13話
翌日早朝...
「はあ~ぁぁ!!」
和樹はベッドから起き上がり、大きなあくびと背伸びをして、カーテンを開ける。
病院の四階から眺める景色は、朝早いこともあって、家々の間に朝霧が立ち込め、幻想的な雰囲気が漂っていた。
「ん...?」
路地に漂う霧の中から、誰かがこちらを見ており、視線が合ったと思った瞬間振り返り、霧の中に消えた。
・・・・
霧の中、足音を立てずに移動する二つの影がある。
「まさか私に気付いた?」
「...様、まずあり得ません、あそこからここまで五百メール以上ある上にこの霧の中ですよ」
「だけど彼は私の視線と間違いなく合ったわ」
「なら彼は危険です!!」
大きな影が小さな影の前に立ちはだかる。
「第一、アルフォードから逃げるのに仲間は少ない方が効率的です!」
「いつまでも逃げ続ける事なんて出来ないわ!!」
小さな影が大きな影に強く言い放つ。
「もう私は誰かを犠牲に逃げたくない、私だけ逃げて助かる位なら貴方達と一緒に闘います!!」
「やっと見つけたぞ、カミーラ王女」
二つの影を、無数の影が取り囲み、一つの影が徐々に近づき、黒服を着、赤髪に金の瞳の青年が現になる。
「あなたは...」
「序列第四十五位アテノラ・シール...」
二人を隠していた霧も薄くなり、金髪に赤い瞳の少女と黒髪に赤い瞳の
青年が現れる。
「おまえは...ああ、思い出した、先代に拾われた落ちこぼれのアースまだ生きていたか...」
「王女の幸せを掴み取るまで死なん!!」
アースはアテノラに向かって構え、霊気を放つ。
「はぁ...私を舐めて要るのかね...その程度の霊気じゃあ」
アテノラの姿がブレると一瞬でアースの懐に潜り込み、みぞおちに拳を一発入れ、屈んだ隙に、頭に踵落とし決めて、アースを地面に這いつくばらせた。
「脅しにもならならい」
「アース!!」
「王女様...逃げて下さい...」
「逃がしませんよ、私はアルフォード様の期待を裏切る訳にはいきませんので」
アテノラが右手で合図すると、黒服を着た部下達が、カミーラを取り囲み、襲いかかった。
(たすけて...)
カミーラは思わず目を閉じて身構えてしまうが、いつまでも衝撃が来ないので恐る恐る目を開けると、黒いマントを着、白狐の仮面を着けた何者かが目の前に立っていた。
「あなたは...」
「魔物を刈る者...」
仮面を着けた何者かは一言そう言うと腰に刺してある刀を抜き、片手で頭上から地面すれすれに振り下ろすと、空気を切り裂く音が響き、いつの間にか氷漬けにされていた吸血鬼を粉々にした。
「やるねキミ...」
和樹が振り返るとアテノラが笑顔とは裏腹に殺気と霊気を爆発させていた。
「朝からギャアギャアうるさいんだよ、安眠妨害だ、コノヤロ!!」
「貴方こそ、私達の邪魔をしないで頂きたい」
二人の姿がブレ、互いの拳が衝突し衝撃波が住宅街に広がる。
「早朝から、衝撃音を響かせる攻撃の方が安眠妨害では?」
「もう、人払いと防音、の結界は張ったから、問題ない!!」
和樹はアテノラの拳を押し込み、ふっ飛ばすが綺麗に空中で体勢を整え、太い針を忍者のように、五本ほど素早く投げるが、和樹は針の軌道見切って交わし、最後の一発を刀で弾き返したが、アテノラは難なく、掴み取り、投げ返す、和樹はもう一度弾き返そうとするが、嫌な予感が、頭を過り避けると、後方から物を溶かす音が聞こえてくる。
「溶解液とはやる事が卑怯じゃないか?」
「殺し合いに卑怯もないでしょ?」
アテノラは懐から針を取りだし手でもてあそぶ。
「初見で針を見分けるとは、なかなかやりますね、通常、見分けれずに、まともに、溶解液を食らうはずなのですが...」
「お前のその道具、針とはよく言えるな、普通の太いだけの針なら、溶解液なんて仕込めないよ、さらに言えば爆薬や、ワイヤーなんかも仕込んでいるだろ?」
「さぁどうでしょうかな?」
アテノラは手でもてあそんでいた針を一直線に和樹の頭に向けて投げ、
意識が一瞬、針に向いた隙に、後方に跳び下がりながら、和樹を囲うように針を投げ刺しワイヤーので取り囲む。
「やっぱりな」
「私も忙しい身なのでそろそろ決着を付けるとしましょう」
ワイヤーの隙間を縫うようにアテノラは針を連射し、和樹は刀で針を僅かに擦り、軌道を変えてしのぐが、アテノラは連射を徐々に早くし、跳び回るように立ち位地も変えて全方位から攻撃する。
(少しきついかな...)
防ぎ切れなかった針により和樹の体は徐々にキズが増えていく。
「毒針は使わないのか?」
「使ったところで避けてしまうでしょ、針に仕込みを入れるのはなかなか苦労するので、仕留める時にしか使いませよ!!」
アテノラは言い終わると同時に和樹の背後に立ち止まり、針を同時に六本投げた、針は振り返る和樹には当たらず横を通りすぎ、背後のワイヤーで跳弾し、死角から和樹を襲い、体に刺さると同時に爆発した。
「これは初見じゃ避けれないでしょ」
爆煙が晴れて、景色が鮮明になるとそこには面を着けた男の死体出はなく、木っ端微塵になった紙きれだけが残り風に吹かれて消えて行った。
「まさか!!」
振り返ると地面に転がっていたアースも、怯えていたカミーラの姿も人形の紙に変わり地面に落ちた。
「あの面の男、覚えていろよ...」
怒りに染まった声で静かに言うとアテノラは体を霧に変えて消え去り早朝の町に再び静寂が訪れた。




