある...」
「そうか...しかし今からどれだけ稽古や、修行をしてもあのアルフォードや一郎の領域にたどり着くには速くても三年はかかるぞ!
それに今やっている稽古ですら和樹自身の身が壊れるギリギリの物だ、これ以上増やせば身を滅ぼすぞ!!」
白の目付きが鋭くなり和樹に対して覚悟問う様に警告する。
「そうだな...身を滅ぼす位何て事ない、俺はそんなことより戦わないと行けない時に何も出来ないのが嫌なだけだ...」
ふと和樹の脳裏に十年前の景色が浮かんだ。
目の前で吸血鬼により両親を殺され雨の降るなか次郎に背負われ自分は何もできずひたすら声を殺して泣き続け、そして次郎も殺された。
自分は次郎の転移呪符によりボロボロの神社に転移されそこにいた顔は思い出せないが白銀の髪が輝く綺麗な女性に助けられ、数日後自分を迎えにきた、一郎に両親と次郎の死を告げられ復讐するために剣と呪術を一郎に教わり、お目付け役として白をつけられ、十才の時ハンターとして初めて魔物を殺した。
そのあとはただひたすら町に現れる魔物を殺し続け、先日吸血鬼襲来事件につながり、集会でアルフォードと各組を束ねるボスに各の差を見せつけられ再び力が足りないことを思い知らされる。
「私は和樹のお目付け役である以前にお主を本当の息子の様に思っておる...だから正直に言えば今回の吸血鬼事件に関わって欲しくない。
しかしいくら言葉を並べてもお主の考えは変わらんのじゃろ」
和樹はなにも言わず開けっ放しの玄関から見える夕方を眺めている。
「許してくれ...白...俺はもう力不足で大切な人を殺したく無いんだ...」
「やはり奴の孫だな~~」
白は聞き取れるか聞き取れないギリギリの声でボソッと呟いた。
「ん?...何かいったか?」
和樹が振り返り白を見ると白はそっぽ向きただ一言。
「何でもない」
そう言って翼を前に出しついてくるように和樹を促した。
白廊下を跳ねる様に進み器用にくちばしでふすまを開けると和樹も滅多に入る事のない白のへ案内した。
「ここが白の部屋かぁ~、最後に来たのはいつ以来かなぁ~」
和樹は八畳一間で鳥では使う事のないはずの机と座布団、そしてすずりなどの習字道具に眉をひそめると隣からハリセンを加えた白に頭を叩かれた。
「これ!!乙女の部屋をジロジロみるでない!!」
「いやっ、つい白は鳥なのに字を書くのかなぁ~と思ってさぁ」
「普通の鳥ならしゃべらんし、お主に稽古もつけれないわ!!」
「それもそうだな、部屋を見渡して悪かったよ白」
和樹は頭を下げると白は照れくさそうに翼で頭を隠すとそこに座れと翼で座布団を指した。
「ここに座ればいいのか?」
和樹は座布団に正座すると白は青い瞳を閉じてゆっくり紫色の瞳を開け、和樹を夢の世界へ誘った。
・・・・
「ここは?....」
和樹は辺りを見渡すが世界は真っ白で何処までも果てなく白い地面の地平線が続いていた。
「ここは夢の中、ありとあらゆる事を起こせる文字通り夢の空間だ...」
いつの間にかそこにいた白は目付きを鋭くさせて和樹にいい放った。
「つまり、あらゆる事を想定して稽古が出来る理想の空間なんだね」
「いやっ、少し違う...この空間で起きたことは夢でありながら夢でなくなり、夢でなくなりながら夢になる」
「全く意味がわからないのだが」
和樹が頭を傾げながら答えると白は翼に青白い火の玉を出し和樹に問答無用でぶつけた。
「あっぢぃぃいいい!!!」
和樹はとっさに右手で火の玉を弾くと右手が少し赤く腫れていた。
「これを見てみろ」
白が白い空間に白がの部屋にいる和樹の姿を投影すると、座っている和樹の右手が少し赤く腫れている。
「つまりここで受けたダメージは現実世界にも影響するってことかぁ...」
「そう言う事だ、ひたすら精神を鍛えても現実世界の体がついて行けなければ無駄だからな...それにいつも庭でやっている稽古よりも夢の世界の方が遥かに強力な呪術や魔法なども使用でき稽古相手も無限に用意できるからな」
白は右の翼を広げると今まで殺して来た魔物とこの前戦った吸血鬼に加え人守衆のキララ、大五郎、一郎や大森林の紅秋花、蒼秋花、近衛組のアラン・リグレー、木村総司と言った面々まで登場した。
「白、一つ聞いていいか?」
「内緒だよ」
「どうやってこの人達の情報を手にいれたんだ?」
「内緒だよ」
「明らかに過剰戦力だろ!!」
「ごちゃごちゃ言わずにさっさと稽古しろ!!」
白の翼を上げる合図に集まった面々は一斉に和樹に押しかかり和樹の地獄の様な稽古が始まったのだった。




