14話
和樹は二人を肩に担ぎ住宅街を駆け抜けて、アテノラと戦闘した場所から数キロほど離れた神社に金髪の少女と黒髪の青年を下ろした。
「此処ならしばらく見つからないと思うが...」
和樹は二人の姿を改めて見るとなとも言えぬ違和感を覚えた。
「危ない所を助けて頂きありがとうございます」
カミ―ラはそう言って、和樹に頭を下げる。
「礼は要らない、俺は吸血鬼が嫌いでね...見つけると殺したくなる...」
おもむろに腰に刺してある刀をなでると、カミ―ラと和樹の間にアーススが入り込み、大の字に立って和樹をにらみつける。
「カミ―ラ様こいつも敵ですお逃げ下さい!!」
「一応確認のつもりだったのだがね、まさか吸血鬼でしかもカミ―ラ王女とは...」
和樹は自分の仕出かした事の重大さに気づき頭を抱えてしゃがみこむ。
「あの...大丈夫ですか?」
「カミ―ラ様!!こいつに近づいて行けません!!」
心配そうな顔をして和樹に近づこうとしたカミ―ラをアースが片手を前に出し静止させた。
「殺す気があるならもう殺ってるよ...一昨日の取り決めについては知っているか?」
「取り決めとは何ですか?」
「聞くだけ時間の無駄です、カミ―ラ様、幸いコイツは私達の敵でも見方でもありません、今のうちに逃げましょう!!」
アースはカミ―ラの手を引きこの場から立ち去ろうとする。
「アース放して下さい!!」
「カミ―ラ様...」
アースに引かれた手を少し強引に振りほどき、しゃがみこむ和樹に目線を合わせた。
「取り決めとは何の事ですか?」
「ああ...簡単に説明すると一昨日日本の中でもトップを争う、大森林、近衛組、人守衆、が集まる集会が開かれ、一日の吸血鬼襲来事件について話し合いがあったが、集会の途中でアルフォードが、乱入し、各集団のトップと戦闘になった...しかし両者とも決定打をあたえることが出来ず、これ以上の戦闘は互いに不利益しか発生しないとし...」
和樹はしゃがみこむカミ―ラに視線を合わせ、語気を強めて言った。
「カミ―ラ王女を捕らえる事に関して黙認する事に決定した...」
「そうですか...」
カミ―ラはだだ一言言うと無理に笑顔を作る。
「なら私達は貴方と関わるべきではありませんね、助けて頂きありがとうございました」
彼女は綺麗に頭を下げてから、アースを連れてその場を後にした。
・・・・
「フーゥ....」
和樹は一息つくと手元にある人形をみる。
「メモ帳で作った即席の式紙だがなんとかなったな」
和樹は先程起きた出来事を思い返した、窓から誰かがこちらを見ていると思った瞬間、近くにあったメモ帳を数枚破り取って人形に折り、霊力を込めて黒いマントに白狐の面を着け、刀を装備している自分の分身を作った。
そのあと、式紙の左目と自分左目をつなげて人影を追うと、見知らぬ青年と少女が吸血鬼に囲まれており、様子を伺っていたら、青年が吸血鬼のリーダーらしき人物に一瞬で負け、このままだと二人とも殺されると判断し、式紙に込めた霊力をの大半を使って吸血鬼を氷漬けにすると同時に病室の自分は人形に霊力を込めてもう一人分身を作りだし右目をつなげ、分身に霊力だけ込めた人形を二人分渡し助けに行かせた。
そしてあとは、二人の姿をコピーした式紙にすり替え二人を数キロ離れた神社まで連れて行った。
(助けて頂きありがとうございました)
カミ―ラの姿が脳裏に浮かぶ。
「どうしろって言うんだよ」
アルフォード「これは私達からの提案です……、カミーラ王女を捕らえるのに協力していただきたい」
一郎「吸血鬼が我々に害をなさなければ今回限り、人守衆は吸血鬼の滞在を認めよう……」
紅秋花「良いだろう、大森林も今回限り、干渉しないじゃが、少しでも妙な真似したら、戦争じゃ!!」
カミ―ラ「助けて頂きありがとうございました」
そう言って振り返る彼女の頬にひとすじの涙が流れていた。
「おや、今日は早起きじゃないか和樹!!」
開けていた窓から白が飛び込んで来て、ベッドの手すりに止まる。
「ちょうどよいいタイミングだな、白、今から一郎さんに一筆、手紙を書くから届けてくれ」
和樹はメモ帳から紙を一枚破り取り、ボールペンで素早く文章を書く。
「急になに用じゃ?」
「俺は人守衆じゃない事の証明とこれからカミ―ラ王女側に付く事の報告だ」
文章を書き終わり一通り確認し、隠蔽の呪術をかけて真っ白な白紙すると小さく折り白の足に結びつけた。
「白...頼んだぞ」
白の目を真剣に見て言う。
「どうせ私が考え直せと言っても、聞かんじゃろなぁ...」
白は何かを察し、そして諦めたように言った。
「いつも心配かけてすまないな...でも...彼女を放って置けないんだよ、上手く説明出来ないけど...」
和樹は白から視線を反らし朝日とは呼べないほどの高さまで上がった太陽を眺める。
「私は和樹が考え、悩んだあげくたどり着いた答えなら反対はしないが、和樹の身に命の危機が迫るのなら...」
白は青い瞳をゆっくりと閉じて、ゆっくりと開けると瞳の色が紫に変わっていた。
「この眼を使ってでも倒す」
「止めてくれるのは嬉しいけど、その眼は冗談抜きで、使わないでほしいな...(止めるじゃなくて殺すの間違いじゃないか、背中の冷や汗が止まらない!!)」
「私も使いたくは無いよ...体の負担が大きすぎる」
白は言い終わると、ベッドの手すりから窓枠に飛び移り、和樹を心配そうな顔で少し見つめてから、外へと飛び去った。
「白...ワガママかもしれないけど、俺は自分の納得が行くように行動して、自分の納得行く結果を出したいんだ...」
すっかり明るくなったな窓の外を眺めて、和樹はボソッと誰かに語る様に言った。




