15話
美しい桜の木がある日本庭園が見える和室で、人守衆総長西原一郎は雑に破りとられたメモ用紙を読み終わり、一息ついた。
「あやつは事の重大さを分かっとらんなぁ...」
一郎はお盆におかれた湯飲みを取り、一口熱いお茶を飲むとまたお盆に静かに置いた。
「しかし、ワシに人守衆からの離脱とカミ―ラ王女側に付く事を証明する形で文章をよこすとは、あやつなりに考えての事だろう...」
今度はお盆におかれている、和菓子を手に取り口に運ぶ。
「一郎...私はお前が何を言おうとも和樹に付くぞ!!」
一郎の向かい側に座る白いカラスは強い口調でいい放った。
「ああ、和樹側に付く事を止めることはしない」
二人のこの会話は一見、離脱する和樹に白も着いていくと言って、それを一郎が承認する様に聞こえるが、大事なのは人守衆を抜ける事ではなく、敵対したときに和樹側に白がいると言う事である。
「しかし、人間に無関心だった貴方が人間の社会に住み、活動しているとは、時の流れを感じるのう...」
「寝言は寝てから言え、私の住みかにズカズカと土足で踏み込み、この世界に連れ出したのは、お前ら兄弟だったではないか!!」
「あの時はワシもまだ若かったからのう...なんせ、五十年は昔の事だなからなあ...」
「私にとって五十年は昨日の事の様に感じる...お前ら人間はいつもそうさ、私に近づいて幸せや、希望を与えるだけ与えておいて、いつも私より先に死ぬ...私を置いて行く...」
「かける言葉が見つからないのう...」
二人の間に無音の間が数秒流れ、一郎のお茶を飲む音が和室に響く。
「あの子は弟に良く似ておる、人を放って置けない所も、無茶するところも、そして力(霊力)が強い所も...白様...いいや...様、どうかあのバカを守ってやって下さい!!」
一郎は向かいに座る白いカラスに深く頭を下げるのであった。
・・・・
「ヤッホー和樹!!、見舞いに来てやったぜー!!」
日が沈みかけた頃、病室のドアを行きよい良く開けて、バカ...でわなく山田が入って来た。
「ただいま、お入りになった病室の患者は現在外出中か、退院なさっております、ピーと言う発信音...」
「留守番電話じゃねいよ!!」
出入口に置かれていたボイスレコーダーを持ってベッドに潜っている和樹に投げつけた。
「朝からうるさいなぁ学校行けよ!!」
今起きましたと言わんばかりの態度で、山田に言って再び潜る。
「もう終わって夕方だよ!!」
山田は和樹の寝ているベッドに近づき上布団を行き良くめくる。
「ならもう寝る」
めくられた布団を再び引っ張って和樹は頭から被った。
「へぇーそういう事するんだぁ...ならせっかく、藍花さんも来てもらったのに、和樹は会わずに寝るんだぁ...」
「それを早く言え!!」
和樹はベッドから飛び起きるが、起きた振動で傷口が痛み出し、顔をしかめる。
「...っつ!!」
「西原君、お邪魔します」
病室に入った藍花の目に、自分を助けたせいで怪我した背中を押さえ、
顔をしかめる和樹が写った。
「西原君!!この度は私のせいで怪我をさせてしまって!!本当にごめんなさい!!」
藍花は和樹の前に素早く移動して深く頭を下げる。
「会長さん...頭を上げて下さい...自分の事より、会長さんは怪我しなかったですか?」
「ええ...西原君のおかげで私は無傷よ...」
藍花は恐る恐る頭を上げて、本気で心配している顔を見せる。
「会長さんが無事なら怪我をしたかいがありました...」
和樹は安心した表情を浮かべ、力が抜けたのか、ゆっくりとベッドに横になる。
「どうして!!どうしてそんな顔が出来るのですか!!、私を助けたせいで貴方は入院するほどの怪我をしたのですよ!!」
藍花はここが病室なのにも関わらず、大きな声で反論する。
「これくらいの怪我想定内ですよ、それに目の前で可愛い女の子が死ぬ所なんて見たくないじゃないですか...」
和樹の優しい笑顔と可愛いと言う言葉に藍花は顔を真っ赤にして、両手で隠すように覆い、後ろを向く。
「そんなこと言われたら、もう何も言えないじゃないですか...」
言い終わると、藍花は出入口に置いていた学生鞄から菓子の入った袋と近くに置いてある、花束を片手で顔を隠したまま近くの机に置き、「お邪魔しました」と早口で言うとさっさと病室を後にした。
「なぁ和樹...お前なかなかのやり手だな、後の事は任せろ!!この山田元気様が取り仕切って準備してやるからな!!」
山田は和樹に親指をつきだしグッジョブしながら歯を見せる。
「いやいやいやいや、ちょっと待て!!お前なにか良からぬ事を考えているだろ!!」
「じゃあ退院してからのお楽しみと言うことで、今度は学校で会おうぜ!!」
言い終わると、水を得た魚の様に生き生きしながら病院の廊下を山田は駆け抜けて行った。
「あのやろう、人が好きに動けないことを利用しやがって!!覚えてろよ!!」
和樹は行きよい良く上布団を被りふて寝することを決めた。




