20話
「西原君は、神様とか、妖怪、吸血鬼って信じる?」
神苛はいまだに流れる涙をハンカチで拭きなが、小さい声で言う。
「俺は全て信じているよ」
和樹は笑顔で神苛に言い、神苛は少し嬉しそうにうつむいた。
「実は私...吸血鬼なの...」
「そうなんだ...」
和樹は何の動揺も見せずに淡々と答えた。
「驚くのは分かるけど本当の事...えっ?」
神苛の表情が固まり、和樹を凝視する。
「知っていたよ君が吸血鬼だってことは...っていうかバレバレだったし」
和樹は神苛の視線から目を反らさずに話を続ける。
「最初に疑ったのは入学式の時だった...」
「初対面で疑っていたのね...」
神苛は和樹から視線を反らし、自身の足元を見、和樹は振り返り柵に両腕を置き町の景色を眺めた。
「何て綺麗な人だと思った、それこそ人間じゃないと...」
「えっ?!」
神苛は再び驚き、和樹の背中に視線を移した。
「って言うのは半分冗談...綺麗な人だとは思ったけどそれだけで疑った訳じゃない...立ち姿から漂うオーラが一般人とは別格だった...まるで何処かの王女様みたいにね」
和樹は神苛に向きなおり、柵に背もたれする。
「次に疑ったのは、俺が屋上から落ちた神苛さんを助けた時だった。
神苛さんは泣いて震えている様に見せていたけど本当は吸血衝動を必死に押させえるのに必死だったんだよね...俺が気絶する瞬間に聞こえた神苛さんの言葉は...一口だけ...だった」
神苛は何も言わずにうつむいたまま、和樹の話しを聞いている。
「決定的になったのは入院していたときに朝早くに...」
「ならもう分かっているのでしょ...」
和樹の言葉を遮り神苛は真剣和樹の目を見る。
「私がアルフォードから狙われている吸血鬼の王女、カミーラ・アイル・オブ・カーチスだって事」
「フルネームまでは知らなかったよ、先に一つ言っておく事があるけど、自分から正体ばらすのは無いんじゃないかなぁ...」
「えっ?!」
神苛は目を点にして口をポカーンと開けている。
「俺は一言も神苛が吸血鬼の王女とは言ってないよ、ただ姿が王女様見たいと言ったが...」
「あああああ!!!」
うずくまり頭を抱えて叫ぶ神苛を和樹は苦笑いしながら膝を曲げ視線を合わせてから神苛の肩に右手を乗せた。
「ドジなんですね」
「うるさ~い、ばか、ばか、ばか、ばかぁ~!!」
神苛は和樹の手を振りほどき和樹の肩を両手に作った拳でポカポカ叩き八つ当たりする。
「話しが逸れてしまったけど、事情を話して貰えませんか?力になれるかもしれません!!」
和樹は神苛の両肩をつかみ引き離すと真剣な表情で言った。
「人間のあなたには何もできないわ...だからあえて話します私の今の状況を...」
神苛と和樹は近くにあったベンチに座り向かい会う。
「私は今吸血鬼の中でもトップを争うアルフォード・リース・フィレッタに追われています、彼は非常に強く二百年以上、負け無しの正真正銘の化け物です、そして何よりも力に貪欲です...
今から10年前...彼は当時吸血鬼の王だった私の父を殺し、吸血鬼の王の証、黒血の真珠と呼ばれる力を奪おうとしましたが...父は最後の力を振り絞り黒血の真珠を私に移し日本へアースと共に転移させました」
「ちょっと待って、黒血の真珠ってなんだ?」
和樹は先生に質問する様に手を上げて聞いた。
「黒血の真珠は初代吸血鬼の王が自身を呪った神様を殺すために作った術式で代々吸血鬼の王の体に黒い真珠の様な模様とともに受け継がれる力で血を吸えば吸うほど霊力や力を増し、果てには本当に神をも殺せる力を得ます」
「得ます...って事は初代吸血鬼の王は自分を呪った神様を殺したんだね」
「その道理です、もしこの力がアルフォードに渡れば世界は血で真っ赤に染まるでしょう」
「そんなヤバい力を神苛さんが持っている訳なんだね」
和樹は小難しい顔をしながら確認をとった。
「その道理です...」
神苛はうつむくと無造作に自身の左胸に手を当てた。
「何だかか不思議な気持ちです...初めは助けてくれたことへのお礼ともしもの話しで私の心境を伝えて同意してくれれば良かったのに...いつの間にか人間の貴方に一族の最も大切な事を話して、貴方は真剣にどうにかしようと考えてくれている。
と~っても嬉しいです!!」
神苛のこの上無い位輝かしい笑顔に和樹は頬を赤らめ視線を空へと移す、すると白い小さな点が見えみるみる大きくなりやがて一羽の白いカラスが足に手紙を巻き付け飛んできた。
「和樹!!一郎から返事をもらって来たぞ!!、先に言っておくがお前は正式に人守衆を抜ける事が決まった、そして人守衆、大森林、近衛組と場合によっては戦う事に...」
「ありがとう白...それくらい承知の上だ」
白の言葉を遮りお礼を言った和樹は白の足に巻き付けてある手紙を取り広げて目を通す。
「神苛さん話してくれてありがとう、今から俺は貴方を守る護衛になつた」
和樹は神苛に笑顔で振り返り懐から白狐の仮面を取り出して見せた。




