18話
「原始序列五十三位、グレド・ジーザスと申します」
橋本もといいグレドは丁寧にお辞儀したあと、牙を見せるように不敵に笑い、キララの前まで一瞬で移動すると黒い霊気を纏った拳でキララの体にパンチを入れた。
しかし、グレドの拳はキララに触れる事無くキララの炎のような霊気に阻まれ、爆風を起こしグレドを吹き飛ばした。
「女性の体に気安く触らないでよね、てめぇ生かしちゃ返さねぇからな!!」
満面の笑みから獲物を刈るライオンの様な顔に変わり、キララの霊気がどんどん熱を上げ体が赤く染まり、吹き出る霊気がまるで太陽のプロミネンスの様に循環する。
「さぁ、食事の時間だ!!」
キララから放たれた赤い霊気は竜に変化しグレドを食らおうと牙をむき出して襲いかる。
「やれやれ、仕事がてら若くて旨い血を沢山飲めると思って、軽い気持ちで来たのに...」
グレドは不気味に微笑むと、黒い霊気を纏った手刀で竜を切り裂いた。
「覚悟を決めなければ勝てない相手に会うとは...」
グレドは竜を切った腕を眺めると手袋は焼け焦げ、所々血がにじみ出てボロボロになっていた。
「いっそ逃げれば?」
和樹が半分馬鹿にしたように言葉をかけると、グレドは赤い瞳で和樹を凝視した。
「自分から攻撃を仕掛けて逃げ帰るなど、原始に席を置くものとして最大級の恥じ、例え死ぬことになろうとも敵から逃げない!!」
「(要するに、自分から喧嘩吹っ掛けて起きながら逃げるような小物に成りたくないと...)」
和樹は心のなかでデフォルメ化されたグレドが犬を棒でつつき、歯をむき出しにされて逃げ帰る姿が浮かび、思わず口元が緩む。
「貴様!!、今私を見て笑っただろ!!許さん、必ず貴様を殺して殺る!!」
グレドの怒気を尻目に、和樹はキララに命令した。
「キララ、早くやつを倒さないと俺が殺るぞ!!」
「うるせぇなぁ!!、こんなカス相手にてめぇの手を借りるまでもない、オラ吸血鬼!!さっさとかかって来いよ」
キララが手招きすると、挑発に耐え兼ねたのかグレドは最速の動きでキララに迫った、しかしキララの纏う霊気がグレドを食らおうと次から次へと竜の口を開けてグレドに襲いかかった。
グレドは両手に黒い霊気を纏い、キララの竜を切り裂いていくが切っても切っても、無駄だと言わんばかりに切り裂き、目の前にいる少女は竜を産み出す。
「しつこい男は嫌われるよ♥...さっさと死にな!!」
キララは可愛らしく口元に指を当てウインクしてから暴言と共に二十は越えるであろう数の竜を作り出しグレドを押し潰すように襲いかからせた。
「クッッ...アアアアアッッ!!」
さすがに一人で二十を越える竜を同時に斬り裁くことは出来ず、 グレドは灼熱の業火に焼かれて灰も残さずに焼失した。
「少し疲れたわ、帰りにアイスおごりなさい!!」
「何で俺が...」
「おごりなさい!!」
「はい!わかりました!!」
和樹はキララの有無を言わせぬ気迫に負け、はいと答えるしかなかった。
突如、ガラスの割れる音が空間中に響き渡り、空間を作っていた術者が死亡した事による崩壊が始まった。
「さ~てと、アイスは何をおごってもらおうかなぁ~」
回りの空間が崩壊していく中、緊張感の無い声で人差し指をアゴに当て、何処の店のどのアイスにしようかと、首をかしげながらキララは考えている。
「おい!キララ!!この空間からの脱出法はあるのか?!」
すっかりアイスの事で頭がお花畑、いいやアイス畑になっていた、キララを肩を揺さぶって現実に引き戻すが...。
「気安く触るな!!」
心地よい音が響き、和樹はビンタを食らった。
「速く脱出しないと崩壊に巻き込まれて元の空間に戻れないぞ!!」
「そんなこと位わかってるわよ!!」
キララは胸の裏ポケットから青い長方形の紙を取りだし小声で呪文を唱えると、床に投げつけた。
床は三角形と四角形が複雑に組合わさった模様を浮かべ二人の足下に広がると、青白い光と共に二人を転送した。
青白い光が消え、視界が鮮明になると回りに柔道着を着た人たちがバタバタと倒れていき、その光景に唖然と立っている山田元気の姿があった。
「柔道部員は全員グレドに操られていたようだな、おい!元気!!保健室に行って先生呼んで来い!!」
「あっ、うん、わかった!!」
元気は取り乱しながらも了解し、職員室へと走り出すが二歩ほどで止まると振り返り。
「なあ和樹...お前の隣にいる美女だれ?」
「えっ隣に人なんて...ておい!!」
和樹の隣には初めてからいましたよって言う雰囲気を出しているキララがいた。
「どうも初めまして、この度大里高校に転校してきた春夏キララで~すヨ・ロ・シ・ク・ね♥」
「.....」
数秒の空白の後、元気は何も言わずにその場を去ろうと振り返ったが、それをキララが許すはずもなく、眉間にシワを寄せながらも満面の笑みを浮かべながら元気の肩を掴む。
「美女が挨拶してやってんだ、無視するとはいい度胸だな!!」
そのあと何があったかは言うまでもなく、ただ和樹自身が先生を呼びに
保健室へと向かった。




